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5 魔法使えるかな

ぼくは昨日、ちょっと大きくなった。

魔力も増えた。

だから、魔法の練習をしようと思う。

ぼくは水滴から生まれたから、きっと水の魔法が使えるはず。


「ピキャ!」


気合いを入れてみた。

何も出ないや。

やり方が違うのかな?

でも昨日の人間達は気合を入れて魔法を使ってた…

…気がする。

気のせいかな?


「うーん」


考えてみる。

タヌキくんは頭に葉っぱをのっけて手を合わせてた。

葉っぱ。

一枚拾って、ぼくの上に乗っけてみた。

手を合わせ…

手、なかった。


「ん〜」


体を伸ばして、手みたいにしてみる。


「んん〜」


2本出たけど、指はできなかった。

まあいいか。


手を合わせて… 気合いを入れる。


「ピキュ!」


…何も出ない。

うーん⁇

そうだ、また人間の魔法を見てみよう。

ぴょんぴょん跳ねて、学校の校庭に向かう。

人間いる!

また校庭で魔法の練習してるんだ。

よし、よく見てマネするんだ。

うーん… 遠くてよく見えないや。

人間に見つからないように、そーっと、近づいてみよう…

ぴょん。

…………まだよく見えない。もうちょっとだけ。

ぴょん、ぴょん。

んー、もうちょっと?

ぴょんぴょん、ぴょーん。

うん、ちょっと見えてきた。

あ!あの人間、魔法で水を出してる。どうやってるのかな。

手を前にだして、水を出してる…?


「キャー!スライムがいる!」

「!!」


人間が急に大きな声で言った。びっくりして飛び上がってしまった。

ぴょーーーん!


「オレが魔法で追い払ってやる!」


え?

さっきとは別の人間が、こっちに向かって手を向けた。

ビシャッ!

水をかけられた。冷たいけどそんなに勢いもないから大丈夫だ。魔法の水だから、おいしい。

ぼくはかけられた水を飲んだ。


「クソッ」

「そんなんじゃダメだ。火魔法で…」

「おいそこ!止めろ!」


バサバサバサッ


人間が何か言い合ってると、いきなり大きな鳥が降りてきてぼくをつかんだ。そのまま空に連れてかれてしまった!


「わあ!やめて!離してよっ」


ぼくは大きな鳥に食べられてしまうと思って、がんばって暴れた。けど、鳥の爪にがっしりとつかまれていて、逃げられなかった。

ぼく、食べられちゃう。

どうしよう。誰か、誰か…助けてー!


「助けてー!!」

「こらこら、おとなしくして下さい」

「え?」


大きな鳥がしゃべった。


「私ですよ」

「わたしさん」

「そうではなくて」


わたしさんは裏山まで飛ぶと、ぼくを地面に落とした。

ポン!

と音がして、わたしさんが… キツネくんになった!


「キツネくんだったんだ」

「はい。私です。…あんな所で何をしていたんですか?」


キツネくんがにこにこしないで言った。

…いつもはにこにこしてるのにな。


「魔法を見てたの」

「人間に近付いてはいけないと、言われませんでしたか?」

「言われた。タヌキくんがいつも…」


そこへ、ザザザッと何か近づいて来たと思ったら、タヌキくんが来た。


「おい!バカスライム〜」


タヌキくん怒ってる。そうか、いつも人間に近づくなって言ってたのに、ぼくが近づいたから…


「ごめんなさい」


ぼくはへにょっとなってあやまった。


「バカバカバカ野郎!お前攻撃されたんだぞ⁈分かってんのか⁈」

「…攻撃。水かけられた」

「へなちょこ水魔法だったから無事だったけど、火だったら今頃殺されてたぞ!」

「ころされてた」

「そうだ、何であんな人間の近くに…、まあ人間の魔法を見てたんだろうが。いつも俺が人間に近づくなって言ってんだろ!殺されたらお前いなくなるんだぞ⁈本当に分かってんのか⁈」


タヌキくんが怒ってる。とっても怒ってる。

ぼくが攻撃されて、殺されそうになったから。

殺されたら、ぼくいなくなっちゃう。

いなくなっちゃったら、もう魔法は使えない。何も食べられない。誰にも会えない。タヌキくんとキツネくんにも会えなくなる。

考えたら、ぶるぶる震えてしまった。

ぶるぶる、ぶるぶる。

…みんなに会えなくてなるのは嫌だ。


「まあまあ、そんなに怒鳴らなくても」

「殺されたら、みんなに会えなくなっちゃう…」

「おや」

「………そうだ」

「タヌキくんとキツネくんに会えなくなっちゃうの、嫌だ」


ぶるぶる、ぶるぶる。

震えるのが止まらない。


「おやまあ、そんなに泣かないで下さい」


キツネくんがそう言って、ぼくを持ち上げて、なめた。


「キュッ?」


びっくりした。なめるんだもん。


「ふふ、涙、止まりましたね」

「はあ〜〜〜〜〜」


タヌキくんが長ーく息をはいた。


「仕方ねえ… もう2度と人間に近づくんじゃないぞ!」


タヌキくんがぼくの頭をポンポンと軽くたたいた。


「うん!」




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