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異世界の名湯は、喋らない。 〜効能チートでエルフと作る、世界最高の癒やしリゾート〜  作者: 悠々


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15/19

第15話:満員御礼と足湯の平和

 サウナ効果もあり、俺たちの温泉郷はかつてない賑わいを見せていた。

 ただし、客層は少し偏っている。

 今のところ、人間の客はたまに来る冒険者や商人だけで、メインの客層は「森の動物たち」だ。


 特に人気なのが、最近住み着いた「カピバラモドキ」の群れだ。

 彼らは一日中、湯船に浸かってボーッとしている。

 そこへ、ゴウの仲間である猿たちがやってくると、問題が起きる。


「ウキャッ!ウキャキャ!」(どけよ、俺たちの場所だぞ!)

「キュルルッ!」(やだね、先に入ってたのは僕たちだ!)


 湯船のベストポジションを巡って、猿とカピバラが一触即発の睨み合いを始めたのだ。

 露天風呂は広いとはいえ、源泉近くの温かい場所は限られている。


「こらこら、喧嘩はダメよ! 順番に入りなさい!」


 フィオが仲裁に入るが、言葉が通じない動物たちは興奮して聞く耳を持たない。

 ゴウがボス猿として「ウオォン!」と一喝するが、カピバラたちはマイペースに無視を決め込んでいる。

 このままでは、せっかくの癒やしの空間が修羅場になってしまう。


(仕方ない、拡張するか)


 俺はポイントを確認する。

 最近の盛況ぶりで、ポイントは潤沢にある。

 俺は以前から考えていた「あれ」を実行することにした。


『スキル発動:流路操作』

『スキル発動:温度調節(浅瀬)』


 俺は露天風呂から溢れ出るお湯のルートを変え、少し下流の平らな岩場へと導いた。

 そして、ガンテツが余った木材で作ってくれたベンチを並べる。

 深さは足首ほど。底には丸い小石を敷き詰め、歩くと足ツボ効果もある。

 即席「足湯コーナー」の完成だ。


 俺は足湯の方へ、甘い香りの入浴剤成分を流してみた。


「クンクン……?」


 鼻の利く動物たちが反応する。

 猿たちが興味津々で足湯の方へ移動し、恐る恐る足を浸ける。


「ウキッ! ウキキッ!」(おっ、ここも温かいぞ! しかも果物みたいな匂いがする!)


 猿たちは大喜びでベンチに座り、足をバタバタさせて遊び始めた。

 カピバラたちは相変わらず露天風呂でボーッとしているが、猿がいなくなったので広々と使える。


「なるほど……足だけ温めるお風呂ですか! これなら服を着たままでも入れますね!」


 フィオも感心した様子だ。

 人間にとっても、全身入浴はハードルが高い場合がある。

 足湯なら、旅の途中で靴を脱ぐだけで疲れが取れるし、会話も弾む。


 こうして、猿とカピバラの抗争は、足湯という平和的解決策によって幕を閉じた。

 夕暮れ時。

 露天風呂にはカピバラ、足湯には猿とフィオたちが並んで座り、みんなで夕日を眺める。

 まさに「平和」そのものの光景だった。

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