表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/9

8 助けなきゃ

裏山へ行こうと窓から外へ出ようとしたら、外に人間がいた。なんか騒いでる。何を言ってるんだろ?


「捕まえたぞー!」

「よっしゃ!」

「ホントに魔物なのか?」

「ああ、俺は魔力で分かるんだ。人間かそうじゃないか」


捕まえた?魔物?

ぼくは仲間が捕まったのかと思って、びっくりして大急ぎで窓の外へ出た。


「おやおや、大変ですね」


キツネくんが全然大変じゃなさそうに言う。にこにこしてるし。

捕まった魔物を助けなきゃ!

急いで声のする方へ走ると、


「タヌキくん⁈」


人間の姿のタヌキくんが、手をしばられて転がっている!

そのまわりに人間がいて、タヌキくんを見下ろしてる。

ぼくは急いでタヌキくんの元へ走って行った。


「タヌキくんを放せ!」

「ん?なんだこのガキ」

「…スライム?」


タヌキくんがぼくに気づいた。でも、なんだか苦しそう。手が痛いのかな。しばるなんてひどいよ。

やっとタヌキくんの所についた。しばってるヒモをほどかなきゃ!


「…触るな!向こうへ行ってろ!」


ヒモを触ると、イヤな感じがしてびっくりして放した。

イヤな感じ… このヒモがタヌキくんを苦しめてるの?


「さっさと向こうへ行け!」


タヌキくんは苦しそうにそう言ってる。

けど、そんな事できないよ。

タヌキくんを助けなきゃ!


「おい、ガキやめろ」


タヌキくんに意地悪をした人間に持ち上げられた。


「放せ!はーなーせー!」


ぼくは暴れた。ものすごく暴れたのに、人間は離してくれない。


「何だコイツ」

「何でガキがここの制服着てんの」

「飛び級?」

「飛びすぎだろ」


ポン!

音がして、タヌキくんがタヌキの姿に戻った。でもしばられたヒモはそのままだ。


「ほらな!やっぱ魔物だっただろ!」

「へえ、この魔道具すごいな。化け狸だったのか」

「ああ、魔力を吸収するんだよ」

「はーなーせーーー!」


人間達は全然ぼくの言うことを聞いてくれない。

タヌキくんが苦しんでるのに!


「おい、そのガキも仲間なんじゃね?さっきコイツ、スライムって言ってなかったか?」

「おい、お前スライムか?」


タヌキくんがこっちを見て首を振っている。苦しそう。早く、早く助けなきゃ!


「ぼくはスライムだ!人間なんか食べちゃうぞ!」

「げっ」


人間がやっとぼくを放した。ぼくは地面に落ちてぶつかってしまった。痛い。けど、今はタヌキくんを助けるんだ…


「ガキも縛れ!もう一本あっただろ」

「お、おう」

「やめろ!!」


タヌキくんが大きな声で言った。けど人間は聞かずにヒモを取り出した。


「そいつは子供だ!やめろ…!」

「今ほどくから…」


ぼくはもう一度タヌキの手に巻かれたヒモを触ってほどこうとしたけど、すごいイヤな感じ…ぞわぞわする。

力も抜けちゃって、ほどけない。


「ほどかなきゃ、タヌキくんが食べられちゃう…!」


なんでできないの?やだよ。タヌキくんが、食べられちゃうよ。絶対にそんなのイヤなのに…!

ぼくががんばっていたら、急に手をつかまれた。人間だ。

タヌキくんをいじめるイヤな人間がぼくをつかんで、両腕を後ろに引っ張った。


「痛っ!」

「おい…キツネ見てんだろ!何とかしろ!!」


タヌキくんが叫んだ。そうだ、キツネくんはどこへ行ったの?

その時強い風がビューっと吹いた。

ぼくをつかんでいた人間と、一緒にいた人間がころころと転がる。


「…おやまあ、その位自分で何とかしたらどうですか?」

「キツネくん!」


キツネくんが空に浮いている。


「…それが出来ねえから言ってるんだろ」

「キツネくん!タヌキくん苦しそう。ヒモを取ってあげて!」


キツネくんはにっこり笑った。


「そうですねえ… では、私のお願いをタヌキくんが聞いてくれたら、取ってあげましょう」

「…クソキツネめ」


良かった!

お願い聞くだけで助けてくれるのに、タヌキくんはなんだかイヤそう。


「やめますか?」


キツネくんは逆になんだか嬉しそう。


「…一度だけだぞ」

「はい?」

「言う事聞くのは一度だけって言ってるんだ!」

「はい。もちろんです」


キツネくんは、転がった人間達の方へ手を向けると魔法を使った。何の魔法かは分かんないや。

人間達はなんだかぼんやりしてる?と思ったら、歩いて行ってしまった。

人間達がいなくなってから、キツネくんはタヌキくんの手をしばっているヒモを触った。

イヤな感じしないのかな?

キツネくんの顔を見てみたけど、にこにこしてる。

もう一度ヒモを見たら、ヒモが急にはじけた?

ボンって音がして、粉々になったんだ。

魔法で壊したのかな?


「魔力を吸収する物は、吸収し切れない程の魔力を流すといいんですよ」

「そうなの?」

「普通はそんな事出来ねえよ」

「情け無いですね」

「…悪かったな」

「タヌキくんタヌキくん!大丈夫?痛い?」


タヌキくんはまだ苦しそうだったけど、体を起こした。


「大丈夫だ。ちょっと魔力がたりねーだけだ」

「魔力」


そうだ、魔法りんご!

これを食べれば魔力が増え… あれ?ぼくりんご持ってない。落としちゃった?

キョロキョロと辺りを見てみた。


「これを探してますか?」


キツネくんが拾ってくれたみたいで、ぼくに渡してくれた。


「ありがとう!タヌキくん、これ食べて!魔法りんごだよ」

「おう…ありがとな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ