表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/69

新たな仲間探し

 それから今日はもう遅いので仲間探しは明日することに。光は微弱だが方向は分かっている。


 そうして迎えた翌日の昼。俺は新都にある街一番の駅に来ていた。駅から出ると平日の昼間にも関わらず多くの人が行き来したくさんのビルが立ち並んでいる。

 それで時間を確認してみるが時刻は10時50分。集合時間まであと10分だ。駅正面のロータリーにある時計塔へと走り、そこに見覚えのある姿が見えてきた。


「香織!」


 もう当たり前のようになった彼女の名前を呼びながら駆けていく。


「聖治君。おっはよ~う」


 彼女の長髪がさらりと揺れ眩しいほどの笑顔が振り返る。彼女らしい活発的で可愛らしい服装だ。制服姿も可愛いけど私服もいい。


「おはよう。さきに来てたんだ。迷わなかった?」

「実はね、ちょっと早めに家を出たんだ~。だから三十分も早く着いちゃった」

「三十分!?」


 それってアニメ一回は見れるよな? 香織は「あはは」と笑っている。


「それじゃかなり待っただろ? 退屈じゃなかったか」

「ううん! 大好きな人を待ってる時間はドキドキしちゃって退屈なんてないよ」


 ノロケかな?


「それにね」


 香織は頬を緩ませて言っていたのだが視線を俺から街へと移す。それで俺も見るのだがそこはなんの変哲もない街並みだ。大勢の人や車、大きな建物や一階には飲食店が並んでいる。


「ここ、たくさん人がいるよね」

「まあ」

「久しぶりに見たな、こんな場所」


 彼女の横顔を見ればその表情は遠い世界を見つめているようだ。


「大勢の人がいて、賑やかで、とても平和。こんな時代があったんだって、実感する」

「確か俺たちが来た未来っていうのは……」


 香織の説明では俺たちはが2039年から来たということで、その時代は悪魔の襲来により人類は敗北、悲惨な状況らしい。そんな場所から来たのなら変哲もないこの場所も楽園がなにかに見えるのだろうか。


「いいね。平和って」


 彼女は振り返りニコっと笑う。その笑顔があまりにも可愛くてついドキリとしてしまった。


「そうだな」


 平和な世界。それに俺たちの平和だって大事だ。そのためにもこのセブンスソードはなんとかしなければ。


「おーい。全員揃ってるな」

「おはよう、聖治くん。沙城さんも」


 そこへ星都と力也も合流する。これで全員揃ったな。


「それじゃあ確認するが歩きながら随時スパーダに反応がないか確認。光が強くなるほど近づいている証拠だ」


 俺たちの目的はスパーダの仲間集め。スパーダの反応は事前に確認してあるがここで間違いない。。金属探知機みたいにスパーダで反応を探り探りだな。


「なあ、思ったんだが全員一緒に回るのか? それでもいいがこの広さを歩いて回るなんてかなりきついぜ」

「それは」


 星都の言う通り一緒に探すというのは効率的ではない。安全は大切だ。だが時間も限られている。

 なんでもセブンスソードの期限は一週間らしくそれでも終わらなければ管理人が襲ってくるようだ。


「一週間、か」


 長いようで、かなり短い。一日も無駄には出来ない。それで俺は考え、決めた。


「分かった。それなら二人一組に別れるのはどうだ? 効率は二倍だし仮に相手が敵対的だとしても二対一だ、いきなり襲ってくることはないだろう」


 俺の提案にみんなは考えた後頷いてくれた。問題は誰と誰が組むかになるが。


「むぅうううう」


 まあ、決まってるも同然だよね。


「じゃあ俺と香織、星都と力也でいいかな」

「よおおおし!」


 ガッツポーズまでしてる。よっぽど嬉しいんだな、というか熱量がすごい。

 でもなんていうか、そんな風に好意を向けられて悪い気はしないというか、嬉しい。


 話はまとまり星都と力也は探しに行った。ここには俺と香織が残される。

 この街を探すにしたってどこへ行けばいいのやら。それ自体は決まってないんだよな、人がいそうな場所ならどこでもいいんだろうが。


「それじゃこれから探索になるわけだけど、香織からどこかリクエストとかある?」

「うーん、私はこの街詳しくないから聖治君に案内してもらえると嬉しいな」

「それもそうだな。それじゃあまずは」


 俺は考えるが、香織はめちゃくちゃ期待してる目で見つめてくる。いや、そんな目で見られても。


「そうだ、香織はお腹空いてる? ちょっと早いけど昼食どうだ? 飲食店を探しちゃいけない理由もないし」

「うん!」


 香織は大きく頷くと俺の腕を掴んできた。


「香織?」

「いいの~」


 俺は緊張するんだけど!


 女性と腕を組んで歩くという初めての経験につい意識してしまう。なるべく気にしないように歩いていくが顔が固くなっている気がする。これ、傍から見たら完全カップルだよな?


 とりあえず香織の好みが分からないので近くのファミレスへ入ることに。もしかしてもっと高い店の方がよかった? 気にし過ぎ?


 いろいろ心配してしまうがそんなの杞憂で彼女は常にニコニコと楽しんでいる。ファミレスの料理も「温かい! 温かいよぉ……!」と涙を流して感動してくれた。

 そんなに?


 食事を終え店を出る。さて次はどうしたものか。


「私は聖治君と一緒ならどこでもいいよ」


 香織は上機嫌に再び腕を組んでくる。どこでもいい、か。

 そういうことならと俺たちが向かったのはカラオケだった。小さな部屋にテレビ画面とリモコン、テーブルの上には分厚い曲引きの本が置いてある。


 カラオケは星都や力也とたまに行っている。それにカラオケなら女の子だって好きだろうし。

 香織は部屋に入ると物珍しそうに部屋を見渡していた。


「ここがカラオケか~」

「あ、もしかして初めてだった?」


 しまった、事前に聞けばよかったな。


「うん。来るのは初めて。新鮮だな」

「新鮮?」

「私たちの時代はどんどん娯楽産業は廃れていったから、あんまりお店で遊んだ覚えがないんだ。でも、だからすっごく楽しみ。なんだかドキドキしちゃうね」


 そうだったのか。言われてみれば彼女の時代は悪魔の襲撃を受けている。カラオケやその類はどんどん無くなっていっただろう。さっきファミレスの料理にも感動してたけどそういう背景があったからかな?


 でも、そういうことなら。せっかくここにいるんだ、少しくらい楽しんだってバチは当たらないだろう。


「まだまださ」

「え?」

「これからもっと楽しいところを案内するさ。帰りたくなくなるくらいな」

「ふふふ。本当に~? それじゃ期待しちゃおうかな」


 そう言って香織が席に着き俺も隣に座る。使い方を教えまずは最初に俺が歌う。次に彼女の番になるが、香織はカタログを見たまま俯いていた。


「香織、どうかした?」

「…………知ってる曲がない……」

「…………」


 それはどうしようもないな……。


 カラオケで歌った後はウインドウショッピングをしていろいろな場所に行った。その度に驚いたり興味を示したりしてくれるものだから案内する俺の方まで楽しい。

 その次はゲーセンだ。俺の前ではぬいぐるみが入ったクレーンゲームを香織が必死に挑戦している。


「もう少し……もう少し……」


 クレーンを慎重に動かす。クレーンは下がっていきぬいぐるみを掴むが残念、ぬいぐるみは倒れるだけで掴むことはできなかった。


「あああ~! もぉう、あと少しだったのにぃ!」

「はは。次は俺がやるよ」


 譲ってもらいクレーンゲームの前に立つ。だいたいここら辺かな?


「? そこだと届かなくない?」

「まあ、見てて見てて」


 クレーンはぬいぐるみよりも少しズレたところで下がっていく。これではぬいぐるみは掴めない。でもこれが狙いで、アームが動いたことでぬいぐりみがひっかり、そのまま穴に落ちていった。


「あ」


 俺は落ちてきたシロクマのぬいぐるみを取り出し口から手に取った。


「な」

「すごい! 聖治君にこんな特技があったなんて!」

「俺もうまい方じゃないんだけどな、以前星都が転売目的で乱獲してるのを見たことがあってさ。結局うまくいかなくて散財してたけど。これはうまくいってよかったよ。はい、これ」

「え、もらってもいいの?」

「そのために取ったんだよ」


 俺はぬいぐるみを渡してあげる。かわいいけど俺の趣味じゃないし。彼女が持ってる方がこのクマだって嬉しいだろう。


 ぬいぐるみを受け取り香織は笑ってくれた。


「ありがとう! ずっと大切にするね」

「はは。喜んでくれてよかったよ」


 それからせったくなのでプリクラに入り写真を撮った。やり方を教えてあげて、撮った写真にいろいろ書き込んでいく。


「見て見て! これすごく可愛くない?」


 女子好みの背景やスタンプに飛び上がる勢いだ。

 外に出てプリクラの写真を取り出す。二人で撮った何通りの写真を手渡してあげた。


「はい、これ。香織の分」

「うん。ありがとう」


 香織は手に取るとそれを見て微笑む。なんだか大切な宝物でも見ているようだ。


「なんだか、すごいな」

「ん?」


 彼女は今出てきたばかりのプリクラを胸に押し当てている。


「いいのかなって、思っちゃった。こんなに幸せで」


 押し当てる手が強くなっていく。一枚のプリクラにどれだけの思いを感じているんだろう。その顔は本当に幸せそうで。


「この場所に来てよかった。この日に来れてよかった」


 この一時に特別を感じていた。


「ありがとう、聖治君。私、すっごく幸せ。人生で一番楽しかったよ」


 輝いて見える。まるで、人生の幸せを凝縮したかのような笑顔だ。


 俺たちは一緒にゲームセンターから出る。そろそろ集合の時刻だ。街は夕焼けに染まり帰宅途中だろうスーツ姿の人が多くなる。

 けっきょくスパーダは見つけられなかったな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ