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第十二話 「料理」

土曜日―


本日、我が家で壮絶な戦いが始まる―


その名も―



  『第一回 休日を涼太と過ごせるのはだ〜れだ!?3本勝負!』




パチパチパチパチパチパチパチパチ!!


「―って!おい!ちょっと待て!ホントにやるのか!?」


商品が俺なんだけど。


「当たり前じゃない!!このまま引き下がれないわよ!」


「うむ!その通りだ!負けるのは好きではないからな!」


そうですか。俺の意見は無視ですか。


「で、3本勝負のルールは??」


一番気になることを聞いてみる。


「料理対決、カラオケ対決、クイズ対決の3種目の対決をして、2勝した方が勝ちよ!」


「そうか・・・じゃ、さっさと始めようぜ。」


そしてさっさと終わらせてほしい。


「うむ。そうだな。」


「じゃ、始めましょ。まずは、『料理対決』よ!」


「ちょっと待てよ!会場はどうするんだ!?」


会場がなければ始まりようがない。


「あ!そっかぁ・・忘れてたよ〜!!」


「おいおい・・」


これじゃあ勝負が始められないな。


・・・俺としては嬉しいんだけど。


「その点なら心配ない!」


ソレイユが言った。


「心配ないって・・・会場がないんじゃ、始めようがないじゃないか。」


「だから、心配ないと言っておろう。@▲☆?$θж・・・」


ソレイユが呪文を唱える。すると・・・


パァァァァァァァァ・・・


俺の家の構造がみるみる変化し、立派な対決会場となった。


あらゆる食材が揃い、立派なキッチンが2つある。


「どうだ?立派な会場だろう?」


「すごいな・・魔法で出したのか?」


「うむ。この程度の魔法は容易いからな。」


ソレイユがエッヘンと得意そうに胸を張る。


「あわわわわわ・・・・」


横では紅葉が目の前の光景にと驚愕している。


魔法を見るのは初めてだし・・仕方ないか。


「こ・・・こんな事って・・・・」


「ま、驚くのも無理ないけどさ。」


「す・・・すご〜い!!やっぱり魔法って本当にあったんだね〜!」


「・・・へ!?」


「私、信じてたの!魔法は絶対にあるんだって!よかった〜!本物の魔法が見れて!」


「・・・」


・・・ああ、忘れてた。


紅葉はとてつもなくロマンチストだった。


魔法も昔から信じていたし、「運命の赤い糸」も本当にあるんだと信じていた。


変わらないなぁ・・・


「おい愚民。司会兼審査員を頼む。」


「はいはい・・・」


・・・嫌だと言っても聞かないだろうしな。



20分後―



「え〜。では料理対決を始めたいと思います。両者とも、準備は良いですか?」


しぶしぶ司会をやっている俺。


「準備OK!」


「こちらもいつでも行けるぞ!」


ソレイユと紅葉はエプロン姿だ。


なんとも美味しい光景である。


          

            

              「それじゃ・・第一回戦、料理勝負!開始!」



カ〜ン!!


「よ〜し!負けないわよ!」


「フッ・・・練習の成果を見せてくれるわ!」


勝負の始まりを宣言すると同時に、二人は一斉に料理に取りかかる。


「私の料理の腕、なめられちゃ困るわよ!」


紅葉は凄まじい手つきで料理を作り上げていく。


あいつは昔から料理が上手かったからな。


ところで、この間まで料理が作れなかったソレイユは大丈夫だろうか?


火でケガとかしなけりゃ良いけど。


考えている間にも、二人の料理は完成していく。


そして・・・


「「出来た〜!!」」


二人の声が重なった。料理が完成したらしい。


「じゃあ涼太、審査よろしくね。」


「ああ。分かったよ。」


「ふっふっふ・・・私のは自信作だぞ・・・」


ソレイユが不気味に微笑む。


「私のも自信作よ!食べて驚きなさい!」


紅葉も自信満々だ。


「え〜。それじゃあ審査を始めたいと思います。」


「じゃ、私のから食べて!」


紅葉が自分の料理を目の前に置く。


パカッ―


「じゃ〜ん!『舌ビラメのムニエル ハーブソース』と『カテージチーズのオープンサンド』で〜す!」


「おお!美味そうだな!」


綺麗な飾りつけ。香ばしい匂い。


食欲をそそる。


「じゃ、食べるぞ・・・」


パクッ―


「――!!」


う、うまい!


上品で飽きの来ない味わいが、俺の舌を刺激する。


見かけだけでなく、味も完璧だ。


まさにプロ級と言えるだろう。


「うまい!うまいよ、紅葉!」


「そう!?良かったぁ〜!」


お世辞ではない。本当に美味いのだ。


「外国でもずっと、お料理教室に通ってたの。」


「そうなのか・・・大したもんだな・・・」


紅葉が先生になれるんじゃないのか?


「む・・・!私の料理も食べろ!」


横でソレイユが催促してくる。


「ん?ああ。じゃ、料理を出してくれ。」


「ふふふ・・・よかろう!見よ!コレが私の自信作!」


パカッ―


「『おむれつ』だ!!」


プ〜ン・・


「うっ!」


姿を現したのは、緑と茶色が入り混じったような不気味な色を放っている物体。


ニオイが半端じゃない。


「え〜っと・・料理名、もう一度言ってくれるかな、ソレイユ。」


「うむ。『おむれつ』だ。」


え〜っと・・


どこら辺に卵が使われているのかなぁ。


卵を使って、なんでこんな不気味な色とニオイになるのだろう。


「これ・・・何を使ったんだ・・?」


「バカか貴様!『おむれつ』なのだから、卵に決まっているだろう!」


「そ・・・そうだよな。」


少しホッとした。


「後は、隠し味に『イナゴ』と『くさや』と『ふしつぼ』と『サトウキビ』と・・・」


「ちょっとまてぇぇぇ!!そんなモン入れんなぁぁぁ!!」


ありえない食材を次々と並べていくソレイユ。


「ほらほら!早く食べんか!!」


「え・・・・」


コ・・・コレを、食べろとおっしゃるんですか!?


コレは・・・口に入れたら色々なものを失ってしまうような・・・


「む!早くしろ!呪文詠唱するぞ!」


「わ・・分かった・・」


物体Xをスプーンですくい、口元まで持っていく。


ゴクッ・・・


「い・・・いただきます・・・」


スプーンを口に入れる。


パクッ―


「―!!」


「どうだ!?美味いか!?」


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


き・・・きた!!


強烈なマズさ。この世のものとは思いがたい異臭。


なんかジャリジャリした最悪の歯ざわり・・・


飲み込むたびにチクチクと痛い、最悪の喉ごし。


「ぐ・・・お・・・」


「む?どうした、愚民??」


し・・死ぬ・・・


呪文詠唱のほうがまだマシだった。


それから俺は、3時間もの間、悶え続けた。






「結果発表!」


「いえ〜い!」


「ふっふっふ・・・」


何とか回復し、第一回戦の結果発表を行う。


「え〜っと・・第一回戦、料理対決の勝者は・・・」


ドクン・・


ドクン・・


「・・・秋月紅葉さんです!」


紅葉の勝ちを宣言する。


得点にしたら・・・100対0くらいかな。


「やったぁ〜!!料理対決、私の勝ち〜!!」


「バ・・・バカな!」


嬉しそうな紅葉と、ありえないといった表情のソレイユ。


「バカな!じゃねぇ!俺は死にかけたんだぞ!」


勝てるとでも思っていたのかコイツは。


「くっ・・・だが、まだ一回戦だ!第二回戦、第三回戦共に私が勝てば問題はない!!」


「私だって負けないわよ!!次も勝つわ!」


闘志メラメラのソレイユと紅葉。


次はカラオケ勝負か。


一体、どんな勝負になるのだろうか・・・


不安で仕方がない・・・



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