第二十三話 「突入」
前回のあらすじ:雪奈の転校を止めるために、雪奈の家に向かった涼太達。その家はとても巨大で、家というよりはむしろ城であった。犬小屋や倉庫の巨大さにも驚く涼太達だが、ソレイユが突然呪文を詠唱し、犬小屋を破壊した・・・・!!
シュウゥゥゥゥ・・・
俺達の目の前には巨大な犬小屋の残骸。ソレイユが破壊したものだ。
かつての犬小屋は無残にも焼き焦げ、煙を立てている。
ソレイユはそれを見ると、満足げにつぶやいた。
「ふむ・・・まぁ、こんなもんだろう。」
「こんなもんだろう、じゃねえよ!何いきなり犬小屋ぶっ壊してんだ!」
まったく、何を考えているのだろう。いきなり破壊とは。こうなることは一応頭に入れておいたが、まさかいきなり破壊工作に出るとは・・・
これにはさすがの雪奈も驚いたようで、口をポカンと開けて、元犬小屋を見つめている。
桜にいたっては卒倒寸前で、涙目でわなわなと震えている。
紅葉は相変わらずだなぁといった顔で、こちらを見ている。
ブーブーブーブーブーブー
「な、なんだ?」
突然、警報ブザーが鳴り始める。と同時に、複数のガードマンらしき人物が、こちらに向かって走ってきた。
「ま、まずい!こっちに来るぞ!」
「逃げろ!!」
俺達は揃って逃げ出す。しかしソレイユは全くあわてた様子もなく、むしろ作戦通りといった表情で、微笑すら浮かべていた。
なぜ、こんなことをしたのか。いくらソレイユでも、ストレス解消などというわけがない。何か考えがあるはずだ。
俺はソレイユに問いただしてみることにした。
「おい、ソレイユ。なんでこんな騒ぎを起こすような真似を・・・?」
ソレイユはこちらに視線を向け、ニヤリと笑って問いに答える。
「ふっ。我々が堂々と雪奈の両親と話ができると思っているのか?話を聞いた限りでは、雪奈の両親は、我々(特に愚民)を雪奈の友達とは認めん。堂々と話し合いに応じてもらおうとしても、追い返されるのが関の山。つまり、我々は無理やり突入するしかないのだ。だが、こんな城のような屋敷のことだ。相当な数のガードマンが守っているのは当たり前。そんな中に力ずくでは突破不可。よって邪魔なガードマン達の注意を別のものにそらす必要があるのだ。」
「だから犬小屋を・・・?」
俺は再び問う。
「ああ。あれだけ馬鹿デカイ犬小屋だ。大破すれば相当に目立つだろう。ガードマン達の注意をそらすにはうってつけだった。今の爆発でかなりの数のガードマンが犬小屋に向かったはずだ。」
なるほど。つまり、ガードマンが別のものに気を取られている隙に、雪奈の家に突入するって事か
紅葉、桜、雪奈も納得したようだ。なるほど、と頷いている。
「・・・ああ。分かった。お前の考えてることは分かったんだけど・・・コレ・・・ヘタすりゃ・・・いや、ヘタしなくても警察沙汰だよ・・・」
俺はソレイユに向かってそう言った。
「ふっ・・・そうだな・・・これで、成功させるしかなくなったぞ!!」
ニヤッっと笑いながらそう言うソレイユ。
・・・まったく。無理しすぎだって。まぁ、俺も賛成だけどさ!
こうなったら、とことんやるしかない!
「・・・よ〜しっ!!やるぞ!みんな!」
おーっ!と意気込み、走る速度を上げて城を目指す。
が、まだ結構な数のガードマンが残っているらしい。あちこちに徘徊している。
「ちっ!まだ足りなかったか。仕方がない・・・殺るぞ!」
ソレイユが殺気満々でそう言う。
「おう!・・・ってコラコラコラ!殺っちゃだめだろ!!ってか神様がそんな言葉つかっていいのか・・・」
いつものことではあるが、一応突っ込んでみる。
「チッ・・・仕方がない。少々加減してやるか・・・@△●?ΩΣ@*?Λβθ!!」
バチバチバチバチバチィィィィッ!!
ソレイユが呪文を唱えると同時に、鋭い電撃がガードマン達に襲い掛かる。
「「「ぐぉぉぉおぉぉぉぉぉおおおぉおおぉぉおお!!」」」
次々と倒れていくガードマン達。
「ぎゃああああああ!!」
そして巻き添えを食らう俺。・・・いつも通りだ。
「あ・・・すまん愚民。手元が狂った。」
もちろん、反省の色はない。
「お・・・お前なぁ・・・・」
ボロボロになりつつもソレイユに文句を言おうとするが、紅葉の一言でそれは遮られる。
「ほら!のんきに話してないで!今がチャンス!行くわよ!」
俺達は城までの道のりを一気に駆け抜け、なんとか城内に入ることができた。
しかし、ここからが問題だ。城の内部のガードマン。最も重要な場所を守っている連中だ。一筋縄ではいかないだろう。
「でも・・・俺達は行かなくちゃならないんだ。みんな!覚悟を決めよう!」
みんなはコクンとうなずく。
「よし・・・行くぞ!雪奈、両親達の部屋までの道案内頼む!」
俺達は一斉に駆け出す。雪奈の的確な道案内で、迷うことなく進むことができた。
が、やはりガードマン達はそれを拒もうとする。
「どけ!貴様ら!@△●?ΩΣ@*?Λβθ!!」
バチバチバチバチィィィ!!
「「「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」
城内でも、ガードマン達をバッタバッタとなぎ倒していくソレイユ。
俺も切り込みに協力したいが、紅葉たちを守る者がいなくなる。それだけは避けねばならない。切り込みは、ソレイユに任せることにした。
「・・・!あそこ・・・!」
階段をあがった所に、大きなドアを発見した。
「アレか・・・!!」
俺達は階段を一気に駆け抜け、ドアを突き破る。
そこには―――
「・・・何事だ・・・騒がしい・・・!」
「そうですよ・・・全く・・・」
冷ややかな目をした背の高い中年の男性と、とてつもなく高価そうなドレスをまとった優雅な女性が、そこにいた。
(こいつらが――雪奈の両親・・・!!)
「何のようだ、貴様ら。」
雪奈の父親が、静かに、しかし厳しく、口を開いた。
次回予告
雪奈――
「あなたが雪奈の父親ですか・・・!」
俺達は、お前の友達だ――
「こいつらは、お前の【知り合い】だろう?【友達】ではないな?」
奪われた自由は――
「クズが何を言おうが、所詮は戯言だ。」
俺達が取りもどす――
「雪奈。今度は、雪奈の意見を言う番だ。雪奈は、どうしたい?生まれてはじめて、雪奈の気持ちを両親に話すんだ。」
次回 第二十四話「交渉」