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7 キツネくんもお兄ちゃん

「私達は兄弟と設定しましょうか」

「兄弟。キツネくんもお兄ちゃん?」

「はい。…も?と言う事は」

「タヌキくんもお兄ちゃん」

「そうですか」


今日はキツネくんがお兄ちゃん。なんだか不思議。

タヌキくんも人間に変身したら、タヌキくんもお兄ちゃんになるから、3人兄弟かな?


「じゃあ、タヌキくんのお兄ちゃんがキツネくん?」

「そうなりますね」


それなら、もしぼく達がずーっと人間だったら、一緒のお家で暮らすのかな?

楽しそう。


「ぼく、ずっと人間のままでもいいよ」

「おやおや、ふふふ」

「3人で一緒に人間の住むお家で暮らすよ」

「それは楽しそうですね」


キツネくんは楽しそうに笑った。

学校の近くまで来た。ここは裏側だから、表から入るんだよね。


「そこの窓から入りましょうか」

「えっ、窓から?窓から入る人間はいないよ」

「たまにいます」

「そうなんだ」

「はぐれないように、手を繋ぎましょう」


キツネくんが手を出したので、それを掴んだ。キツネくんの手はちょっと冷たいな。


「可愛い手ですね」

「可愛い手?手に可愛いって言うの?」


ぼくは繋いでない方の手を見た。指が5本ある。人間の手だ。指を動かしてみた。

…可愛い⁇


「さあ、窓の中に行きますよ」


ぼく達はふわっと浮いて、空いている窓にすいこまれるみたいに入って行った。そのまま窓の中の床に降りる。

誰もいなかった。


「今は授業中なので、気配を消して行きましょう。足音も消しますので、普通に歩いても大丈夫ですよ」

「え?」


気配はよくわかんなくけど、足音は分かる。

ちょっと歩いてみた。


「音がしない」


ちょっと走ってみた。跳ねてみた。

人間の姿だとあまり高く跳ねられないや。


「なんで音がしないの?」

「風で遮断しています」

「風で…?」


よくわかんないけど、風魔法って事は分かった。


「すごい。ぼくにも出来る?」

「今は無理ですね。風魔法を吸収すれば多少は使えるようになるかもしれません」

「やった!」

「毎日少しずつ吸収してみましょうね」

「うん!…少しずつじゃないとダメ?」


たくさん吸収した方が、すぐに魔法が使えるようになるんじゃないのかな。


「体に馴染ませないといけません。少しずつ確実に、ですよ」

「うーん?」

「ほら、行きますよ」

「うん」


またキツネくんと手を繋いで歩き出した。

授業をやってる部屋の横へ来ると、キツネくんが止まって窓から中を覗いた。


「この教室内なら大丈夫ですね」


そう言うと、キツネくんは部屋の中に魔力を送った。

魔法をかけたのかな?


「入りましょう」

「いいの?」


カラカラと音を立てながらドアを横にずらして、中に入ってしまった。ぼくと手を繋いでいるので、ぼくも入ってしまった。

キツネくんはぼくを持ち上げて、空いている椅子に座りぼくをキツネくんの膝に置いた。

びっくり。

目立ってるはずなのに、誰もぼく達を見ない。


「誰もこっちを見ないね?」

「暗示を掛けましたので」

「あんじ?」

「私達が気にならない魔法を掛けました」

「そんな事もできるんだ」


やっぱり魔法ってすごい。

ぼくは隣の人間をじーっと見てみたけど、全然こっちを見ない。


「授業は良いんですか?」

「そうだった」


みんなが向いてる方向に1人立って話しをしている人間がいる。それが先生だ。先生の話を聞こう。

……………うーん?


「魔法の話しをしてないよ?」


振り返ってキツネくんを見た。


「魔法史の授業でしたね」

「魔法の」

「魔法の歴史の授業です」


魔法の歴史。


「それを勉強すると魔法が使えるの?」

「いいえ、使えませんねえ」

「えー、じゃあなんでこんな勉強するの」

「過去に間違えた人と同じ間違いをしない為、でしょうか」

「ふうん」

「おやおや、すっかり興味をなくしてますね」


なんか、先生の声を聞いてると眠くなってきた。


「ふわあ」


あくびが出ちゃった。


「眠れない時に思い出して眠る為、かもしれませんね」


なるほど… ぼくはいつもすぐ眠れるけど、眠れない日が来るかもしれないから、先生の話しを聞いてなきゃ…


「はっ!」


あれ?なんでかいつの間に、まわりの人間達が動いてる。


「よく眠っていましたね」

「…眠ってたのか」


先生の話しは覚えてないけど、眠れない時に思い出そう。


「昼休みですね。食堂に行きましょうか」

「りんごもらいに行こう」

「はい」


またキツネくんと手を繋いで歩いて行く。

この前は人間にすごく見られたのに、今日はあまり見られない。


「ここですね」

「うん。りんご持ってる人間探す」


食堂に入ってスカートをはいた人間を探す。

…いっぱいいる。

どんな人間だったっけ?


「りんごの匂いがしますね」


キツネくんが鼻をくんくん動かした。

ぼくもマネしてみようと思ったけど… 鼻、どうやって動かすんだろ。


「あの人でしょうか」


キツネくんが窓側の席に座っている人達を指差した。

その中にりんごをくれた人がいる?

うーん?

あ、そうだ。魔力を見よう。

じっと見てみた。じーっと。

魔力が出てる人間がいる。


「あの人間だよ。魔力が出てる」

「へえ、普段から出ているなんて勿体無い。おや?りんごを持っているのはその隣に座ってる女性ですよ」

「じょせい」

「雌の事です」

「スカートはいてる?」

「そうですね」


座ってるからよく見えないな。

でもりんごをくれた人間は分かったから、その人の所へ行って話しかけた。


「りんごちょうだい」

「あれ、ボクまた来たの。りんご美味しかった?」

「おいしかったからまたもらいに来たの」

「そっかー!ちょっと待ってね」


その人間は隣の人間にりんごをもらって魔法をかけた。


「美味しくなーれ!よし、出来た」


魔法の呪文を聞いた。よし、マネしよう。

おいしくなーれ!って言うんだ。簡単で良かった。


「はい、どうぞ」

「ありがとう」

「ありがとうございます」


キツネくんもお礼を言うと、その人間はキツネくんに気づいた。


「あれ…?いえ、どういたしまして…。この子のお兄さんですか?」

「はい。お邪魔しました」

「バイバイ」


ぼくは手を振って食堂を出た。人間も手を振りかえしてきた。


「裏山で食べる?」

「そうですね」

「あ、もう一個もらえばよかった」

「どうしてですか?」

「キツネくんの分ももらうの忘れちゃった。半分こしよう」

「貰いましたよ」


キツネくんがりんごを2個見せてくれた。


「2個ある」

「はい。タヌキくんにもあげましょう」

「うん!」


嬉しいな。みんなでおいしいりんごを食べるんだ。

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