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【書籍版】錬成七剣神(セブンスソード)  作者: 奏 せいや
第七賞 未来の君へ、愛よ届け
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西暦2059年

 それで俺たちは未来へと向かい移動していった。それは不思議な感じで地面に足が付いているのに浮遊感がある。と思えば全身が圧迫される。まるでエレベーターに乗っているような感覚だ。


 そんな体験が数秒ほど続いた頃、周囲を覆っていた光がぱっと弾ける。それで周りの光景が目に入った。


「ここは」


 屋上から見える景色。厚い雲に覆われた町は薄暗く、都市の名残を思わせるビルはすべて廃墟になっている。ツルが壁面を走り無事な建物は一つもない。道路も道も、すべてが荒れていた。


 暗い。どこまでも暗い世界が広がっていた。


「これが、四十年後の世界?」

「無惨なもんだぜ」


 知ってはいたがいざ見るとショックだ。こんな変わり果てた姿になるなんて。

 だけどそんな思いに耽っている場合じゃない。


 俺はスパーダを取り出す。あいつはスパーダを持っていた。それなら光が強く反応する方向へ行けばあの悪魔の元に辿りつけるはずだ。


「行こう」


 俺たちは歩き出した。

 雲に蓋をされた町を歩く。当然俺たち以外に人はいない。町全体が廃墟と化している。


「私こういう雰囲気苦手だなー。やっぱり町は賑やかじゃないと」

「私は嫌いじゃないけどね、廃墟趣味ってほどでもないけれど。ただここは静か過ぎるわ」

「お姉ちゃん暗いなー」

「うるさい」


 日向ちゃんは陽キャだからな、こういうのは好きじゃないんだろう。対して此方は嫌いじゃないようだから対照的な姉妹だ。


「聖治、気付いてる?」

「なにがだ」


 そこで此方が近づいてきた。


「言ったでしょ、ここは静か過ぎるわ。この世界が人類のいない世界だとしてもよ、それなら悪魔が跋扈しているはず。なのに姿どころか声すら聞こえない」

「それは」


 言われて気づく。ここは悪魔に侵攻された世界。なら人はいなくても悪魔はいるはず。それを警戒して今まで歩いていたんだが遭遇することなく進めていた。


「放棄された地区なんじゃないのか?」


 此方に星都が聞き返す。


「可能性はあるけれど。でも殺戮王が地上に侵攻したとき地球全土が戦争状態だった。それこそ安全地帯なんてどこにもなかったわ。攻めた以上占拠してるもんだけど」

「うーん、悪魔の考えは分からねえからな。けっきょくなんで攻めてきたのかも分からなかったし」

「とりあえず状況が分からない。なにが起こっても大丈夫なように覚悟だけはしておいて」


 真剣な表情で言われ俺は頷く。


「分かった、ありがとな」

「え?」


 此方が少しだけ意外そうな顔をする。


「お前みたいにアドバイスをくれるやつがいると助かるよ。俺はそういうのに疎いからさ」

「まったく。しっかりしてよね、香織を助けるんでしょ」

「ああ、そうだな」


 此方が小さく笑う。それに合わせ俺も頬を緩ませた。


「私もいるんですけどー?」

「ああ、日向ちゃんもありがとな」

「へへ~」


 まったく、寂しがり屋なのは相変わらずか。別に張り合わなくてもいいのに。


「みんながいるから心強いんだなぁ」


 そんな中力也まで呑気なことを言っている。


「なに言ってるんだ、力也にも期待してるんだからな」

「うん……ありがと、僕も頑張るよ」


 それで俺たちはスパーダの反応を見ながら町を進めていった。反応からまだ先のようだ。


「近づいてはいるみたいだがまだ距離はありそうだな」

「どうする、俺が先に見てくるか?」


 星都からの提案に一考してみるが俺は顔を横に振った。


「いや、単独行動は危険だ。偵察するなら相手の居場所が分かった時にしよう。どれだけ離れているかまだ分からないしな」

「じれったいぜ」


「星都さん、一番じれったいのは聖治さんなんだから抑えないと」

「わーってるよ、うるせえな」

「えー、私うるさくないし。むしろ逆だし」

「お子ちゃまが」

「大人げない」

「ああ?」

「なにぃ?」


「二人ともうるさい!」

「へーい」

「私悪くないも~ん」

「まったくもう」

「大変なんだなぁ」

「ははは……」


 背後でみんなの話し声が聞こえる。こんな状況なのに警戒心の足りないのが若干いるようだがそんな普段と変わりない声が聞こえてくるとどこか安心した。


「おい」


 そこでまたもや星都が声を挙げてきた。


「星都さーん」

「ちげえ! 上見ろ」


 言われ空を見てみる。曇天に覆われた暗い空が広がるが、前方に赤い魔法陣が組み上がり始めていた。


「でかいぞ」


 赤い線が空に走り巨大な魔法陣を描いていく。それが完成すると大群の悪魔が現れた。


「隠れろ!」


 すぐに建物の影に隠れる。そこから少しだけ顔を覗かせ見てみるが、魔法陣から現れるのは空を飛ぶ悪魔もいれば光の通路で地上に来る悪魔もいる。中には建物と同じくらい大きな悪魔もいた。


 なんだこいつら、もしかして俺たちのことがバレたのか?

 危機感を覚えるが、しかし悪魔は俺たちの方へは来なかった。


「あいつらどこへ向かっているんだ?」


 悪魔の群は別の場所を目指して移動している。どうやらバレてはいないようだ。


「聖治、あいつらの向かってる先、私たちと同じじゃない?」

「ほんとだ」


 俺の隣にいた此方に言われて気づく。悪魔たちが進んでいるのは俺たちの行き先と同じだ。


「あいつら沙城をさらったやつと合流するつもりなんじゃねえか?」

「くそ」


 急がないと。なにをするつもりか知らないがもたもたしていたら取り返しのつかないことになる。


「いったいどれだけいるんだ」

「待ってて、私見てくる」


 そう言うと日向ちゃんはミリオットを出し身体強化で跳躍、建物の屋上へと跳んでいった。そこから悪魔たちを見て地面に降りてくる。表情はあまりよくない。


「ざっとだけど二百ってところだと思う。それにいろんなのがいた。全員武器持ってるし、でっかいのがやばそう」

「パレードって感じじゃないよな」

「あんな可愛くないパレードなんて最悪なんだけど。どうする聖治さん?」


 このまま進めばやつらと鉢合わせになる。急がなければならないが俺たちは香織をさらった悪魔と戦わなければならない。体力は温存しておきたいが、それだと出遅れる。


 突破するか、遠回りするか。

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