第18話:雪解けと和解の宴
黄金色の輝きが収まると、アリスの頬には赤みが戻っていた。
閉ざされていた瞼が、ゆっくりと開く。
透き通るような青い瞳が、心配そうに覗き込む父親を捉えた。
「……パパ?」
「アリス! わかるか!?」
「うん……なんだか、体がポカポカするの。痛くないよ」
その言葉を聞いた瞬間、グリードは娘を抱きしめ、子供のように泣き崩れた。
雪の中に、男の嗚咽だけが響く。
フィオも、ゴウも、そして俺も、静かにその光景を見守っていた。
しばらくして、落ち着きを取り戻したグリードは、俺の前に進み出た。
そして、深々と頭を下げた。
「源泉様……いや、この地の守り神よ。私は愚かだった。こんな奇跡のような場所を、私利私欲のために奪おうとしていたとは」
「領主様……」
「詫びて済むことではないが、謝らせてくれ。本当にすまなかった。そして、娘を救ってくれて、本当にありがとう」
俺はポコッと一つ、泡を弾けさせた。
「気にするな」という意味だ。
過去は変えられないが、未来は変えられる。
彼が改心してくれたなら、それでいい。
「約束しよう。私は領主としての権限で、この地を『聖域』として認定する。税の免除はもちろん、街道の整備や、必要な物資の援助も惜しまない」
「ありがとうございます!」
フィオが満面の笑みで礼を言う。
これで、俺たちの温泉郷は公的に認められた存在になったのだ。
その夜。
アリスの回復と、和解を祝って、ささやかな宴が開かれた。
メニューは、フィオ特製の野菜料理と、俺の温泉で作った料理だ。
「わぁ……ぷるぷるしてる!」
アリスが目を輝かせているのは、特製「温泉卵プリン」だ。
卵と牛乳(ベルンが持ってきた)、そして砂糖を混ぜて蒸し上げた一品。
一口食べると、彼女はとろけるような笑顔を見せた。
「おいしい! 甘くて、あったかい味がする!」
「よかったですね、アリス様」
フィオも嬉しそうだ。
グリードも、娘が食事をする姿を見て、また目頭を熱くしている。
そして、手には「シュワシュワの水」が入ったコップを持っている。
「うむ……この刺激、癖になるな。これが王都で流行るのもわかる」
彼は炭酸泉を飲み干し、満足げに息を吐いた。
「これからは、この素晴らしい恵みを、多くの人々に届ける手伝いをさせてくれ。もちろん、源泉様の意向を最優先にしてな」
外は雪が降り続いているが、ログハウスの中は温かい。
暖炉の火と、みんなの笑顔。
俺は温泉として、心まで温まるような幸せを感じていた。
『入浴者(領主親子)が心からの感謝を捧げました』
『満足度ポイントを獲得:1000pt』
桁違いのポイントが入った。
だが、今の俺にとって一番の報酬は、アリスの元気な笑顔だった。




