第11話:石鹸と美肌の秘密
領主の私兵団を撃退してから、数日が経った。
森には再び平穏が戻っていた。
あの「温泉ゴーレム」は、普段は湯船の近くで岩のオブジェとして鎮座している。
一見するとただの岩山だが、いざという時は頼れる守護神だ。
さて、平和になったところで、俺たちは次のステップに進むことにした。
「温泉郷の充実」だ。
炭酸泉(シュワシュワの水)は順調に売れているが、商品が一つだけというのは心許ない。
ベルンが次に来るまでに、新しい目玉商品を作っておきたい。
(温泉といえば……やっぱりこれだよな)
俺はウィンドウを開き、成分調整の項目をチェックする。
俺のお湯は基本的に弱アルカリ性だ。これは肌の角質を落とし、スベスベにする効果がある。
これをさらに活用できないか。
俺はフィオに意識を向けた。
彼女は今、畑で新しい作物を育てている。
オリーブのような、油分を多く含んだ実をつける木だ。
(フィオ、その実の油と、俺のお湯を混ぜて……)
言葉は通じないが、俺が「成分調整:強アルカリ(抽出用)」のお湯を小さな窪みに溜めると、フィオは何かを察してくれたようだ。
「源泉様、このお湯で何かするんですね?」
彼女は収穫した木の実を絞り、黄金色のオイルを抽出した。
そして、俺が用意した特製アルカリ泉と混ぜ合わせる。
本来、石鹸作りには苛性ソーダなどの劇薬が必要だが、そこは異世界ファンタジー&俺の成分調整チートだ。
俺の成分が触媒となり、油と反応して白濁していく。
さらに、香り付けだ。
フィオが育てたハーブや、柑橘系の果汁を数滴垂らす。
これを型に流し込み、乾燥させれば……。
「できました! 白くて、いい香りの塊です!」
数日後。
完成したのは、純白の「温泉石鹸」だ。
市販の石鹸のような刺激臭はなく、ハーブの優しい香りが漂う。
「これが……石鹸?」
フィオは不思議そうに石鹸を手に取った。
この世界にも石鹸はあるが、もっと茶色くて臭い、質の悪いものが一般的らしい。
こんなに白くて滑らかなものは見たことがないだろう。
「使ってみてもいいですか?」
フィオは早速、お湯で石鹸を泡立てた。
きめ細かい、クリーミーな泡が立ち上る。
彼女はその泡で顔を洗い、腕を洗う。
「わぁ……! すごいです! 肌がキュッとして、でもしっとりします!」
洗い流した後、彼女の肌は一段と輝きを増していた。
元々エルフで美肌だが、さらに透明感が出ている。
まさに「美肌の湯」の結晶だ。
『入浴者(居住者)が美しさに目覚めました』
『満足度ポイントを獲得:120pt』
女性にとって美容は永遠のテーマだ。
これは炭酸泉以上に、女性客(特に貴族)にウケるかもしれない。
「源泉様、これすごいです! ベルンさんもきっと驚きますよ!」
フィオは目を輝かせている。
俺たちは量産体制に入ることにした。
フィオの「農業スキル」で原料の確保は完璧。
俺の「成分調整」で品質も安定。
ゴウも手先が器用で、型枠作りや梱包を手伝ってくれる(意外な才能だ)。
こうして、俺たちの温泉郷に、新たな名産品「美肌石鹸」が誕生したのだった。




