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異世界の名湯は、喋らない。 〜効能チートでエルフと作る、世界最高の癒やしリゾート〜  作者: 悠々


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第12話:輝く客と美容コース

 石鹸の量産が軌道に乗ってきたある日の午後。

 フィオが完成した石鹸を葉っぱで包んでいると、視線を感じたようだ。


「あら? あなたは……」


 茂みの陰から、ひょっこりと顔を出したのは、不思議な生き物だった。

 リスのような、ウサギのような、ふわふわとした毛並み。

 そして最大の特徴は、額に埋め込まれた緑色の宝石だ。


(カーバンクルか!?)


 俺の前世知識が告げている。

 幻獣カーバンクル。額の宝石に魔力を宿し、幸運を呼ぶと言われるレアモンスターだ。

 まさかこんなところでお目にかかれるとは。


 カーバンクルは、警戒する様子もなくフィオに近づくと、彼女の頬をじっと見つめた。

 そして「きゅぅ〜」と羨ましそうな声を上げる。

 自分の毛並みを前足で整えながら、チラチラとフィオの肌と、手元の石鹸を見比べている。


「もしかして……あなたも綺麗になりたいの?」


 フィオが尋ねると、カーバンクルは激しく首を縦に振った。

 どうやら、この森の生き物たちの間でも、ここの美容効果は噂になっているらしい。

 美意識の高い幻獣だ。


「ふふ、わかりました。源泉様、お客様ですよ!」


 フィオが俺に合図を送る。

 よし、任せろ。

 幻獣相手なら、とびきりの「美容フルコース」でおもてなしだ。


 まずは入浴だ。

 俺は湯温を少しぬるめに設定し、成分を「微細気泡マイクロバブル」モードに切り替える。

 毛穴の奥の汚れまで落とす、最新鋭の洗浄機能だ。


 カーバンクルはチャポンとお湯に入ると、気持ちよさそうに目を細めた。

 シュワシュワと弾ける気泡が、毛並みの間に入り込んでいく。


 次に、新商品の「温泉石鹸」だ。

 フィオが石鹸を泡立て、もこもこの泡でカーバンクルを包み込む。

 優しくマッサージするように洗うと、カーバンクルは「きゅふぅ〜」ととろけたような声を上げた。


 そして仕上げは、俺特製の「トリートメント湯」だ。

 保湿成分と、毛艶を良くする成分を配合したお湯で、しっかりとリンスする。


 風呂上がり。

 タオルで拭かれ、ドライヤー代わりの温風(俺の蒸気コントロール)で乾かされたカーバンクルは……。


「わぁ……! ピカピカのフワフワです!」


 フィオが歓声を上げるのも無理はない。

 薄汚れていた毛並みは雪のように白く輝き、額の宝石も一層強い光を放っている。

 歩くたびにキラキラと粒子が舞うようだ。


 カーバンクルは水面に映る自分の姿を見て、満足げにポーズを取った。

 そして、フィオの足元に何かをポロリと落とした。


「これは……種?」


 それは、宝石のように透き通った青い種だった。

 カーバンクルは「きゅっ!」と一鳴きすると、光の尾を引いて森の奥へと帰っていった。


「源泉様、不思議な種をいただきました。植えてみましょうか」


 フィオがその種を、湯船の近くの特等席に植える。

 俺の「成長促進」成分を含んだ土壌だ。

 翌朝には、見たこともない美しい青い花が咲き、夜になると淡く発光して、露天風呂を幻想的に彩ってくれるようになった。


 どうやら俺たちは、幻獣のお墨付きをもらえたようだ。

 この噂が広まれば、もっとすごい客が来るかもしれない。

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