刺激、絶対零度。
刺激というのは、本当に必要であるわけではない。彼に必要な刺激が恋であったのかすら怪しいのだから。
絶対零度が街を歩く。人々は早々に冬支度を済ませていた。ある少女を神々は喰らう。冬季休業の前の腹ごしらえだ。再び見ることができないであろう空を、少女が怨んだ。魂が蘇る様に、絶対零度は怒った。
「その街は、凍る街となった」
神は笑って彼を受け入れた。側近に毛布と温かい飲み物を二つずつ頼んでから、神は彼に座るよう促した。
「ある少女が喰らわれた」
「ええ、存じていますとも」
温かいココアが机上にことり、置かれた。
「それで?返してほしいだなんて言いませんよねぇ、絶対零度様」
「返してほしいとは言わん。ただ、喰らわれる前に一目見たかった、という我儘だ」
それぐらいは許せ、ガルハサス。震えた声がガルハサスの耳に消えた。
「別に、お返ししてもよろしかったのですけれど」
貴方が奪い返しにこないから、食べてしまいましたよ。
「それなら、」
なぜ喰った。その言葉を彼は呑み込み、落ち着こうと努めた。
「だって、」
「そうでもしないと貴方、会いに来てくれませんもの。」
ガルハサスの銀の短髪がはらりと揺れた。