【占い・中編】
「それって、浜省のカセットの…」
以前『形見なんだ』と翔が言っていたカセットテープを思い出した。
「そう。それが亡くなった賢介の」
「事故だったんだ」
「うん。バイクと一緒にトラックの下に突っ込んだんだ」
「そう……」
透はそれ以上は会話を続けなかった。
今、目の前に居る『怖い人』はとてもそんな風には見えない可愛らしい女性だった。
街で見掛けたなら間違い無く目で追うだろう。
彼女は透と翔を招き入れるとリビングのテーブルに案内した。
「食卓でごめんなさい」
申し訳なさそうに言うがセンスの良いクロスのが掛けられたテーブルは、インテリアショップのディスプレイの様で素敵だった。
翔は「これ、限定のやつ」と地元の有名菓子店のケーキを手渡した。
今ならスイーツなんて呼ばれるのだろうが、当時は言ってもデザートだ。
時代がどうあれケーキは大抵の女性を笑顔にする。
初対面の透が居て、少し緊張した雰囲気が幾分か和らいだ。
が、すぐに彼女の顔が真剣なものとなる。
翔の手を取り見詰めると「なるほど」と呟いた。
「虫眼鏡とか使わないんだ」
透はふと思った事を言ってしまった。
(いけね)
集中の邪魔をしてしまったと思いバツが悪かった。
「私は使わないの。じっくり見ると分からなくなるから」
少し笑って言ってくれた。
「さて、翔くん」
「はい!」
彼女に名前を呼ばれた翔はかしこまった。
「色々と見えたけど、何から話そうかな……」
「金運とか」
「金運はね、良いよ。翔くんはお金には困らない。けどね、翔くん自身は小金持ちで、大金をどうこうするわけじゃないみたいね。そしてその転機は27歳か28歳ね」
「小金持ちなんだ」
となりで透はそう言って笑い、翔はそう言って軽くうなだれた。
「翔、1番気になってるのは恋愛じゃないの?」
透が翔を冷やかすと彼女もニヤニヤしながら話し始めた。
「もう出会ってるわね」
「えっ?」
「恋人というより結婚相手よ。来春には結婚すると思うな。そして……ううん、やめとこ」
最後は意味深に笑った。




