6 ぼくは反省中
ぼくは今、反省中。
危ない事をしたから、おとなしくしている。
しばらく人間の学校には近づかないんだ。
学校…
近づかないでも、高い所に登ったら学校見えるかも。
木を見上げる。
大きい木はどれかな?
太い木が大きい木だったはず。1番太い木は…
これだ!
1番低い枝に跳ねて乗ろうと思ったのに、低い枝がない。
じゃあ這って登らないと。
這うと時間がかかるけど。
よじよじ… ぼくはゆっくりと登って行った。
よじよじ… やっと枝のとこまで登れた。
よじよじ…
よじよじ…
よじよじ…
そろそろてっぺんかな?
上を見てみるけど、葉っぱがいっぱいで見えない。
もう少しかな。
下も見てみた。地面が遠い。落っこちないように気をつけなきゃ。
よじよじ…
よじよじ…
よじよじ…
「こんにちは」
「ピ…!」
こんな所で声が聞こえてびっくりした。けど、跳ねなかった。跳ねたら落っこちちゃうもん。
「キツネくん。こんにちは」
「こんな所で何をしているんですか?」
キツネくんは枝に座っていた。
ぼくもキツネくんにのいる枝に這って行く。
「てっぺんに登るの」
「てっぺん… 遠いですよ?」
「もう少し」
「いいえ、まだ半分も来ていません」
「えー⁈」
またびっくりした。でも跳ねなかった。
「こんなに登ったのに」
「そうですね。この大木はここいらで1番高いですから」
「1番」
ぼくが選んだ木、そんなに大きかったのか。
「じゃあ、てっぺんじゃなくても学校見える?」
「ええ。そこの枝の先なら見えるかと」
キツネくんが、少し上にある枝を指差した。
ぼくはその枝に飛びうつり… たかったけど、落ちたら危ない。幹に戻って這って行こう。それなら大丈夫。
よじよじ…
よじよじ…
この枝だよね。
この先に行って…
よじよじ…
よじよじ…
だんだん葉っぱが少なくなって来た。学校見えるかな?
もう少し進もう。
よじよじ…
よじよじ…
「止まりなさい。その先は枝が細いです」
上からキツネくんの声がして、ぼくは止まった。
上から?
ぼくキツネくんより上に登ったのに。
間違えて下に行っちゃった?
見上げると、キツネくんが浮いていた。
「キツネくん浮いてる」
「ええ。風魔法です」
「風魔法」
いいなあ。鳥に変身しなくても飛べるんだ。
「学校を見るんじゃないんですか?」
キツネくんが向こうを指さした。
指の方向へふりむくと、
「学校だ!」
わあ、やっと見えた。嬉しいな。でも、遠いから小さいな。魔法の授業は見えないや。
「喜んだり悲しんだり、忙しいですね。また魔法の勉強が見たかったんですか?」
「うん。ぼくは魔法が使えないから」
「そうですか。魔力は増えていますね」
「うん!魔法りんごで増えた」
「昨日魔法で水を掛けられたのも効いてるようです」
「魔法の水も… そっか。でも、りんごの方が好き」
ビシャ!って水をかけられるのは、好きじゃない。
「ふふふ。りんご、美味しかったですね」
とってもおいしかった!また食べたいなあ。
「また食べたいって顔してますね」
「えっ!」
ぼくはぼくの顔を見たくなったけど、水たまりや鏡がないと見れないや。
「またりんごを貰って来ますか?」
「ダメだよ。今反省中だから、人間に近づかないんだ」
「おや、偉いですね」
褒められた。えっへん。
「また人間になれば大丈夫だと思いますよ」
「え?」
また人間になるの?人間なったら、…人間から攻撃されない。だから大丈夫?
そっか。大丈夫。
「うん!人間になる!」
「はい。分かりました。ではまず降りましょう」
そう言ってキツネくんはぼくを持った。
そのまますーっと地面に降りる。
すごい。魔法いいなあ。
地面に着くと、ポン!と音がして、ぼくは人間になった。
「キツネくん、ありが…」
キツネくんにお礼を言うために見ると、人間がいた。
キツネくんも変身した?
「…キツネくん?」
「はい。私です」
「良かった。キツネくんも変身して学校に行くの?」
キツネくんは黄色い頭の背の高い人間に変身している。
頭の色はやっぱり元の毛の色と一緒だ。目の色の元と同じ赤色。
タヌキくんも人間になっても目の色はタヌキの時と同じ緑色だったっけ。
「スライムくん1人だけだと心配ですからね。1人で行かせたらタヌキくんに怒られちゃいます」
「ありがとう」
ぼくはまた人間になって学校へ向かった。
学校まで走る練習をしながら進んだんだけど、隣を歩くキツネくんがずっと隣にいた。
キツネくんは歩いてるのに、ぼくが走ってる速さと同じだったんだ。おかしいなあ。
「だんだん早くなっていますよ」
「本当?」
「はい。追いつくのが大変です」
全然、大変じゃなさそうに言う。
むむ。
もっと速く走らなきゃ!
ぼくは足にグッと力を入れた。
「あ」
何かに引っかかって転んじゃった。
スライムの時と違って、ベシャッと転んだ。
足が痛い?
足を見てみると、折れてる。
「折れてる」
「はい⁈…折れてません。そこは膝です。元々曲がります」
キツネくんがズボンをまくって見てくれた。ひざからちょっと赤いのが出てる。
「少し擦りむいただけですね」
「うん。すぐ治る」
そのまま見てると、治った。
「治癒力が高いんですね」
「ちゆりょく」
「治る力です」
「うん。いつも痛いのすぐに治る」
ズボンを元に戻して、また走る練習だ。