アリスの友と白兎の懐中時計
シロウサギ、アリスは真白と呼んでいたが、本名はラピスという。一人称も僕だが、れっきとした女の子である。
シロウサギというだけあって髪は白く、ウサギの耳と尾がある。ついでにいうと足が早いし、蹴られると物凄く痛い。ウサギの脚力がラピスの長所でもあった。
そんなラピスの案内のもと、アリスは森の中を進む。
「でもまあ、アリス。よくこの学園に来ようと思ったね」
先を進んでいたラピスは足を止めることなく振り返り、アリスに気になったことを言った。ラピスは好奇心旺盛で、すぐ気になったこと口にする。そして遠慮ということを知らない。
そのせいでついた通り名が《小学生》だ。今回はその通り名がわかるほどのことはないだろう。なにせアリスだから、スルッと答える。
そして、今向かっている鏡世界立ローズクイーン学園はアリスがいた世界と違う世界にある。それだけでも、わざわざこっちの世界まで来てその学園に入ろうと思えるのかとの疑問が湧く。また、学園も個性的で、好んで入る者も少ない。
つまり、なぜアリスがそんな学園に入ろうと思ったのか、それはラピスでなくとも湧く疑問だった。
答えは実に簡単なものだった。
「友達がいるから」
「…!」
腕を頭の後ろで組み、気だるげに話す。そんな様でもかっこいいと思えたラピスは、先ほどからの心臓のどきどきを未だ止められなかった。
それに、アリスも自分たちのことを大事に思っているのだと思うと、嬉し涙が出そうになった。
その反面、アリスの五年前から変わらぬ性格と態度に安心したと同時に一抹の不安を覚えたけど。
ーーそっか……
懐中時計を見て周りを見渡して進む。懐中時計は方位磁石や周辺の地図が記録されていたり、遭難しないようにできているためだ。
アリスは遭難しなかった、ことは一回もない。