なっちゃん
もうタイトルにはこだわらない。
頑張って考えると時間がかかるので。
というわけで1話です、どうぞ。
―ラーメン屋“味鶴”
「ありがとうございましたー!」
俺の名は篠崎仁。
自分で言うのもなんだが、運動神経も人並み以上にあるし、手先も器用、他に
も得意とするものは多い。
勉学は……まあ置いておくとして、とりあえず申しどころのない高校生だ。
別にナルシストってわけじゃない。
自己評価がきちんと出来ていない奴は才能を幾らか無駄にしているのと変わら
ない、自分のことを理解するのも大切なんだぞ。
正しい理解のもとでこそ自分の能力が最大限に生かせるってものだ。
うん、良いこと言ったな俺。
「おー、お疲れさん。これで昼時の山は越えたな。」
「大将、お疲れさんです。」
「いやー、仁がいてくれるだけで相当助かってるぞ。」
「まあ、お安い御用っすよ。」
「お安い御用じゃないわよ!」
ガラッと音を立てて物凄い勢いでドアを開けて入ってきた少女。
なんだか鬼の形相であるが……
「よぉ、今日は早いね、なっちゃん。」
「こんにちは、大将。」
「何か用かよ、なっちゃん。」
「アンタまでなっちゃん言うな!あーもう……だからそういうこと言いにきた
んじゃなくて!何してんのよ、アンタは!」
「何ってどこをどう見てもバイトだろ。ねー大将。」
「なー。」
「だから、学校さぼって何バイトなんかしてんのって話よ!」
うむ、今日は平日。
勿論特別な学校などに通ってなどいないので通常どおり授業があるはずだ。
しかし、俺は午前からここで働いていた。
「そう、あれだ…………忘れてた。」
「そうなの、今月に入ってから何回忘れてんのかしらねぇ……」
マジで目が怖いです。
この俺にこんなにも文句を言ってくるこの少女。
名前は立花奈津美。
微妙なところだが関係は幼馴染という感じか?
といっても一時期は離れていたのでずっと一緒だったわけでもない。
「それよりナツのほうは今日は部活はないのか?」
「いや、それは確かにあるにはあったけど……」
ナツというのはいつだったか俺が奈津美をそう呼ぶようになった名前だ。
先ほどのようになっちゃんなどと呼ぶと大変怒られる。
そのナツの家は剣道の道場とかで部活も剣道部である。
というわけでそこらの高校生じゃ相手にならないくらい強い。
「俺に言っといてナツこそ部活さぼってんじゃねぇか。」
「私は別に大会のときとかのために頼まれて入ってるだけだし、毎回の練習に
出る必要はないのよ!それに……仁が今日も学校に来てないみたいだから、気
になって……」
「相変わらずのツンデレだな。」
「ツンデレ言うな!」
性格上、どう考えてもツンデレに分類されると思うのだが……
見てのとおり、本人はそれを指摘されるとこうして否定するわけだ。
難儀だなぁ。
「じゃ、俺次違うバイトが入ってるから。」
「あ、ちょ、コラ!待ちなさ……」
「さらば!」
おそらくナツの口撃が止まることはないだろう。
そうなる前に俺は撤退をはかった。
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そこは薄暗く、表現のしようがない空間。
感じられるのはもはや違和感のみ。
しかし、それを感じるのは世界に住まない者。
仁たちが暮らす世界に住む者がいるようにこの世界にもそれは例外なく存在し
ていた。
「ご報告が!またいなくなられました!」
「これで何度目だ!見張りは強化しろと言ったはずだろう!」
「すみません、ただ私たちでは到底敵いません。あの方のレベルはトップクラ
ス、それはご存知でしょう。」
「だからこそ、もっと見張りをつけろと言ったのだ!」
「はい、すみません!」
「まあいい。適当にまたそこらをぶらぶらしておるのだろう。さっさと捕まえ
て、連れ戻せ。」
「あの…そのことについて、大変申し上げにくいんですが…」
「なんだ?」
「どうやら、その…“門”をくぐったらしく…」
「なに!?それは本当か…!」
「怒りをお静めください!ここがもちません!」
「くっ、遂にあちらの世界まで…。分かっておるだろうな、さっさと連れ戻せ
なければ…!」
「しかし、あちらは私たちにとってもリスクが伴う場所。そう思っていたから
こそあの方も行かないと踏んでいたのですが、あの方の実力を考えるとたしか
に普通の者が行くよりも可能性はあります。」
「だが、危険にかわりはないだろう!あちらでは万全の力とはいかん。あやつ
も馬鹿じゃない。それを分かったうえで、追っ手を来させないためにやりおっ
たな……。」
「どうなさいますか。」
「あの馬鹿娘を連れ戻した者にあやつを嫁にくれてやると公表せよ。」
「え、しかしそれは……」
「構わん、まずは連れ戻すことが先決だ。今回の行き先は流石に子どものやん
ちゃだと事ともせずには出来ん!」
「はい。」
「ワシも分かっている。あやつは門を越える実力くらいは備えておる。なら、
絶対にあちらの世界に到達しているはず。勿論こちらからも戦力を派遣する。
分かったらさっさと行け!」
「はっ!」
部屋から出て行く。
今から公表の準備を急いでするだろう。
怒鳴り散らす相手もいなくなった。
「…… 。」
1人だけのその部屋でそっと娘の名前を呟いた。
2場面進行でお届けしました。
後半はまだ意味が分からなくて結構です。
とりあえず、主人公とツンデレヒロイン登場。
主人公は適当な性格?っぽくしました。