第三話 「同居」
考えてみて欲しい。
自分の家に、突然可愛い少女があがりこんでいたとする。
まぁそれだけでも驚きなのだが、なんとその少女は自分のことを「神」だと言い出した。
そんな少女を前にしたら、どうすれば良いのか。・・・誰か教えてくれないか。
そもそも皆さんは、「神」と聞いてどのようなイメージを持つだろうか?
ある人は「立派なひげを生やした老人」のイメージ。
ある人は「仏像さま」のイメージ。
ある人は「あらゆる生物を超越した奇形の生物」のイメージ。
イメージは人それぞれだろう。
しかし!皆さんの中に「可愛い女の子」をイメージした人はいるだろうか。
まぁ中にはいるかもしれない。
だが俺はそんなイメージを持ったことは無い。一切無い。断じて無い。
しかし、俺の目の前の少女は、確かに自分のことを「神」と名乗っているのだ。
それだけではない。宙に浮いたり、電撃を浴びせたり・・・とても人間業とは思えない。
こんな少女を前にして、俺はどうすれば良い?
知っている人がいたら、今すぐ教えていただけるとありがたい。
「私の名は、ソレイユ・エスターテ。太陽神だ。」
俺の前に突如現れた「ソレイユ」と名乗る少女は、俺に向けてそう言った。
・・・大丈夫なのか、この子。自分のことを「太陽神」だなんて。
確かに俺も、自分のことを「神」だと名乗る人間達を主にテレビで見たことがあるが、ろくな人間ではなかったと記憶している。この少女もその類だろうか。
「・・・それより、貴様は何者なのだ。名を名乗れ、愚民よ。」
ソレイユはその可愛らしい腕を組み、やたら偉そうに俺に尋ねた。
「・・・俺の名前は、四季嶋涼太。ただの高校生だよ。」
ソレイユに向かって名乗る。一応、職業も言っておく。
「四季嶋・・・では、貴様がこの家の家主か?」
ソレイユは首を傾げながらそう尋ねた。
家主と言われてもな……今は俺しかこの家に住んでないし、一応そうなるのかも知れない。
「・・・まぁ、一応そうだけど。」
「まぁ」と「一応」を付けたのは、まだ確定していないからだ。勝手に家主だと名乗って母さん達に怒られるのは嫌だからな。
しかし、だから何だと言うのだろうか。
俺が家主である事と、彼女が突然侵入してきた事に、何の関係があると言うのだ。
「そうか。私は今日からこの家に住む事になった。よろしく頼む。」
「ああ。分かった。・・・・・・って、はい!?」
今、なんと言った?
俺の聞き間違いで無いとすれば、とんでもない言葉が彼女の口から飛び出したと思ったのだが。
……頼むから、気のせいであってくれ。
「あの・・・もう一度言ってもらえますか?」
さっきのは空耳だ。そうに違いない。そう願いつつ、少女に尋ねる。
「む・・・一回で聞き取れ。私は今日からこの家に住むことになった。」
……あぁ、どうやら聞き間違いではないらしい。
「・・・冗談はその位にしような。ほら、さっさと帰らないと、親御さんが心配するぞ。」
こういう危ない人間は早急にお帰りいただくに限る。俺はできるだけ優しく帰宅を薦めた。
「貴様・・・それが神に対する態度か・・・」
俺の態度に、ソレイユは怒りを露わにしていた。
「はいはい。どうでも良いけどもう遅い時間だ。夜道は危ないから、俺が送ってやるよ。俺の家に勝手に入ったことはお母さん達には内緒にしてやるから。」
ソレイユの顔が、真っ赤に染まっていく。無論、照れているのでは無く、怒っているのだ。
「・・・よかろう。ならば、身を持って
知るが良い。」
ソレイユはそう言うと、なにやら呪文のようなものを唱え始めた。
「@△●?ΩΣ・・・・」
何やら聞き覚えのある呪文。ひどく嫌な思い出があったような気がする。……ああ。思い出した。これは、風呂場で聞いた呪文だ。
……だとすると、マズイ。非常にマズイ。
「@*?Λβθ!」
バリバリバリバリバリバリバリバリッ――
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺の体に、電撃のような鋭い衝撃が走る。これは、風呂場で受けた電撃と同じものだ。
しかし、一体何なのだ、これは・・・・・・ッ!
シュウウウウウウウウウ・・・・
「ぐ・・・・」
電撃が止む。
何だったのだろう。今の電撃。風呂場の事件が夢でないとなれば、彼女は既に電撃を二回使っている。
「・・・どうだ。信じたか。」
ソレイユは俺を見下すような形で宙に浮いていた。
一体、彼女は何者なのだ。
まさか、本当に・・・
「・・・お前、何者だよ・・・」
「何度も言わせるな。私は太陽神のソレイユだ。」
変わらず自分を「太陽神」と名乗る少女。
「・・・まだ半信半疑のようだな。仕方ない。では、もう一つ見せてやろう。・・・@▲◎?ΛΣΩζγ!」
パァァァァァァァアァァ・・・・
ソレイユが呪文を唱え終えるのと同時に、俺の体はまばゆい光に包まれた。
「な・・・なんだ・・・これ・・・」
先程ソレイユから受けた電撃のダメージが、みるみる回復していく。
それだけではない。転んで擦り剥いた擦り傷や、以前階段から落ちた際に負った打撲までもが、瞬く間に回復していった。
「どうだ。さすがにこれで信じただろう。」
「・・・ああ。」
当然だ。こんなものを見せつけられ、そして体験させられたのだ。逆に信じるなと言う方が無理だ。
だが、一つ腑に落ちない点がある。
太陽神が、この家に何の用があるというのだろう。
「なぁ。その太陽神サマが、俺の家に何の用があるんだ?」
ソレイユに尋ねた。
「別に貴様の家に用があるわけではない。用があるのは、この町だ。」
「町?」
どういうことだ?この町には、そんなに目立ったものは無いはずなんだが・・・
「うむ。実はここ最近、この町に【異常な魔力】が感知されているのだ。私はその魔力の【点検】および万が一のときの町の【警護】のため、この町に来た。」
異常な・・・魔力・・・・?そんなものが、どうしてこの町に・・・
「それで、どうして俺の家に住むんだ?この町に滞在するなら、どの家でもいいんだろう?」
「駐在任務を言い渡された際、住居は【四季嶋家】との指定があったからだ。どうしてかは私も知らん。」
・・・・・・いや、意味が分からない。
そして横暴だ。家主の事情は全くの無視かよ。神という連中は、そういった奴らの集まりなのか?
「まぁそういうことだ。よろしく頼むぞ。愚民。」
「あの・・・他の家に移って・・・」
そう言いかけるが、ソレイユが呪文を唱える準備をしていることに気付き、諦めた。
「・・・くれなくてもいいです。」
「む。何か不満げだな。『この家に住んでくださいソレイユ様』だろう?」
何を言い出すんだ、こいつは・・・・・・
「な、何で俺がそんなこと・・・」
「@△●?ΩΣ@*・・・」
ソレイユが呪文を唱え始めた。どうやら反抗は一切認められないらしい。
「・・・このいえにすんでくださいソレイユさま。」
「・・・・棒読みだな。気に食わん。 @△●?ΩΣ@*・・・」
またも呪文を唱え始めるソレイユ。
やはりダメか!・・・仕方がない。
「・・・この家に住んでくださいソレイユ様。」
・・・言ってしまった。
ついに言ってしまった。
「うむ。よかろう!」
ソレイユはそう言うと、ニコリと微笑んだ。やはり「外見だけは」可愛い。
「・・・何か言ったか?」
「いえいえ。滅相もございません。」
心の中まで読まれてしまってはたまらないぞ。
「では、愚民。早速私の引っ越し祝いをやろう。酒をもってこい!」
「・・・はい。」
こうして、俺達の同居生活が始まった。
・・・・・・いや、始まってしまったのだ。