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第二十六話 「買物」

感想、評価などいただけたら幸いです^^

「じゃあね、涼太、ソレイユ。」


 雪奈の家での出来出来事から、約2週間が経った。

 

 荷物も届き、紅葉は自分の家に帰る事になった。最も、荷物自体はかなり前に届いていたのだが。

 長年使われていなかった紅葉の家は、ひどい荒れ様だった。その為、業者を呼んだり何やらで、帰るのが随分と遅れてしまったのだ。まぁ紅葉の家と言っても、すぐ隣の家なんだが。


「じゃあな、紅葉。一人だけど気をつけろよ。」


「怪しいやつが来たら、すぐに蹴りを喰らわせてやれ。」


相変わらず物騒なことを平然と言うソレイユ。紅葉はそれを見て、クスクスと笑っている。

・・・・・・ソレイユと紅葉が出会ってから、約一ヶ月半。この二人も、ずいぶんと仲良くなったものだ。初めの頃なんて、修羅場の連続だったというのに。今でも時々火花を散らせあうことはあるが、前ほどではない。まぁ、仲良くなるに越した事は無いが。


「それじゃ、もう行くね。ヒマなときは遊びに行くから。」


「ああ。いつでも来い。」


俺がそう言うと、紅葉はこちらに手を振りながら家に帰っていった。


「ふう。これで少しは静かに・・・」


俺はチラリとソレイユのほうを見る。


「・・・なるわけないか。」


思わず落胆の溜息。ソレイユがいる限り、俺に「平穏」というものは来ない。


「さぁ愚民、早く家に入るぞ。今日は私が昼飯を作ってやる。」


「い・・・!いや!待て待て!!いいって!ソレイユは中で休んでてくれよ!」


平然と恐ろしいこと口走るソレイユに、俺は抗議した。ソレイユに料理を作らせてはいけない。そんなことをしたら、「平穏」どころか、「地獄」が待っている。


「む・・・そうか?ではお言葉に甘えさせてもらうぞ。」


どうやらソレイユは納得してくれたようだ。一安心。


家の中に入ると、俺は昼飯を作るため、キッチンへと向かった。

何があったかな・・・・と思いながら、冷蔵庫の中身を確認する。


「何もナイ・・・見事なまでに何もナイ・・・」


 冷蔵庫の中は、空っぽと言っても良いほど何も無かった。

 仕方が無い。外で食うか。


外食するということを伝えるため、二階の自室にいるソレイユに呼びかけた。


「お〜い、ソレイユ〜!昼飯の材料がないから、今日の昼飯は二人で外で食おうぜ〜!」


「うむ!分かったぞ〜!」


すぐにソレイユからの返事が聞こえる。んじゃ、ソレイユ様を待つとしますか。

俺はテーブルに座り、ソレイユが来るのを待つ事にした。




Anoter View 「ソレイユ・エスターテ」


「今日は外食か・・・愚民の料理が食べたかったのだがな・・・はっ!!」


――!自分の言葉に、、ハッとする。ごく自然に今の言葉を発していた。


我ながら失態だと私は思った。そして、自分の心の変化に少し戸惑っていた。


「さて、行くか・・・・・・」


普段着に着替え、部屋を出ようとすると、壁に大切に飾ってある一つのペンダントが目に入った。

 それは、「私が下界に来た記念」に、愚民がプレゼントしてくれたものだった。


「・・・・・・」


せっかくプレゼントしてくれたのだが、恥ずかしかったのと、何より大切にしている姉からもらったペンダントをつけていたのとで、まだ愚民の前ではつけていなかった。もちろん自分の部屋ではつけてみているし、大切に飾ってあるのだが。


「・・・・・・今日くらい、愚民からもらったペンダントをつけていくか。・・・・ごめんなさい、お姉さま。」


私は姉からもらったペンダントを外し、愚民からもらったペンダントを付けた。


「よし・・・!行くか!」


私は愚民の元に向かうべく、一回のリビングへ向かった。





「待たせたな。」


ソレイユが、準備を終えてリビングに来る。首には、俺がプレゼントしたペンダントが光っていた。


「あれ・・・・・・?そのペンダント・・・・・・。」


 俺の前でそのペンダントを付けているのは初めてだった為、少し気になった。


「ん・・・?ああ、これか。・・・たまには付けてやらんと、愚民がいじけるからな。」


 ソレイユはそっぽを向いて、そう言った。


「・・・・」


 改めて見ると、ソレイユは本当に綺麗だった。ペンダントが良いアクセントとなって、ソレイユの美しさを際立てている。


「・・・似合ってるよ。」


俺は小さな声でボソリと言った。


「な・・・・!!ふ・・・ふん!き、キサマにそんなことを言われたって・・・ちっとも・・・その・・・嬉しくなんか・・・・」


「え!?聞こえたか!?」


小さな声で言ったのだが、聞こえてしまったらしい。ソレイユは顔を真っ赤にしながらそう言った。何を言っているのかはよく分からないが・・・


「ほ・・・ほら!さっさと行くぞ!」


ソレイユはそう言うと、さっさと行ってしまう。


「んじゃ・・・俺も行くか。」


俺もソレイユを追って、家を出た。




「なぁソレイユ。何が食いたい?」


「豪華フランス料理フルコース。」


「無理。」


どこで昼飯を食おうかと悩みながら、ソレイユと二人で歩く。

そろそろ空腹も限界に近づいてきたので、適当な店に入ることにした。


「それじゃ、あそこの喫茶店でいいか。」


「うむ。良いぞ。」


ガラッ――


「いらっしゃいませぇ〜っ!」


店に入ると、無駄に愛想の良い店員が挨拶をしてきた。

俺達は店員に案内された席に座り、メニューを見る。


「ご注文は?」


店員が笑顔で尋ねてくる。


「じゃあ、俺はオムライスとコーヒーで。」


俺は写真を見て即座に決め、店員に伝えた。


「そちらの彼女さんは?」


「「なっ!!!!????」」


店員は平然と、そして笑顔でソレイユに尋ねた。


ソ・・・ソレイユが彼女!?な・・・何を言ってるんだこの店員は!?でも俺達・・・カップルに見えてるのか・・・・!?いやいや!そんなことはどうでも良くて!どうでも良くないけど!あれ!?どっちだよ!?いやいや!ホントにそれどころじゃなくて!

・・・・・・ソレイユはどんな顔をしてるんだ・・・?


ソレイユは顔を真っ赤にして「あわわわわ」などと言っている。相当パニック状態なのだろう。


「わ・・・・わわわわ私はチャーハンと野菜炒めとトーストとサラダとナポリタンとグラタンとフライドポテトとチョコレートパフェとフルーツポンチとあわわわわわ・・・!!」


ソレイユがパニックに陥りながら、注文を頼みまくっている。


「お・・・・おい!注文しすぎだ!!ソレイユ!!」


俺はそれを阻止すると、


「すみません。今のこいつの注文は全部無しで、ナポリタンとチョコレートパフェでお願いします!」


と店員に訂正する。


店員はソレイユの混乱に少し戸惑っていたが、何を理解したのかクスっと笑うと、「かしこまりました!」と言いながら、店の奥へと消えていった。


「あ・・・あの店員も、とんだ勘違いだなぁ〜!アハはハハは・・・」


俺は必死にごまかそうとするが、声が裏返ってしまっている。


「そ・・・そうだな!!まったく!バ、バカな店員だ!アハはハははハ・・・」


ソレイユも動揺しているようだ。完全に声が裏返っている。誰の目から見ても、動揺していることは明らかだった。


「おまたせいたしましたぁ〜!!」


お互い動揺し、ごまかしあっているうちに、料理がテーブルに運ばれてくる。

これで少しは落ち着けるだろう。俺はホッと安堵のため息を吐く。


「んじゃ、いただきます。」


「うむ。いただきます。」


食前の最低限の礼儀をして、俺達は食事を始めた。


(でも、俺とソレイユはカップルに見られてるのかな・・・)


ふと、そんなことが頭をよぎる。そして、ソレイユの方へ顔を向ける。


「〜♪」


「――っ!」


ソレイユは嬉しそうに、パフェを食べている。そんなソレイユの可愛さに、一瞬ドキッとしてしまう。


「・・・・?な、なんだ?愚民・・・?」


「あっ!」


ソレイユに声を掛けられ、我に返る。どうやら見とれてしまっていたらしい。不覚だった。


「な、なんでもないよ!パ、パフェがおいしそうだと思ってさ!あははははは!!」


とっさの言い訳を考える。


「そんなにおいしそうなら、愚民も食うか・・・??」


ソレイユはそう言って、俺にパフェをのせたスプーンを向けてきた。


(こ・・・・これはもしかして・・・!!「あ〜ん」というやつか!?そうなのか!?)


俺は迷った。これを口に入れるべきかを。ソレイユは、コレの意味を分かっていないのだろう。


「どうした?食べないのか?」


迷っていると、ソレイユが俺に訊いてくる。俺は決心を固めた。


「た、食べるよ!えいっ!」


パクッ!!


俺は、一思いにパフェを口に入れた。


「どうだ?おいしいか?」


ソレイユがニコニコと笑顔で尋ねてくる。


「あ、ああ。おいしかったよ。ありがとな。」


これじゃあまるで本物のカップルじゃないか・・・・






店を出た俺達は、買い物をするべく、商店街に向かった。


「うわぁ〜・・・・人がいっぱいだよ・・・」


商店街は、休日のためか、非常に混雑していた。これでは、いつ逸れてもおかしくない。しかし立ち止まっていても意味がないので、俺達は人混みの中を歩き始めた。


「お、お〜い!ぐ、愚民!このままでは・・・逸れてしまう・・・!!」


ソレイユが人混みに飲まれかけている。身長が低いソレイユには、この人混みは少々辛すぎたようだ。


「よし、んじゃ、こうしよう。」


ギュッ――


俺は、ソレイユの手を握った。


「あ・・・・」


無意識だった。何の考えもなしに、ソレイユの手を握っていた。


ソレイユは顔を真っ赤にしながら、素直に俺に手を引かれている。


(お、おちつけ、おちつけ・・・・)


俺は必死に冷静を保とうとした。だが、心臓はバクバクと高鳴り、顔までも高揚してきているのが自分でも分かった。


「お、俺から離れるんじゃないぞ!」


「わ、分かっている!」


どうしたのだろうか。

いつもならば、こんなに緊張することはない。それに、一緒に住んでいるのだ。いまさら手を繋ぐくらいで、何を赤くなっているのだろう。


ドキドキドキ・・・


俺の気持ちとは裏腹に、心臓の高鳴りは加速していく。緊張はピークに達していた。


それでも俺は、ソレイユの手を離さなかった。


いや、離したくなかったのだろう。ずっと繋いでいたかったのだ。さすがに買い物のときは離したが、人混みに出ると、どちらともなく手を繋いだ。それは、まるで本物のカップルのような、ごく自然な動作だった。


そして俺達は、手を繋いだまま帰路についた。

もう人混みはない。手を繋ぐ必要もないというのに、俺達の手は離れなかった。


俺はともかく、ソレイユは離したがっているのではないかと思い、ソレイユに尋ねることにした。


「なぁソレイユ。」


「なんだ、愚民?」


「ずっと手繋いでるけど、イヤじゃないのか?」


「・・・・」


ソレイユはしばらく黙っていた。やはりイヤだったのだろうか。俺がそう思っていると、ソレイユは静かに口を開いた。


「別にイヤではない。確かに当初の私ならば、貴様と手を繋ぐのは拒んだだろう。だが、今は拒まん。愚民は愚民なりに、私の為を思っての事をしてくれているのだ。それを無碍にするような真似はしたくない。だからこのまま、手を繋いで帰ろう。たまには良いではないか。少なくとも、私はイヤではない。」


「ソレイユ・・・」


嬉しかった。ソレイユの口からこんな言葉が聞けるなんて、思わなかった。

俺は思った。こいつのために、できることをしてやりたい。


「・・・そうだな!じゃ、このまま帰ろう!帰ったら、俺が特製料理作ってやるから!お前の為にさ!」


「それは本当か?それは楽しみだ♪」


俺達はずっと手を繋いだまま、家に帰った。


今は、ソレイユが喜ぶ事ぐらいしかできない。

でも、いつかきっと、もっと大事な事をしてやれる日が来る。

例えどんなに辛いことだろうと、俺はやろう。

ソレイユのために――


次回予告


夏休み――

「いや〜、やっと夏休みか。」

それは学生にとってのオアシス――

「地上界の【夏休み】とやらは、初めて経験するな。」

そして旅行の時期――

「ねぇ、夏休み中に、みんなでどこか旅行に行かない?」

日常では終わらぬ夏休みが今、幕を開ける。

「あぁ〜!!私も知ってます!確か、【夏鈴島】ですよね?」


次回 第二十七話 「夏休」

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