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1章 1話 遺志の目覚め

「君は………を照らす………の光、レイだ」

暖かい光に包まれていた。

優しい声。

懐かしい響き。


「…レイ………オキロ………」


目を開ける。

目の前に映る灰色の壁。

冷たい現実。


「...わかったから静かにしてくれ」


背中がわずかに脈打つ。

水晶のようなコア。

その奥で、揺れる羽の影。


「オマエハ、イツモイツモ……」


「外では静かにしてろよ」


「ワカッテイル」


味のしないパンをかじる。


マスクを付け、フードをかぶる。


コアを隠し、外に出た。


灰が舞っている。

この灰のせいで、下層に光は届かない。


地面が震える。


《空食い》

この国の心臓。


今日も、誰かを燃やしている。


道端に倒れた老人。


黒く変色した翼が、崩れ、灰になる


「ミルナ」


「ああ」


目を逸らす。


慣れている。


慣れてしまった。


「あれはもうダメだな」

「もう黒化が体まで侵食してやがる」


通りすがりに街の人間の話が耳に入る。


俺はフードを深く被って仕事場へ向かった。


仕事場。

空食いの燃料を運ぶための輸送場。


「止まるな!」

上から声が落ちる。

マスクをつけた二人組。

胸には11の紋章。

少し赤みがかった白い翼。

羽監局。


「働け。零階層に落とされたくなきゃな」


笑い声。


「まあ一階層も変わらないか」

「ゴミども」


隣の男がうつむく。

誰も視線を上げない。


笑い声だけが響く。


思わず俺は

「あんたらも、同じだろ」


空気が凍る


「なんだと?」


「上からしたら1も11も変わんねえよ」


閃光。


視界が白く弾ける。


腹の奥が焼ける。


空気が抜ける。


地面が消えた。


次の瞬間、背中から壁に叩きつけられる。


肺が空気を拒む。


血の味。


それでも笑う。


「そこまでするなら落とせよ...」


羽監は鼻で笑い、去って行く


「レイセイニナレ」


「うるさい」


家への帰路。


検査ゲート。


この場に不釣り合いな汚れの無い白。


翼の有無を判別する。


俺の番。


俺はいつもの通りゲートをくぐる。


その時だった。


警告音。


赤い光。


「異常個体発見」


自分ではない。


他のゲートを見回す。


隣のゲート。

フードを被った少女の下に赤い魔法陣が展開されていた。


翼がない。


「ハヤクタチサレ」

ルクスが言う。


立ち去ろうとした。


その時。


風が吹く。

長い髪。

大きな瞳。


記憶の中の光と重なる。


気づけば、彼女の手を取り、路地へと走っていた。


裏の路地へと入って足を止めた。

周りでは羽監が走り回っている音が聞こえる。


彼女のフードを取り顔を見る。


似ているが...違う。


羽監の足音が近づき、路地を抜ける。


灰色の地面が途切れ、白い鉄柵が見える。


下に広がる。


黒い羽の山。


崩れた翼。


積もる灰。


零階層。


落ちたものは、帰れない。


彼女が呟く。


「懐かしい...」


心音が強くなる。


「名前は?」


「……わからない」

彼女の視線が揺れる。


「わからない?」


「でも...一つ覚えてる」


「何を」


「1階層で待ってる人がいる」


その時、空気が変わる。


「マズイゾ、レイ」


閃光。


咄嗟に彼女の手を離した。


体の中を電撃が走る。


神経が焼ける。


意識が薄れる。


魔法。


俺は体が痺れ力が抜ける。

羽監に首を掴まれ、柵の奥に運ばれる。

下は遠く暗い。


隣では彼女がもう1人の羽監に同じように掴まれ必死に抵抗していた。


「面倒事増やしやがって」

羽監はそう言って手を離した。


落ちていく。


意識が遠のいていく。


ゆっくり世界が白くなっていく。


「ねぇレイ、空って青いんだって」


長く白い髪。

大きな翼。

無邪気な笑顔。


「いつかみてみたいな」


この笑顔を守りたかった。


一緒に居たかった。


ーーー誰かの声が聞こえる。


「レイ...起きて...レイ!」


彼女が手を握り締め何かを祈っていた。


辺り一面黒い羽。

零階層。


ーーやっときてくれた

ーーひかり

ーー使って


声?


羽がざわめく


彼女の周りの羽が浮く。


「お願い力を貸して」


「人工翼生成システム起動」

ルクス?


羽が背中に集まり翼が作られる


黒い羽が白い翼に変わっていく


ルクスが翼を広げる。


「なんだよ…あれあのサイズ」

「早く殺さなければ」


1人の羽監が飛んでくる。


「待てあれはもう俺たちじゃ止められない!」

もう1人の羽監は上で叫んでいる


辺りがよく見える


羽監が魔法陣を広げ、高速で向かってくる。


ルクスが羽を大きく羽ばたかせ、羽監へと向かって行く。


「レイ、恐れずに翼に身を任せて」


翼に力を入れる。

重力に抗って空へ飛ぶ。


俺は手を固く握り、展開していた魔法陣ごと羽監を殴った。

そこからは、もうよく覚えていない。


うっすら覚えているのは、いつもより流暢に話すルクスと、上層に逃げるもうひとりの羽監、倒れた俺に声をかけ続ける彼女の姿だけだった。


目が覚めると俺はテントの中にいた。

目の前には王族のような服装の青年が立っていた。


「誰だ?」


胸には20の文字

見たこともないほどの大きな金色の翼

圧倒的なオーラを放っていた。


「お目覚めになられましたか、レイ様」


なぜ俺の名を知っているのか、困惑しているところに彼がもう一言放つ。


「私はこの国の第二王子、ルシウス・アウレリウス・アルティス殿下の直轄部隊隊長兼第一補佐官」

「エリオット・グラティスと申します」 

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