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3 ごはんの時間

校庭で魔法を使う人間達を夢中になって見ていたら、鐘の音が鳴った。

ぼく知ってる、この音がすると授業が始まったり、休み時間が始まったりするんだ。

と言うことは、次は休み時間だ。


「よし、食堂行くぞ」

「しょくどう」

「メシ食うトコだ」


ああ、外から見たことある!人間達が集まって何か食べてる所か。


「見たことある」

「おう。さっさと行くぞ」


タヌキくんは歩きはじめてしまった。

ぼくも急いでついていく。でも、跳ねられないからあまり進まない。人間ってめんどくさいな。

2本の足をがんばって動かさなきゃ。


「おっそ。走れないのか」

「走る?どうやって?」

「あー…初めての変身じゃ無理か。こっち来い」


がんばって足を交互に動かすけど、走れない。よくわかんないな。

言われた通りタヌキくん…違った。お兄ちゃんって呼ぶんだった。

お兄ちゃんの側に行った。

ひょい、と片手で持ち上げられてしまう。


「こーやって走るんだよ」


ぼくを持ったままお兄ちゃんは走り出した。

んん?ちょっと跳ねながら前に歩くのかな。前に跳ねるのかな?

ぼくもできる気がする。

お兄ちゃんの足はたくさん動いてどんどん進んだ。


「ここだ。スライム1人で何か食い物貰ってこいよ」

「1人。それ人間の数え方」

「おう。お前今人間だからな」

「そっか」

「俺はおばちゃん達んとこ行ってくる」

「おばちゃん?」

「食事を作ってる人間だよ。お前なら人間が何かくれるだろ。女を狙え。スカート履いてるヤツだ。スカートは分かるな?」

「うん。広がってる服」

「よし。じゃあ行ってこい。何か貰ったらここに戻れよ」

「分かった」


ぼくは下ろしてもらったら、食堂の中に入ってスカートをはいてる人間の女を探した。

…いっぱいいる。

誰にもらえばいいんだろ?


「わ、どうしたの?ここの生徒じゃないよね?」


スカートをはいてる人間に話しかけられた。

人間はしゃがんでぼくの顔を見た。

この人間でいいかな?


「食べ物ちょうだい」

「え?お腹空いてるの?えっと…ボク1人なの?」

「ぼくは人間だから1人」

「え?えーと…お家の人は?」

「おうちのひと?」


ぼくのお家は裏山だ。裏山全部に住んでいるから。でもたくさんの動物や魔物と一緒だけど。

人は人間の事だ。裏山に人間は住んでいない。


「いない」

「いないのかあ… あ、とりあえずりんごあるよ。食べる?」

「うん」


りんごをもらった。おいしそう。うれしいな。


「笑った!可愛いねえ」


そう言って、りんごをくれた人間も笑ってる。

あれ?この人間、いつもりんごを他のスライム達にあげている人間かもしれない。

人間の顔を覚えるのは苦手だけど、頭の毛の色が同じ気がする。

じっと毛を見ると、ふわりと魔力が見えた。

やっぱりそうだ。魔力がいっぱいあってうらやましいと思ったんだ。


「いつもありがとう」


ぼくは一度しかりんごをもらった事はないけど、他のスライム達の分もお礼を言っておいた。


「いつも?」

「うん。りんごおいしい」

「んん?食べてみないと分からないよ?」

「おいしかった」

「もしかして…おいしそう、じゃない?」

「おいしそう」

「そう!でも本当に美味しいはずだよ。美味しくなる魔法をかけておいたから」

「魔法!」


びっくりした。おいしくなる魔法だって。そんな魔法があるんだ。人間ってすごいな。

りんごをじっと見てみたら、ちょっと魔力が見えた。

本当に魔法がかかってる!


「お兄ちゃんに見せなきゃ」

「え、お兄ちゃんがいるのか。良かったあ。バイバイ」


人間が手を振った。

知ってる。人間は別れる時に手を振るんだ。

ぼくもマネして振ってみた。うまく振れたかな?

さっきお兄ちゃんと別れた場所へ戻る。お兄ちゃんいないな。

どうしようかな?

周りを見てみた。人間達がいる。みんなぼくを見ていく。


「スライム、早かったな」

「お兄ちゃん」

「そのりんご貰ったのか。学食にりんごなんてあったか?」

「魔法りんご」

「魔法〜?…おい、ホントに魔法かかってんじゃねーか」

「おいしくなる魔法!すごい」


お兄ちゃんがりんごを取った。


「おいしくなる魔法って…怪しくねーか?ホントは毒りんごかもな」


お兄ちゃんがりんごを返してくれた。


「どく?」

「食べたら死ぬぞ」

「え⁈おいしそうなのに?」

「美味そうな程危険なんだよ。ま、それは大丈夫だろ」

「え?毒なのに大丈夫なの?」

「たぶんな」


たぶん大丈夫⁇

よく分かんないけど、大丈夫ならいいや。

食べてもいいかな?


「外で食うぞ。俺もパンの耳とミルク貰ってきたからな」

「外。人間達がごはん食べる所で食べないの?」

「食堂な。お前が目立ち過ぎるからダメだ。ずっと見られてるだろ」

「うん。見られてる」

「ずらかるぞ」


そう言ってお兄ちゃんはまたぼくを持ち上げて走った。

廊下は走るな!と叫んでいる声が聞こえる。でもお兄ちゃんはかまわず走って行く。

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