第三十三話 「海水浴 前編」
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2日目の朝、俺達はホテルのロビーに集まり、今日の予定を立てていた。本当なら昨日決めようと思っていたのだが、昨日は「のぞき事件」でのお仕置きで身動きが取れない状態だった。というより、3時間ほど風呂場で意識を失っていた。一晩越して許してくれた女子達は実に寛大だと思う。・・・だが、果たして本当に許してくれたのだろうか。
「今日は皆、どこに行きたい?」
皆に提案を投げかける。
「やっぱ海水浴!泳がなくっちゃ!」
紅葉が元気いっぱいに発言した。
「うむ。私も賛成だな。」
ソレイユも賛成らしい。後は紅葉と雪奈だけど――
「もちろん賛成です。」
「賛成・・・・・・」
二人も賛成してくれた。
「俺も賛成!!賛成!!水着!!」
颯人が激しく挙手しながら言っている。発言の最後にヤツの本音が出ていたので、女子達からは白い目で見られていた。もちろん、浮かれ気分の颯人は気付いていないが。
それにしても・・・昨日のぞきで女子達に散々お仕置きされたというのに、まだ懲りていないのか、コイツは・・・・まぁ、人のことは言えないんだけど・・・
そんな自分と颯人に半ば呆れつつも、本日の予定は海水浴に決まったのであった。
「うっひゃ〜。相変わらず大きいなぁ。」
男子のほうが着替えが早いということもあり、俺と颯人は一足先にビーチで場所取りをしていた。
太陽は輝き、青い空は白い雲の美しさをより一層引き立てていた。だが、青い空が引き立てているのは雲だけではない。こういったビーチは、青空が非常に良く似合うのだ。
「ああ!それに見ろよ!この水着の美女達を!」
颯人は相変わらずのハイテンションだ。
「なぁ・・・もう騒ぎを起こすのだけは止めような。」
一応颯人に釘を刺しておく。もちろん俺も人のことは言えない。
「おまたせ〜!!」
後ろから紅葉の声が聞こえてきた。どうやら着替えを終えたらしい。
「遅いぞ、紅葉――!?」
振り向くと、そこには俺が選んだビキニタイプの水着を着た紅葉が立っていた。
「エヘヘ・・・似合う??涼太が選んでくれたんだけどね。」
「あ・・・ああ・・・」
ま、まずい・・・似合いすぎる。
その水着は、試着室で見たときよりも、確実に紅葉に似合っていた。
海だからだろうか?紅葉のスタイルの良さと大胆な水着が抜群にマッチしている。
「ぐおおおおおお!!紅葉葉ちゃああん!!サイコオオオオオ!!!!」
「あ、ありがとう・・・あはは・・・」
隣で颯人が発狂しているが、ムリも無い。
それほどに今の紅葉は綺麗なのだ。
我ながら・・・いい水着を選んだな・・・
密かに自分を誇る。
だが、紅葉の抜群のスタイルがあってこそ映える水着だ。本来、俺ではなく紅葉を褒めるべきなのだろう。
「・・・紅葉、すごく似合ってるぞ。」
「えっ―――!!」
俺の言葉に、紅葉は意外そうな顔を返す。
「な、なんだよ。俺が褒めたの、そんなに意外か?」
「意外だよ!まさか涼太が褒めてくれるなんて思わないもん!」
紅葉はさも当然のように言った。
少しショックを受ける。
「でも――」
「?」
紅葉が再び何か言いかけている。
「褒めてくれたの、すっごく嬉しかった。ありがとう、涼太。」
紅葉は満面の笑顔で言った。
「い、いいって!ホ、ホントの事だから!」
面と向かってお礼を言われたのが少し照れくさかったのか、適当な返事を返してしまう。
「もう。本当に思っているのかしら。」
「ほ、本当だってば・・・」
俺は照れたりすると、すぐにごまかしてしまう癖がある。こういった癖は直した方が良いのかもしれない。・・・・・・・・と前々から思ってはいるのだが中々直せないのだ。男版ツンデレだ。・・・・・萌える?
などと心の中で冗談を抜かしていると、ソレイユ達も着替えを終え、俺達の元へとやってきた。
「お、お待たせしました・・・」
「あ・・・・・」
桜を見る。
俺が選んだ水着は、桜にとても良く似合っていた。桜は俺の前で試着をしていなかったので、見るのは初めてだ。可愛らしいデザインの水着と、桜のナイススタイルが、見事に融合している。素晴らしいスタイルと恥らうポーズのギャップがまたイイ。・・・・いかん、俺はどうも女の子の水着姿を見るとオヤジ化してしまうらしい。
「やっぱり、桜が着たらもっと可愛くなったな。」
「へっ・・・・・!?」
桜からボンッという音がなったかと思うと、彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「あの・・・恥ずかしいです・・・・でも・・・・嬉しいです・・・」
聞こえない程小さな声で言う。だが、喜んでもらってる・・・・のか・・・?
次に、雪奈を見る。
「・・・・・・・・・」
前に試着室でも見たことがあったが、やはり俺が選んだ水着は雪奈に良く似合っていた。紅葉と同じく、試着室で見たときよりも何倍も似合っているように感じる。
「雪奈、よく似合ってる。可愛いぞ。」
「・・・・・・・ありがとう。」
雪奈は頬をかすかに紅く染め、そう言った。その顔は、かすかに微笑んでいる。
「ぐ、愚民・・・わ、私はどうだ・・・・」
「ん?」
ソレイユに声を掛けられ、振り返る――
「――!!」
そこには、水着姿のソレイユがいた。
華奢な体に密着する水着、スラリとしたボディライン。
俺が選んだ水着は、驚くほどソレイユに似合っている。見るのは二度目だが、一回目に見たときは、これほどの衝撃を受けなかった。
輝く太陽とは、まさにこの事か。
・・・・正直、可愛かった。
「・・・・・・・」
「む・・・・な、何とか言え・・・」
「はっ!!」
いかん!見とれてしまっていた。以前、試着室で見たときにも見とれてしまったのだから、ムリは無い。
「似合ってるよ・・・すごく。んと・・・か、可愛い・・・」
「―――ッ!?」
まさか、可愛いなどと言われるとは予想していなかったのだろうか。ソレイユは顔を真っ赤にして固まってしまった。
「き・・・貴様などに・・・可愛いとなどと言われても、ち、ちっとも嬉しくなんかないぞ!お、覚えておけよ!!」
「はいはい・・・」
相変わらず素直ではないソレイユ。
「んじゃ、せっかくの海だ。皆、泳ごうぜ!!」
「「「「「おーーーっ!!」」」」」
俺の言葉を合図に、皆一斉に海へと駆け込む。
海の水は冷た過ぎず、程好い温度だった。
波が引き、砂の流れに足が巻き込まれる感覚・・・・海に来たということを実感する。
「えいっ!」
バシャ――
「うわっ!」
顔に海水がかかる。・・・誰だ、こんな事をする奴は・・・
「えへへ・・・」
・・・紅葉だった。しかも、もう一発水をかける準備をしている。
そっちがその気なら・・・応戦してやるぜ。
「くらえ!」
バシャッ――
紅葉に向かって、水をかける。
「つめたっ!」
見事にヒット!ガッツポーズを取る。
「やったわね〜!えい!えい!えい!」
バシャバシャバシャ――
「ぐあっ!!」
紅葉の突然の不意打ち。全て顔面にヒットしてしまった。舌が少し塩辛い。
「くそっ!こっちも――」
バシャバシャバシャ――
「ぐああ!!」
反撃しようとするも、紅葉の攻撃はまだ続いていた。
「いてっ!!」
その一発が目に入り、俺は背中から海面に倒れてしまった。
ドボンッ――!!
大量の海水が口と目に容赦なく浸入する。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!目がぁぁぁぁぁ!!しょっぱぁぁぁぁぁぁ!!」
「あはははははははは!」
度を越えた目の痛みと口内の塩辛さに悶絶する俺を見て、紅葉は呑気に笑っていた。
海水浴はまだまだ始まったばかりだ。
なにが起こるのかは、まだ分からない。不安もある。
だが、なぜかこの海水浴は楽しいものになるような予感がしていた。
次回予告――
海水浴の定番――
「スイカ割り?」
案内役と――
「右です〜!」
邪魔するものたち――
「もっと前だ!」
オレンジ色に染まる海と――
「ま、水着も良いけど、こういうのも悪くないな。」
黒く邪悪な意思――
「あ〜あ、溺れ死ななかったかぁ・・・」
次回 第三十四話 「海水浴 後編」