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【兄帰る】
生徒会の仕事が遅くなった透が帰宅をしたのは既に22時。
居間に顔を出すなり涼子が言った。
「兄ちゃん今日は一度帰って来た?」
「は?」
「やっぱりね…」
涼子はそう言うと今日の出来事を話し始めた。
時間は19時頃の話。
父は犬を抱いて居間でテレビを。
母は夕食の支度に台所。
妹は和室に居た。
玄関で物音がした。
階段を登る音。
「なんだ、涼子の奴うるさいな」
英雄の言葉に涼子が応える。
「私はここだよ。兄ちゃん帰って来たんじゃないの?」
「あら、ならご飯が出来たから涼子、透を呼んで来て」
もちろん透は居る筈もなく、3人が聞いた音の主も未だに不明のままである。