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怪 談   作者: 冬月 真人
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【墓参り】



揚羽蝶が掘られた墓石。

この石の下には祖母と従兄弟が眠っている。

まだふたりだけしか入っていない墓だ。

まさか祖母の次に20代だった芳樹が入るとは思いもしなかった。

ある日突然に自ら命を絶ってしまった芳樹が祖母の隣に名を刻まれている。

本来なら祖父が面倒を見る墓だが、もう高齢で外出もままならない。

母方の長男、つまり透の伯父の慎一も難病であまり無理はさせられない。

その息子といえば弟の葬儀ですらまともに務めなかった長男。

誰もアテにはしていなかった。


(まあ、婆ちゃんの墓だし…)

透は母方の初孫。

1番の年長者としての妙な責任感もあって墓参りに来ていた。

案の定、荒れ放題。

透は掃除をする前にまず花を供えた。

この暑さ、先に水をあげなければ仏花がしおれてしまう。

左右対称に供えた花のおかげで多少は見栄えがする。

後は墓石と周りを綺麗にしたなら完璧だ。

透は汗を拭いながら雑草を抜き始めた。

それにしても暑い。

昼には30度に届く予報。

空には雲ひとつ無い。

ジリジリと照りつける日差しを背中に浴びながら、ようやく墓の裏側迄草むしりが進んだ。

「芳樹、ホントならこれはお前の仕事だぞ。勝手に死んじまいやがって馬鹿野郎」

透はもう会えない従兄弟の顔を思い浮かべて悪態をついた。

と、その直後だった。

透はいきなり背中を殴られた。

いや、背中に何かを投げ付けられた。

驚いて飛び退いた透は、自分の背中にぶつけられた物を見て、腰を抜かすようにその場に座り込んだ。


そこにはさっき供えた仏花が落ちていた。

「嘘……だろ」

目の前の光景が信じられない。

が、これは現実だ。

「分かったよ、婆ちゃん」

透はそう言うと仏花を拾ってもう一度供え直した。

婆ちゃんが(芳樹を責めるな)と叱ったような気がした。

「芳樹、婆ちゃんにいっぱい甘えとけよ」

透は手を合わせるとそう呟いて祈った。





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