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「栗パン売ってこいや‼」

作者: 藤乃花
掲載日:2025/10/19

卵パン買ってこいや‼

弱木よわきには苦手な先輩がいる。


先輩の名は、熊五里くまごりと云い、熊とゴリラを千倍にしたような質を持っている。


名の通り二人の関係は下僕とラスボスのポジションで、弱木よわきはいつも熊五里くまごりから付きまとわれているのだ。


登校して弱木よわきが先ず気を付けているエリアは、熊五里くまごりが所属している調理部の前だ。


調理部は毎回朝練の為部員は部室に集まるので、当然熊五里くまごりも混ざっている。


(猛獣先輩の臭いが漂ってる。

見付からないように……姿勢を低くして……)


下駄箱の真ん前が調理部の部室なので、窓にはみ出さないよう弱木よわきは中腰になり、調理部部室を通過しようとする。


弱木よわきが心の中で『猛獣先輩』と呼ぶ熊五里くまごりの体臭は獣の質が詰まっているので、何処にいてもまるわかりだ。


〈ガラアッ‼〉


「くぉらあっ‼

ヨワキ‼

栗パン売ってこいや‼」


調理部部室の窓が突然開いて、そこから熊五里くまごりが、顔面を出して叫んだ。


猛獣の雄叫びだ。


「!」


弱木よわきの全身がひきつり、一歩も動けなくなる。


「クマゴリ、そんな言い方じゃよっ君ビビるって!」


「よっ君ごめんね。

クマゴリ、ツンデレだから素直になれないのよ!」


「え?」


他の部員達が弱木よわきに優しく語りかける。


「余計な事云うなよ、ヨワキ、ごらああ‼

ヨワキ、テメ、みてんじゃねえよ‼

ちげえよ、明日……」


熊五里くまごりはモゴモゴして、弱木よわきをチラチラ見ている。


「明日、よっ君、誕生日っしょ。

だからね、栗パン売ったお金で、プレゼント買うんだとさ」


「余計なこと云うな……よ」


「……」


熊五里くまごりは乙女の顔で、暫く弱木よわきを見つめていた。


「今から栗パン作るからよ、全部……売って……こいや」


〈ピシャリ〉


窓が閉められ、弱木よわきは少しの間その場にいた。



弱木よわきくんは男子、熊五里くまごりさんは女子です

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