2 学校へ
俺はタヌキ。
でも今は人間だ。正確には、人間に変身中だ。
何度か人間の学校に入った事があるから、慣れたもんだ。
今は休み時間か。生徒達がうろついている。
授業中は俺もうろうろ出来ないから、今の内だな。
早く昼にならねーかな。食堂が開いたら何か食いモンもらいに行こ。
テキトーにうろついていたら、校舎の入り口に人間が集まっていた。
なんだ?
「どうしたの?迷子?」
「可愛いねえ」
「お兄ちゃんかお姉ちゃんに会いに来たのかな?」
「あの、ぼく… あの、あの…」
ん?なんか聞き覚えのある声が…
つーか、さっき聞いた声がする⁈
「スライム⁈」
「あ!タヌキくん!」
人間をかき分けて真ん中にいた小さい人間に近づくと、なんとさっきまで一緒にいたスライムだった。
なんで人間になってんだよ⁈
…この魔力は…、アイツの仕業か。
「こっちに来い!」
「わわっ」
急いでスライムを脇に抱えてその場を離れた。
校舎を出て人のいない場所を探す。
校舎をの横にある建物…図書館だったっけ?
その影へ入ってスライムを下ろす。
「タヌキくんありがとう。いきなり人間に囲まれちゃったんだ」
「バカ野郎!何してんだ!」
「えっと… ぼくも学校に行ってみたいなって思ってたら、キツネくんが」
「はいはい、人間にしてくれたって訳ね」
「うん」
「あのなあ… そんなちっこい人間、この学校にいるか?」
スライムの人間に変身した姿は、俺の半分くらいの大きさだった。
まあスライムはまだ生まれて3ヶ月くらいだからな。
人間に変身した時に小さくても仕方ない。
でも、キツネなら大きさを合わせるくらい出来るんじゃねーのか?
アイツ、わざとだな…
「うん?人間の大きさはバラバラだよね?」
「はあ… それでも学校に来てる人間はもっと大きいんだよ」
「そうなの?」
スライムは可愛く首を傾げている。
こいつが人間になった姿は初めて見たけど、やっぱりもとの色と同じ白い髪に白い肌で不健康に見えるな。
目は…薄いグレーか?
「しょーがねえな… スライムは俺の弟って事にするぞ」
「ぼくが弟?」
「ああ。似てねーけど、似てねー兄弟もいるしな」
「タヌキくんがお兄ちゃん」
「そうだ。兄ちゃんって呼べ」
「お兄ちゃん」
「よし。もー授業が始まってんな。次の休み時間まで待つか」
「え?授業は受けれないの?」
こいつは何もわかっちゃいねー。まあ、だから教え甲斐があるんだけどな。
「校庭で魔法使ってる人間がいるぞ。あの見学でもしてろ」
「わあ!本当だ!」
スライムは嬉しそうに走り出した… って、おい!
「待て!」
スライムの服… ちなみにコイツも学校の制服を着ている。その首元を掴んで止める。
「ぐえ。なあに?」
「なあに?じゃねーよ!人間共に見つかったらまた囲まれるぞ!」
「ええ〜…じゃあ遠くからしか見れないの?」
「そうだ」
「ええ… じゃあスライムの時と同じだよ。せっかく人間になったのに」
スライムがショボンとする。人間になっても全然変わらねーな。
「また休み時間になったらこの中に入ろうぜ」
校舎を指差して言うと、スライムは目をキラキラさせて、うん!と頷いた。
それから校庭で魔法を使う人間観察をしていたが、スライムは魔法を見る度に、あの魔法は何?どうやって使うの?と質問責めが始まったよ。
テキトーに答えたり答えなかったりしながら、やっと昼休みになった。