表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/55

第二十二話 「巨城」

感想、評価などいただけたら幸いです。

水曜日――

俺達は学校をサボり、地図を頼りに雪奈の家に向かっていた。

理由はもちろん、雪奈の転校を防ぐためである。


雪奈の話によれば、今週は水曜日だけ雪奈の両親の仕事は休みらしい。つまり、話し合うには、今日しかないということだ。


雪奈とは、雪奈の家の前で待ち合わせしている。もう俺達の学校はどうでもいいと見なされているので、雪奈は平日に休んでもなんとも思われないらしい。作戦を実行しやすくて助かる。


「絶対に転校は止める。とりあえず話を聞いてみよう。」


「うむ。そうだな。いきなりの攻撃は少々まずいかもしれんな。」


「そうね。いきなり殴りこむのは良くないと思うし。」


俺とソレイユと紅葉は、歩きながらこれからの作戦を話し合っていた。

考えもなしに突入するのはマズイ。話し合いなら、ソレイユと紅葉がいるから何とかなるかもしれないが・・・


心配なのは、ソレイユだ。怒りに任せて、呪文詠唱する危険性がある。ていうか、むしろ詠唱する可能性が高い。まぁ・・・ソレイユも子供じゃないし、その辺はわきまえてるよな・・・?


「愚民?どうした?さっきから黙り込んで。」


ソレイユが訝しげに俺の顔を覗いてくる。


「い、いや!なんでもない!なんでもないよ!」


【ソレイユが暴れるのを恐れていた】なんて言えるわけが無い。言ってしまったら俺が呪文詠唱を受けてしまう。


「ん・・・?あれは・・・?」


雪奈の家に向かっている途中、見慣れた人物に遭遇する。


「え〜っと・・・ここは・・・どこぉ・・・?」   


――桜だ。

今頃は学校だってのに、何をしているんだろう?・・・予想はつくけど。


妖しさ全開でさまよっている桜。自転車に乗ってフラフラとしている様子は、挙動不審という言葉がよく似合う。このままでは近隣の住民に通報されかねないので、声をかけることにした。


「お〜い、桜。何してんだ、こんなところで?」


「え・・・?あぁ〜!!り・・・涼太さんに、ソレイユさんに、紅葉さん!・・・実は・・・あの・・・・学校に行けず・・・迷子になってしまったんです・・・」


やっぱり迷子か・・・いつもの事だが、桜の方向音痴は半端じゃない。


「地図はどうしたの?」


紅葉が尋ねた。


「実は・・・気付かないうちに・・・どこかで落としてしまったらしくて・・・」


そう言えばよく地図を落としてしまうと言っていたな。

しかし、このままでは本当に家に帰れなくなる心配がある。


「あの・・・涼太さん達は・・・何をしてるんですか・・・?」


桜が俺達に向かって尋ねた。


「俺達は、雪奈って子の家に向かう途中なんだ。」


俺達の目的を説明する。すると桜が、あれ?というような顔をして、首を傾げた。


「雪奈さん・・・?変わった名前ですね・・・?フルネームは何というんですか?」 


桜が尋ねてくるので、何で知りたいのだろう?と思いつつも、教えてやる。


「フルネーム?【冬美 雪奈】だよ。」 


「【冬美 雪奈】!?もしかして・・・せっちゃん!?」


桜は意外な反応をする。雪奈のこと、知ってるのかな?


「雪奈のこと、知ってるのか?」  


思ったことを尋ねてみる。


「ええ!知ってます!小学校のときの同級生で・・・とっても仲が良くて、親友同士だったんです。家にも行ったことがありますよ。ご両親は出張だったらしくいらっしゃらなかったんですけど・・・でもある日、せっちゃんは急に転校してしまって・・・せっちゃんから聞いた話しだと、これまでも何度か転校を経験してるようで・・・」


急に転校・・・そして何度も転校している・・・間違いない。桜の言っている雪奈と、俺達の友達の雪奈は、同一人物だ。


「で、涼太さん達は、どのようなご用件でせっちゃんのご自宅に?」


「雪奈は、また転校させられようとしているらしい。私達は、それを止めにいく。雪奈は転校したくないって言ってるからな。」


尋ねてきた紅葉に、ソレイユが答えた。


「えっ!?また転校しちゃうんですか・・・やっぱり、今までの転校は、せっちゃんが望んでいたことではないんですね・・・」


「うん。親が決めたそうよ。」


「・・・・・・」


紅葉が答えると、桜は急に黙り込む。何だろう?と思っていると、桜が急に顔を上げ、俺達に言った。


「涼太さん!私も・・・私も、せっちゃんの家に連れてってください!親友として・・・私にもできることがあるはずです!私は、親友が困っているのを見てられません!お願いします!」


桜は俺達に向かい、そう言った。俺とソレイユと紅葉は、互いに顔を合わせ、互いに合図する。


「ああ!もちろんだ!」


「人手は多いほうが良いからな!」


「頼りにしてるよ、桜ちゃん!」

俺達はそう答えた。


「はい!がんばります!微力ながら、私も涼太さんたちのために、そして、せっちゃんのために・・・できることをします!」


桜は決意に満ちた目で、そう言った。


「んじゃ、早く雪奈の家に行こう。あいつを・・・籠から解き放ってやるんだ・・・!」








20分後――


俺達は確かに、地図に従ってここまで来た。

きちんと道順も確認しながら来たので、間違っていないはずである。

しかし、地図に書いてある目的地に着いた俺達の前には――



――大きな城が建っていた。



「あ・・・あれ〜・・・道、間違っちゃったか・・・?お城に着いちゃったぞ・・・?てか、この町にはこんなお城があったのか・・・?」


俺は再び地図を確認する。が、間違いなくここが目的地である。


俺達が地図を見ながらウンウン唸っていると、桜が俺達に向かって言う。


「何言ってるんですか、涼太さん。ここが、せっちゃんのお家ですよ。」


「「え・・・えぇぇぇ〜〜!?」」


信じがたい。城に入るための門は高さだけでも俺達の7倍以上の大きさがあり、庭も半端じゃなく広い。校庭など、ミジンコに見えてしまうほどの広さである。中央には噴水が設備されており、美しい水のオブジェを形成している。敷地内には城本体のほかにも大きな建物がいくつか見える。城本体も、相当巨大で、一流ホテルすらも霞む巨大さである。


「何でこんな城が・・・この町に・・・」


「正確には、ここら一帯は、すべて冬美家の私有地です。ここに入ってくる前、森があったでしょう?そこからもう冬美家の土地ですよ。」


「詳しいな、桜・・・」


俺達が話していると、雪奈がやってきた。


「・・・ようこそ・・・私の家に・・・」


「雪奈・・・さま・・・」


「・・・さま・・・?」


おっと・・・お金持ちっぷりを見たら、おもわず「さま」をつけてしまった。


俺達が挨拶を交わすと、桜が突然、雪奈に飛びついた。


ガバッ―


「せっちゃん〜!!久しぶりだね〜!!」


「・・・!?もしかして・・・さっちゃん・・・?」


「そうだよ〜!!うわ〜ん!懐かしいね〜!!」


「・・・うん・・・!」


桜と雪奈は深く抱き合っている。

懐かしい再会に、二人は今にも泣き出しそうだ。

いつもは無表情の雪奈も、どこか嬉しそうにしていた。

あ・・・ちょっといいかも・・・


「では雪奈、さっそくお前の家に案内しろ。」


ソレイユが切り出す。


「・・・分かった・・・入って・・・」


俺達は巨大な門をくぐり、庭に入る。入ってみると、改めてその大きさが分かる。


「・・・あの建物が、倉庫・・・」


雪奈が指したのは、俺の家の3倍はある、巨大な建物。倉庫とは思えない。・・・思いたくない。


「あれが・・・犬小屋・・・今は使われてないけど・・・」


次に雪奈が指したのは、俺の家の5倍はあるであろう、巨大な住居。・・・犬小屋らしい。ありえない。自分に絶望したくなる。


「ふむ・・・では、犬小屋からいくか。」


ソレイユが突然言い出す。


「え・・・?いくって・・・何を・・・?」


「@△゛дΒθωγ・・・η√ζ!!」


バチバチバチバチィィィィ!!!


ドガァ!!


犬小屋・・・大破!!


突然呪文を詠唱し、ソレイユは巨大な犬小屋を破壊した。


「「「何してんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」


いきなり犬小屋(そこらの家より高級且つ巨大)を破壊したソレイユ。しかし、彼女は動揺の色すら見せない。

「ふむ・・・まぁ、こんなものだろう。」

そして襲いくるガードマン達。

「ま、まずい!こっちに来るぞ!」

相変わらず危険なソレイユの作戦。

「・・・ああ。分かった。お前の考えてることは分かったんだけど・・・コレ・・・ヘタすりゃ・・・いや、ヘタしなくても警察沙汰だよ・・・」


次回 第二十二話「突入」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ