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4 銀竜と金竜

 シルヴィン・フォン・ギュンターがアールファレムに出会ったのは十七歳の時で、アールファレムの初陣の時だったが、その戦闘に参加した訳ではなかった。

 父親を早くに亡くし、十六歳で領主を継いだシルヴィンは、自領の隣の不幸な少年領主の戦いを興味本位で見物しにいっただけだった。二倍の敵相手に自分を囮にして自軍に有利な地形に誘い込み、アルスラーダ率いる別動隊が後背を急襲、敵の大将に攻撃を集中させ見事に討ち取った。

(こいつには勝てない)

 自分より三歳も下の少年に敗北感を味わったシルヴィンは弟と共にアールファレムに臣従を申し出た。

 シルヴィンの治める領地はアールファレムの領地の二倍であった。

 名門ギュンター家の兄弟を配下にした事でアールファレムは大きく勢力を伸ばし、その後の快進撃の原動力となった。

 シルヴィンは攻守共に堅実で、アールファレムの作戦の要となり、常に信頼に応え続けた。

 兄が銀竜と称されるのに対し、カスパードは金竜と呼ばれた。理由は単純で髪の色そのままである。もっともシルヴィンの髪は肩よりも長いが、カスパードは短かかった。敬愛するアールファレムと同じ色の髪というだけで誇らしかった。

 兄とは全てが対照的で積極的で派手な用兵を好んだ。地味な兄を内心では見下していたが、周囲の評価はカスパードの認識とは反対であった。カスパードにとってはアールファレム以外の評価など、どうでもよかった。しかしアールファレムが即位した時、軍の最高責任者たる大将軍は兄シルヴィンが任命され、カスパードは将軍でしかなかった。カスパードの不満は徐々に募っていった。態度や言動には気を付けていたが、アールファレム、アルスラーダ、シルヴィンには気付かれていた。ただカスパードの忠誠心は高く、能力も決して低い訳ではなかった。アールファレムは職責をもって彼の忠誠に報いた。

 帝国北部の大山脈を越えた所にあるゾレスト地方は冬は雪に閉ざされた僻地である。大山脈を迂回しなくてはいけない為、どうしても物資の輸送に時間と金がかかった。最後にアールファレムに帰順した土地で安定させるまでは信頼した者に任せたかった。カスパードはアールファレムから頼まれた以上、断る訳にはいかなかった。ゾレストに赴いたカスパードは精力的に内政に励んだ。決して無能な男ではない。着実に成果は上がっていったが、疑惑は膨れ上がる一方だった。兄が自分を僻地に追いやるように進言したに違いない。実際はアルスラーダの仕業であったが、兄しか眼中になかった。或いはカスパードこそシルヴィンを一番過大評価していたかもしれない。シルヴィンはアルスラーダの思惑に気付いていたが、弟に忠告はしなかった。カスパードはシルヴィンの敵ではなかった。目障りな虫が居なくなるのはシルヴィンにとっても都合がよかった。

 悩み続けたカスパードは半年後、皇帝に真意を尋ねる為、帝都に戻った。アールファレムはカスパードの手をとって、再会を喜び、満面の笑顔で出迎えた。


「陛下。ゾレストの民を必ずや陛下には心服させて見せます」


 涙を流さんばかりのカスパードにアールファレムは、カスパードの両肩に手を置きながら激励した。


「ああ。カスパードになら安心して任せられる。頼んだぞ」


 単純なカスパードにはそれだけで充分だった。カスパードはゾレストに戻り今まで以上に仕事に打ち込んだ。皇帝の期待に必ず応えてみせる。

 しかし悪意はカスパードを破滅へと導いた。アルスラーダが仕掛け、シルヴィンが利用した。

 そして、もう一人カスパードの副官のデュークが事態を加速させた。

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