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第十八話 「留学生」

感想、評価などいただけると嬉しいです。

「うぉぉぉぉぉぉ!!課題が終わらねぇぇぇ!!」


時刻は午前2時。真夜中である。


俺は先生から出された課題をすっかり忘れており、取り掛かったのは夜中の十二時過ぎであった。このままでは終わりそうもない。


こりゃ・・・今夜は寝ないでやるしかないな・・・


コト・・・

ふと、目の前に、コーヒーが置かれる。


「はい。夜遅くまでご苦労様。眠気覚ましのコーヒーよ。」


 振り向くと、そこにはお盆を持った紅葉が立っていた。


「ああ。ありがと。」


俺のためにコーヒーを持ってきてくれたのか。なんて優しいのだろうか。

紅葉の優しさに感謝しつつ、コーヒーを一口、口に含む。同時に、程よく苦い味が口全体に広がる。やはりコーヒーの効果は絶大なようで、その苦い味に俺の眠気も覚めていく。


「・・・ってちょっと待て!お前がケシゴムの欠片を投げてきたから課題を出されたんだろうが!少しは手伝ってくれよ!」


「いやよ。元はと言えば、涼太が居眠りしてたのが悪いんだもん。」


紅葉に講義するが、当然のごとく却下される。


「じゃ、私はもう寝るね。課題、頑張ってね!お休み〜!」


「あ!ちょっと・・・」


紅葉は、私の用事は済んだとばかりにさっさと部屋を出て行ってしまう。


くそ〜。少しは手伝ってくれたって・・・ま、居眠りしてた俺も悪いか。

コーヒーを持ってきてくれたのだって、あいつなりの優しさだ。

紅葉は紅葉なりに、悪いことをしたと思っているのだろう。


「んじゃ、さっさと課題を済ませちまうか!」


俺は残りの課題をやるべく、再び机に向き直った。

静まり返った俺の部屋には、シャープペンとノートの擦れあう音だけが響いていた。



同時刻 ソレイユの部屋―


「ソレイユよ、調査は順調か?」


モニター越しに、一人の老人がソレイユに問う。長く立派なひげを生やした老人は、いかにも神話に出てきそうな神様と言った感じの風貌である。


「はい。いたって順調でございます。」


その質問に、ソレイユは敬語で答える。


「なら、良い。明日からは、調査の第二段階に入る。準備は整っておるか。」


「はい。準備万端でございます。いつでも調査可能です。」


「ならば、明日より開始せよ。調査の第二段階「潜入調査」を。」


老人が調査内容を告げる。


「はい。かしこまりました― 『ゼウス様』。」


プツンッー


老人との通信が終わる。


「潜入捜査・・・か・・・」


ソレイユはポツリと一言、独り言のようにつぶやいた。




「終わったぁ〜!!」


 朝の7時。やっと課題を終える。睡眠時間0。我ながらよく頑張ったものだ。

 しかし、鬼山先生め・・・・・・睡眠時間を無くすほど大量の課題を出すとは・・・・・・ヤツは名前の通り鬼だ。


「うぉぉぉ・・・強烈に眠い・・・」


 やり遂げたという達成感と共に、強烈な眠気に襲われる。


「お〜い、愚民。朝だぞ〜。」


 ソレイユがリビングから呼んでいる。


「さて、朝飯朝飯・・・・・・」


 俺は制服に着替えると、リビングへと向かった。




「おはよ、ソレイユ。」


「うむ。おはよう。」


 リビングには既にソレイユが起きていた。テーブルに座り、コーヒーを飲んでいる。俺はソレイユ挨拶を交わし、テーブルに座る。


「涼太、ソレイユ、おはよ〜・・・」


 遅れて、紅葉が眠そうに起きてくる。


「紅葉、おはよ。」


「紅葉か。おはよう。」


紅葉は眠そうに目を擦っていた。俺の知る限り、紅葉は朝に強いはずなんだがな。


「あ〜あ、寝坊しちゃったよ・・・朝ごはん、どうする?」


紅葉が言う。


「その事なら心配無用だ。今朝の食事は私が作った。」


「「ソ、ソレイユが!?」」


紅葉と俺は、たまらず動揺する。

まさかソレイユが作るとは・・・


「お、俺、ちょっとお腹痛いから・・・今日の朝飯はいいや・・・」


「わ、私も・・・ちょっと具合悪くて・・・・・・」


「うむ。そうだろうと思って、食べやすい食事を用意したぞ。遠慮せずに、食え!」


理由をつけて食事を避けようとするが、当然ソレイユには通じない。


「さあ、食べろ!『おかゆ』だ。」


「「う・・・・」」


目の前に、毒々しい紫色をした液状の物体が置かれる。その物体は禍々しい雰囲気と共に、とてつもない異臭を放っており、とてもおかゆには・・・・・いや、食物には見えない。


「え〜っと・・・これは・・・」


「だから、『おかゆ』だ!材料は、「プリン」と「生クリーム」と「オレンジジュース」と・・・」


「うおぉぉぉぉい!!もういい!!もういいから!」


ソレイユが食材を言っていくのを必死で止める。このままでは、さらに食欲がなくなりそうだ。もっとも、この「ソレイユによるとおかゆらしい謎の物体」を見た瞬間に限りなく0まで下がったのだが。


「あと、この『特殊スパイス』を入れた。なんでもうまくなる魔法の調味料だそうだ。」


ソレイユがいかにも妖しい調味料を自慢げに掲げ、俺達に見せてくる。


「ちょっ!何その妖しいスパイス!そんなもん入れんなよ!しかもなんか【Poison】って書いてあるよ!?え?毒?毒入りなの、それ!?」


「心配するな!さっさと食え。@△・^^βΘΞ・・・」


ソレイユが呪文を唱えると、食器が勝手に動き、俺と紅葉の口に毒々しい紫色をした液状の物体が注ぎ込まれる。


「うがが・・・うがぁうごああ」


グチャッ・・・ドロ・・・・ビタビタッ・・・ネチョネチョネチョ・・・・


・・・!!・・・うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

予想以上の食感。意識が飛びそうだ。


「が・・・ぐ・・・」


俺と紅葉は、同時に意識を失った。




「まったく。ひどい目にあったぜ。」


「そうだね・・・」


何とか意識を取り戻した俺達は、やっとの思いで学校へ行き、教室までたどり着いた。


俺達が目を覚ましたとき、ソレイユがゴソゴソと何かやっていたが・・・

まぁ、気にする必要はないだろう。


「うぅ〜・・・まだ気持ち悪い・・・」


トントン・・・


俺が机に突っ伏していると、誰かに肩をたたかれる。


「ん・・・?誰だ・・・?」


そこにいたのは、昨日俺が助けた少女――雪奈だった。


「お前、俺と同じクラスだったのか・・・」


雪奈はコクコクとうなずく。

あまりしゃべらない子だから、気付かなかったのか・・・・・・


「で・・・どうしたんだ?用事か?」


俺が尋ねると、


「クッキー・・・昨日の・・・お礼・・・」


彼女は、クッキーが入った包みを俺に差し出してくる。

別にお礼なんてよかったのに。律儀な子なんだな。


「ありがとな。もらっとくよ。」


俺がそう言うと、少女は少し嬉しそうな表情をして、トテトテと自分の席に戻っていった。


キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン


「ほらお前ら、席に着け!」


チャイムが鳴ると同時に、英子先生が教室に入ってくる。

皆は指示に従い、席に座る


「え〜。今日はまたしても転入生が来ることになった。と言っても、留学生だがな。」


また転入生か。忙しい学校だな、ここも。


「せんせ〜!!その子は、ヤローですか?それとも・・・女の子ですかぁ!?」


颯人が質問する。


「安心しろ。女の子だよ。じゃ、入って!」


先生が転入生に教室へ入るように指示する。



入ってきたのは、可憐な少女。綺麗な目、整った鼻、美しい唇、腰まで伸びている、水色の髪―


そう―俺の家に住んでいる神様だった。



「留学生の、ソレイユ・エスターテだ。これからよろしく頼むぞ!」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」


突如転校してきた我が家の太陽神。何を考えているんだろう?

「ソレイユ・・・頼む、教えてくれ。」

そして明かされる真実。

「ああ。だが、【異常な呪力の原因】が発せられているのは学校だけではない。公園や、商店街、市街地、そして―『四季嶋家の周辺』からもだ。」

地図無しでは学校を歩けない少女。

「すみません・・・あのぉ、迷子になっちゃったもんで・・・」


次回 第十九話「理由」 お楽しみに!

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