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1章 4話 それでも、


俺たちはひとまずエリオットと合流した。


「お前どこに行ってた?」


「古き友人と秘匿通信を」


感情の揺れのない声。


「友人?」


「ええ、8階層に潜伏している人物です」


8階層。


1から5階層までは空から行くことができる。

だが6階層以上は結界に一つだけ空いた門を通らなければならない。


「何で8階層の人間と繋がってるんだ?」


「正確には、繋がっていた、ですね」


わずかに間があった。


「その人は今、反乱残党を率いています」


セラが小さく息を飲む。


「その反乱って、第二王子の?」


エリオットは静かに頷く。


「ルシウス殿下に最後まで付き従った者の1人です」


その言葉に、ルクスが微かに反応した。


背中が微かに、脈打つ


「マッド・スカラー、一部ではそう呼ばれていました」


「マッド・スカラー?」


「......狂った学者」


セラが小さく呟く。


「何でそんな奴と?」


「あなたの翼とコアを作ったのはその人ですよ」


理解が言葉に追いつかない。


「...は?」


背中が脈打つ。


「...セイカクニハ、チガウ」


ルクスの低い声が割り込む。


「違う?」


反射的に返す。


エリオットの視線がわずかに下に向く


「ええ、魔法構造に関しては、ルシウス殿下が制作していました」


空気が止まる。


「...ただ」

と続ける


「その時、私はその場にいませんでしたので、詳しいことは分かりませんが」


空気が止まる。


そして俺の中で一つ疑問が浮かんだ。

「何でお前がいなかったんだ?隊長兼補佐官なんだろ?」


「いいえ、その時は違います」


「私は20階層に留まり、人工翼の能力が発現するまで第一王子側に着くよう命を受けておりました」


「スパイか?」


「当時は私もそう認識しておりました」


エリオットはわずかに目を伏せる。


「ですが今思えば、殿下は最初からご自身の死を理解されていたのだと考えております」


「王子は死んだのか?」


「殿下だけではありません、零階層で戦った反乱軍は2人を除いて壊滅しました」


「そのうちの1人がマッド・スカラーってことか」


「ええ、そしてもう1人がーーレイ、あなたなのですよ」


世界が遠のく。


「何言ってんだよ」


声が荒くなる。


「俺は一階層出身で、ほとんど覚えてないけど昔はちゃんと親もいて…」


エリオットは静かに言葉を重ねる。


「その2人も反乱軍でした」


目の前が暗くなる。


その中で不思議と点が線で繋がる。


「だから俺は、遺志なのか」


それは問いというより確認だった。


エリオットは即答しない。


わずかな沈黙の後


「……はい」


短い肯定。


「あなたは、偶然生き延びたのではない」


「守られ、残され、託された存在です」


風が止まる。


セラの指先が、そっとレイの袖を握る。


「レイ……」


俯いたまま言う。


「俺は」


息を吸って前を見る。


「知りたい。」


セラを奪った奴らを。


この世界を牛耳る奴らを。


反乱軍を。


俺自身を。


そしてーーー


「青い空を」


自分の口から出た言葉に、わずかに驚く。


セラがかすかに笑う。


一瞬だけ、呼吸が止まる。


「そのためには力が必要です」


淡々としている。


否定でも、命令でもない。


事実だ。


「ああ、わかってる」


あの時、守れなかった


もう2度と失いたくない。


「どうしたら強くなれる?」


「8階層へ向かいましょう」


「空いに行くんだな?マッド・スカラーに」


「まずはその翼について知ることです」


「だが8階層まではどうやって行くんだ?結界は破れないし門には羽監がいるだろ?」


「ご安心ください」


「7層までは反乱時殿下の作られた結界の穴がありますので」


「何だよそれ......」


セラが小さく目を見開く。


「ルシウス王子、凄すぎ……」


エリオットの銀の瞳が、わずかに細まる。


「ええ」


静かな声。


「偉大なお方でした」


誇りと、わずかな後悔が混ざる。


風が吹く。


灰が舞い上がる。


俺は空を見上げる。


結界の向こう。


まだ見たことのない、上の世界。


「……行くぞ」


物語が、さらに上へ動き出す。




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