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【書籍版】錬成七剣神(セブンスソード)  作者: 奏 せいや
第七賞 未来の君へ、愛よ届け
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出会う二人

「ここか」


 俺はビルの合間を通り開けた場所に来ていた。中央にはビルがあり反応からここで間違いない。


 ここに香織をさらった悪魔がいる。そのことに一層緊張が高まるがそれとは別にここは変だった。


 中央にあるビルの周辺、そのすべてのビルが倒壊している。ビル街というジャングルの中ここだけがぽつんと開けている。


 明らかに激しい戦闘があったと分かる。ふと顔を動かすと離れたビルには巨大な悪魔がぶつかったかのような跡もあった。


 どういうことだ? ここでいったいなにがあったんだ?

 分からない。不気味だ。でも立ち止まっていても仕方がない。

 覚悟を決める。正面から入り階段を上がっていった。


 暗い建物内を歩いていく。一段上がるごとに緊張感が増していきやつに近づいているのが分かる。重苦しいほどのプレッシャーが全身に圧し掛かりまるで息が止まっているようだ。


 俺は階段を進んでいくと光が見えてきた。屋上の入口は扉がなく光に向かって突き進む。


 決着の場所に、足を踏み入れた。


 視界が晴れる。厚く暗い空の下、周囲には倒壊したビルの群れ。悪魔の侵攻に敗れた人類の果て。


 そこに、悪魔はいた。


 なにもないアスファルトの屋上はとても広い。その中央に悪魔とソファが置かれていた。その上に香織が座っているのが見える。


「香織!」


 彼女の前方には天志が浮かび彼女を桜色の光が覆っている。眠っているのか意識はない。助けないと。そう思い駆けつけようとした足が止まる。


「え」


 どういうことか分からない。なぜなら。

 ソファの近く、そこにはもう一人の香織が倒れていたのだ。


「香織が、二人?」


 どういうことだ? どうして香織が二人いる? どういう状況なんだ?

 悪魔は椅子に座った香織の前に立ち彼女を見下ろしていた。襲う素振りはないがそもそも香織は無事なのか? 


「おい!」


 悪魔がゆっくりと振り返る。二メートルはあるだろう黒い体が俺を見た。


「香織になにをした、彼女を返せ!」

「…………」


 返事はない。ただじっと俺を見る。


「フゥ……ウゥ……」


 ここからでも悪魔の息づかいが聞こえてくる。ただ立っているだけなのにどこか重苦しい呼吸音が響く。疲れているのか?


 なぜだろう。この悪魔は強い、それは戦ったから分かる。なのにこの悪魔から受ける印象はまるで違う。

 この悪魔は、まるで病人だ。余命幾ばくもない、死にかけなんだと。


「ウウ……ウウ……」


 鋭い口からは時折うめき声が漏れ片手を頭に当てていた。


「お前がなんの目的でそんなことをしているのか知らないが、香織は返してもらうぞ!」


 だがそれは俺からすれば好都合。彼女は誰にも渡さない。彼女は必ず守る。約束したんだ!


「ウウウ、ウワアアアア!」


 絶叫が広がる。それは絶望の中で叫ぶ慟哭のよう。その後四本のスパーダが現れた。

 悪魔がなんの目的で香織を攫ったのかは知らない。ただ俺は彼女を守ると決めた。ならやることは一つ。


 こいつを倒して、取り戻すだけだ!


「いくぞ!」


 俺は片手を前に出す。それはここに至るまでに積み上げた絆の結晶。


「繋がる思いが新たな世界の扉を開ける。七色の絆よ、未来に架かる虹となれ!」


 ここが俺たちの未来だと言うのら、そんなの変えてやる! 誰にも香織は渡さない!


 俺の思いに呼応するかのように周囲に風が吹き荒れた。さらに色とりどりの放電が巻き起こり奇跡をここに降臨させる!


「来い、救世虹きゅうせいこう、シンクロス!」


 瞬間現れる七色の光。それを手に取った。虹色の十字架剣。一部は欠けているがこれこそみんなとの繋がり。それが今俺の手に握られている。


 シンクロスを構える。覚悟を決め、俺は走った。


 悪魔のスパーダも反応しエンデュラスが宙を走る。能力を使ったそれは弾丸より速い。


 すぐさに俺もエンデュラスを発動して迫るスパーダを弾いた。次に左右にミリオットとカリギュラが動き光線とカリギュラを同時に発動してくる。空中を走りながら光線を出す姿はまるでファンネルだ。さらに赤いオーラまで押し寄せてくる。それを天志の壁で守りながら前進する。


 そこへグランが待ちかまえていたかのように振るわれた。桃色から緑色に変えシンクロスを打ち付ける。


「ぐうう!」


 重い。このままじゃ他のスパーダにやられるッ。


 俺は斥力でグランを押し返し黄色に変更、グランを払い退けた。シンクロスにある触れた異能を無効化する能力でグランが地面に落ちる。


 その隙に他のスパーダが襲いかかってきた。周りを飛ぶスパーダが厄介だ。今度は俺がカリギュラを発動して牽制する。

 そしてついに悪魔の前にたどり着く。シンクロスを振り下ろし悪魔の胴体を切り裂いた。


「ガアアアアア!」


 さらに止めと二撃目を放つが、それは交わった四本のスパーダに阻まれてしまった。


「なぜお前がスパーダを持っている!?」

「ウウ……」

「お前が持ってていいものじゃないんだよ!」


 仲間のスパーダをよりにもよって香織をさらった悪魔に使われるなんて。


 攻撃が防がれたことで俺は後ろに下がる。見れば悪魔の胴体からは白い煙が出てみるみると怪我が治っていた。


 悪魔の背後には依然と香織が眠っている。せっかく日常に戻れたと思っていたのに、こいつらのせいでまたも壊された。


「ふざけるな!」


 怒りが口を衝く。胸の内から抑えきれない思いがわき上がってくる。


「なんなんだよお前等は!? どうして、いつも俺たちの邪魔をする? いい加減にしろよ!」


 何度、俺たちは悪魔によって人生や生活を引き裂かれなくちゃならない。せっかく手に入ったと思った生活もこいつのせいで壊されようとしている。


「だがな、何度来たって香織は渡さない。香織は絶対に、俺が守る!」


 シンクロスを握り締める。この戦いに勝って香織を助けるんだ。絶対に!

 その、時だった。


「カオリ……?」

「?」


 喋った? いや、そうじゃない。こいつ、今なにを。


「カオリ……マモル……」


 大きな体を丸め片手を頭に当てている。苦しそうに表情を歪めていた。


「カノジョ、ダケハ。カノジョ、ダケデモ」

「お前」


 単に俺の言葉を反復しているだけじゃない。香織に対して思い入れがあるのか? その深さが声から伝わってくる。でも何故だ?


「お前は、いったい何者なんだ? なぜ香織をさらった?」

「グウウウ……」


 今まで理性を感じなかった悪魔に初めて意思を感じる。


「オレハ」


 狂気しかなかった瞳に戦意が宿る。それはすべてを凌駕していた。熱量も、執念も、すべて。


「カノジョヲ、カオリヲ」


 いったいどれほどの思いなのか、どれだけ積み上げ、どれだけ耐えればこれほどに育つのか。


 その想いは、誰にも想像できないほど黒く、重かった。


「マモルンダァアアア!」


 絶叫が響く。終末の地上、人類の果てで。


 悪魔の周囲に、風が拭く。

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