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1 ここは裏山

ここは、人間が通う魔法学校の裏山。

ぼくは3ヶ月前にここで生まれたスライムだ。

生まれたての時は何も分からなかったけど、今は色んなことを知っている。

教えてもらったり、自分で調べたりしたからだ。

今日も、世の中の事を学ぶために、お散歩中。

ぴょんぴょん、ぴょーん!

大きく跳ねて、木の上に乗った。

地面よりも上にいると、遠くまで見えるんだ。

もっと上だと、もっと遠くまで見えるけど、落っこちた時にとっても痛いからここで良い。

人間の通う魔法学校の中も見えるぞ。

この中にいる人間は魔法を使う。

魔法学校だからね。魔法を教えてる学校なんだ。

ぼくも魔力は持っているから、勉強すれば魔法を使えるはずなんだ。

だから毎日この学校を覗いている。

…魔法、使ってみたいなあ。


「おーい、スライム!」

「ピギャっ!」


びっくりした。

声が聞こえた下を見ると、タヌキくんがいる。ほっとして返事をする。


「タヌキくんか、びっくりさせないでよ」

「これくらいでビビるなよ。相変わらず弱っちいな」

「むっ」


タヌキくんは口が悪い。すぐに意地悪を言うけど、色々教えてもらってるから我慢する。

ぼくが弱っちいのは本当だからね。でもわざわざ言わなくても良いよね?


「そんなトコにいたら人間に見つかって食われちまうぞ!」

「人間はスライムを食べないよ。最近は食べ物をくれる事もあるし」

「まさか人間の用意した食い物を食ったのか?」


タヌキくんはまるでいけない事をしたかの様に言う。

どうして?おいしかったのに。


「おいしかったよ」

「バカか!なんの魔法が掛かってるか分かんねーぞ!」

「えっ、でも、なんともないよ」


なんともないけど、ちょっと心配になってぼくの体を見る。

…いつも通り薄い白だ。痛くもかゆくもない。

ぷるぷる。

揺れてみたけど、いつも通りのぷるぷるだ。


「うん。大丈夫」

「とにかく人間には近づくな」

「えー、でも、タヌキくんは近づいてるよね」

「俺は人間になんか負けねーからな」


そう言うとタヌキくんは頭の上に葉っぱを置き両手を合わせた。

ポン!

と気持ちの良い音がすると、タヌキくんが人間に変身する。


「俺は人間に化けられるからな!この姿で近づけば人間は俺がタヌキだとは気付かねーよ」


茶色の頭の人間になったタヌキくん。毛の色はタヌキの時と同じだけど、今はタヌキの時には着ていない服を着ている。


「それって学校の中の人間と同じ服だね」

「これは制服って言うんだ」

「せいふく」

「そう。じゃー俺は人間どもをからかってくるぜ!」

「え!危なくないの?」


タヌキくんはそのまま走って学校へ行ってしまった。


「いいなあ…」


ぼくもあの中に入ってみたい。

ぼくも変身できればなあ。

タヌキくんの変身は魔法なんだって。頭に葉っぱを乗せてるから、それがあればできるのかと思ったら、関係ないらしい。ちょっとしたおまじない?とか言ってたけど、よく分からない。


「アナタも行ってみますか?」

「ピギャー!」


またいきなり声がして、飛び上がってしまい、そのまま地面に落っこちた。


「ピギュ…」

「おやおや、驚かしてしまいすみません」


キツネくんだ。謝っているけど、顔は笑っている。

むう。

キツネくんは優しいけど、ちょっと怖い感じ。

にこにこしたまま、怖い事を言うんだ。


「で、どうです?」

「え?何が?」

「アナタもあの学校の中に入ってみますか?」


キツネくんがおかしな事を言う。

ぼくはスライムだから、人間の学校には入れないのに。

人間に見つかったら退治されちゃうよ。

慌ててぷるぷると体を振った。


「おや?入ってみたいのでしょう?」

「そうだけど!ぼくはスライムだからムリだよ」

「なら、スライムじゃなければいいんでしょう?」

「ぼく変身魔法使えないもん」

「スライムは擬態が出来るはずなんですが…アナタはまだ若すぎますね」

「うん」


なんだ。やっぱりムリなんだ。もっと大きくなったら変身して人間になれるのかな?


「そんなに落ち込まないで。私が魔法をかけてあげますよ」

「えっ⁈ぼくに?変身魔法を?」


ぴょん!

びっくりして、また跳ねてしまった。


「そうです」

「そんな事できるの?」

「はい。出来ます」


えー!ぼくはびっくりして嬉しくって、またまた大きく跳ねてしまった。

ぴょーーーん、ぽす。

キツネくんの両手の上に着地した。


「では、いきますよ」


キツネくんがウィンクすると、キラキラした光がぼくのまわりに集まってきた。

それから、なんだかむずむずして、あったかくなって…


ぼくは人間に変身した!!


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