第9話:迫りくる権力の手
新しい仲間の名前は「ゴウ」に決まった。
豪快のゴウ、強剛のゴウだ。
ゴウは非常に優秀な番人だった。
森に近づく不審な気配をいち早く察知し、威嚇の咆哮で追い払う。
時には森で猪などを狩ってきて、食料の足しにしてくれる。
フィオともすっかり打ち解け、彼女が畑仕事をしている間、その巨体で日陰を作ってあげたりしている。微笑ましい。
そんな平和な日々を破ったのは、またしてもベルンだった。
だが、今回の彼はいつものような笑顔ではない。
馬車を飛ばし、息を切らせて駆け込んできた。
「大変です! 源泉様、フィオさ……ひぃっ!?」
ベルンは言葉の途中で悲鳴を上げた。
入り口で仁王立ちするゴウと目が合ったからだ。
ゴウが「グルルッ」と警戒の声を上げると、ベルンは腰を抜かしそうになった。
「ま、魔物!? なぜここに!?」
「あ、ベルンさん! 大丈夫です、この子はゴウ。新しい仲間なんです!」
フィオが慌てて仲裁に入り、ゴウをなだめる。
ベルンは目を白黒させていたが、ゴウがフィオの頭を優しく撫でるのを見て、ようやく警戒を解いた。
だが、すぐに表情を引き締める。今は驚いている場合ではないと思い出したようだ。
「……驚きましたが、それどころではありませんでした」
フィオが駆け寄る。
ベルンは水を飲むのも忘れ、深刻な表情で告げた。
「領主様が……この泉のことを嗅ぎつけました」
領主。この辺境の地を治める貴族だ。
ベルンの話によると、名前はバロン・グリード。
名前からして強欲そうだが、実際、金と権力に目がない男らしい。
ただ、最近は特になりふり構わず金を集めているようで、街では「何かに焦っているのではないか」という噂もあるらしい。
街で流行している「シュワシュワの水」に目をつけ、その出処を探らせていたのだ。
「領主様は、『領内の資源は全て領主のもの』という理屈で、ここを接収するつもりです」
「接収……つまり、ここを奪うということですか?」
フィオの声が震える。
ベルンは重く頷いた。
「近々、調査団という名目の私兵団が送り込まれるでしょう。彼らは荒っぽい連中です。抵抗すれば、反逆罪に問われる可能性も……」
反逆罪。重い言葉だ。
だが、ここを明け渡せば、フィオはどうなる? ゴウは?
そして俺は、強欲な領主の金儲けの道具として、ただお湯を搾り取られるだけの存在になるのか?
(……ふざけるな)
俺の湯温が静かに上昇する。
ここは俺の場所だ。
フィオとゴウ、そして俺たちが作り上げた楽園だ。
誰にも渡さない。
ゴウも空気を察したのか、立ち上がり、低い唸り声を上げた。
フィオは不安げに俺を見るが、俺の決意を感じ取ったのか、強く頷いた。
「わかりました。教えてくださってありがとうございます、ベルンさん」
「私は……一商人として、これ以上は関われません。ですが、心から応援しています」
ベルンは悔しそうに頭を下げ、去っていった。
彼を巻き込むわけにはいかない。これは俺たちの戦いだ。
俺はウィンドウを開く。
貯まったポイントは500pt。
これで迎撃準備を整える。
相手が権力だろうが軍隊だろうが、温泉の恐ろしさを思い知らせてやる。
【獲得可能スキル一覧】
・泥沼化(範囲)(100pt)
・硫黄ガス(毒・麻痺)(200pt)
・間欠泉(大)(300pt)
・ゴーレム作成(土・岩)(400pt)
(ゴーレム……これだ!)
俺は迷わず400ptを消費し、「ゴーレム作成」を選択した。
温泉の守護神を作り出すのだ。




