【幸せの遺書・4】
透は東北で途方に暮れていた。
勘は見事に外れてこの地方にはそんなわらべ歌は無かった。
更に城抱えの学者でも下位の下位の方だったらしい芹山家。
今のところ資料には名前すら出て来ない。
(だよなぁ。きっと学者で喰えなくて入殖したんだろうな……そういや、尋常じゃ無い北海道の寒さに貴重な文献を焚き付けにしたって聞いたし)
透は以前に和恵から聞いた話を思い出して溜め息をついた。
(よし!)
透は手を挙げてタクシーを止めた。
諦めて北陸に発つことにした。
が、駅に向かう道すがら気になる地名を見つけた。
それは沢木家の出身地の近くにある地名と同じ地名だった。
北陸のそこは地形そのものの地名だったが、ここはどう見ても違う。
「運転手さん、この辺の歴史の分かる資料館的なものは近くにあるかな?」
透がそう尋ねると「役場のトコの図書館くらいしか無いと思うな」と淋しい返事が来た。
透はとりあえず手掛かりが欲しいと藁にもすがる思いで行き先を駅から図書館に変更した。
図書館でようやく見つけた手掛かりは江戸時代、享保以前は違う地名だったということ。
由来はやはり北陸の沢木家の出身地かららしいが、詳しくは書かれていなかった。
普通に考えればそこからの入殖者だろうが、江戸時代は人の出入りが規制されていたはずだからそう簡単に入殖とはいかないだろう。
疑問は解決しないままだったが、沢木家と芹山家がなんとなく繋がって来たような気がして来た。
ただまだ、湯島家が上手く繋がらない。
あのわらべ歌だけでは無理があった。
(仕方がない、とりあえず北陸だ)
透は改めて駅に向かった。
今回は行くべき場所が決まっている。
もちろんこの共通した地名の場所だ。
きっとそこに何かがある。
そう思うと期待と畏れに鼓動が速くなるのが分かった。




