アリスの欠点と三月兎の仕事
「あ、そういえば迷子なんだよね?僕が案内…いや、もうすぐ彼女が来るかな」
そしてそんなラピスを気にすることもなく、エドは数回キョロキョロと周りを見渡した。そして、ある一点を見つめる。
トトトトトトトトトトトトッ
森の向こうから凄い速さで小柄な物体が走ってくる。その速さはラピスと同程度で、同じ兎であることがうかがえた。
そしてそれはアリスたちの手前で急停止する。金色のポニーテールが揺れた。
「もしや……希未?」
「…そうや。生憎やけど、再会を喜んどる時間はウチにはないねん。はよウチについてきいやぁ」
希未と呼ばれた三月ウサギことロビンは、早口に捲し立てる。黄色いウサギ耳とポニーテールが小刻みに揺れていた。
相当苛立っているのだろう、ロビンの腰に携えてある刀がラピスの方を向いてカタカタと震えていた。
ーー…物騒だなぁ………。
「はよしいや。ウチはただでさえ溜まってる仕事放っぽり出して来てんねん。真白のヘマと透魔のサボりが痛いんや!給料下がったら………どないしてくれるんかなぁ?」
そしてギッと真っ白になったラピスとにやにやしてるエドを睨んだ後、違和感に気づいたのか、不思議そうに首をかしげた。
「なんや、真白。どないしたん」
「ぅぇ?あわわわわっロビン……」
「復活したな、なんや知らんけど、はよ行くで。女王(と、ウチ)が立腹する前に行かなあかんねん」
纏うオーラさえ腹が立っているロビンは、真白を抱えて猛スピードで森の出口に走っていった。その際に巻き上げられた砂ぼこりが視界を覆い、暫し目を閉じた。
「透魔」
「なんだい?アリス」
やがて砂ぼこりが晴れたあと、紫猫の名を呼ぶ。
「お前ならさ、ここから出るなんてすぐ出来るよな」
「…まあ、ね」
彼はこの先の言葉がわかったのか苦い顔をした。
ーーまたいつもと同じパターンか………
「連れてけ。真白じゃなくて俺が方向音痴なんだから」