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怪 談   作者: 冬月 真人
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【居て下さい】



耳元で話し掛けられた。

囁くような声ではなく、低くしっかりとした声。

しかし、横を振り向くと誰も居ない。


インターフォンが鳴った。

玄関に出るが誰も居ない。

モニター付きの受話器の履歴には鳴らされた記録は無かった。


荷物を満載にしたカーゴテナー(車輪付きの荷籠)を引いていた。

急に軽くなったので誰かが手伝いをしてくれていると思って礼を言った。

……誰もいなかった。


片側二車線の道路。

前を走る乗用車。

ふたり乗っている。

左から追い抜きざまにふと横を見ると運転手だけだった。


車庫の脇の砂利を踏みしめる音が近づいて来る。

新聞配達か郵便か?

作業の手を止めて車庫を出たが誰も居ない。


「うわっ、びっくりした!」

赤信号で停車した伯父が驚く。

「こんな夜に縁石に座ってたら危ないよなぁ」

「……そうだね。危ないね」

そう答えた透には人の姿は見えていなかった。





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