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【化身】
北海道の夏休みは短い。
3週間程度だ。
透は小学生時代の6年間、夏休みはずっと祖母の家に居た。
……と言うより預けられていた。
実家から100km程離れた海辺の街。
「家に入って来た蝶は採るんじゃないよ」
お盆の時期になると婆ちゃんはそう言っていた。
仏様が蝶に姿を変えて還って来ている。
透はそう教わって育った。
中学に入ると部活もあり、祖母の家には預けられなくなった。
実家には蝶が入って来ない。
祖母の家にはあれだけ訪れていた蝶達が、透の実家には1頭も来なかった。
庭には沢山の蝶が舞っているのに不思議で仕方が無かった。
「婆ちゃん、ウチには蝶が来ない」
お盆に家族で帰省した時に透がそう言うと「透の家から仏様が出てないからだよ」と教えてくれた。
そんな婆ちゃんが亡くなったのは、透が23になった年の秋。
翌年の盆を迎える頃、実家の居間をモンシロチョウが1頭。
たゆたうように舞っていた。
それから毎年、盆時期になると蝶が来る。
「今年は黄アゲハだよ。婆ちゃん派手だなぁ」




