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【書籍版】錬成七剣神(セブンスソード)  作者: 奏 せいや
第六章 未来に架かる七つの光
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最強の一撃VS無限の斬撃

 そこで屋上の扉が開かれるとみんなが現れた。


「聖治君!」


 背後から聞こえる香織の声。だけど俺は振り返らない。


「いい人だった。不器用で、分かりづらいけど、その人の思いはしっかりと伝わっていた。そんな人が俺の前に敵として立っている。それならどうする? 取り戻すだろ、絶対に!」


 この人が俺にしてくれたこと。それを返す時がようやくきた。


「ハッ!」


 走り出す。床を思いっきり蹴りシンクロスを振るう。兄さんも天黒魔を振るう。互いに持てる異能のすべてを出して。


 エンデュラスの速攻も転移で躱されグランの猛攻も通じない。ミリオットの光線でも追えずカリギュラも切り裂かれる。


 次々に位置を変える兄さんに俺もエンデュラスで追いすがる。それを迎撃するように多元攻撃の斬撃線が空間に現れた、急いでそれを回避する―――


 その行先、兄さんが現れた。


(な!?)


 まさか、さっきの攻撃は誘導。こっちに回避するようわざと逃げ道を残していたのか?


 気づいた時には遅かった。誘い込まれた俺に兄さんが天黒魔を振るう。そのタイミングは完璧で――

 俺の胴体を、切り裂いていた。


「がああああ!」


 兄さんの隣を通り過ぎ地面に倒れる。


「聖治君!」

「おい、まずいぜ」

「そんな」

「聖治さん!」

「聖治」

「ぐっ、ううう」


 血が流れ手の平を見れば赤い血がべっとりとついている。


 まずい。天黒魔で斬られた。それも普通の攻撃で。全能じゃないからシンクロスで修正も出来ないし天志で治すことも出来ない。


「くっ! ぐうう!」


 起き上がろうとするが、駄目だ。痛みがこれ以上は危険だと伝えてくる。激痛に体が動かない。


「う、うぅ」


 傷口から広がる痛みと流れる血が命の危険を警告していた。これ以上は本当に死にかねない。

 あれほど熱かった戦意が、悔しさに塗り潰されていた。

 くそ! くそくそ。ここで終わりなのか? この人に、俺は追いつけないのか? またしてもッ。俺は!


「立てぇえええ!」


 そう思った、時だった。


「立て聖治! 俺に勝つと言ったのはその程度か!? 立てぇえ!」


 顔をゆっくりと上げていく。兄さんが、立てと叫んでいた。


「俺に勝つんだろう! その程度の怪我でなにを守るつもりだ、ここで立てないやつが未来も仲間も救えるか! 馬鹿馬鹿しい! お前は救うんだろう!」

「…………」


 あの兄さんが、俺に立てと言っている。今まで聞いたことがないほどの大声で。それが出来ると言っている。

 信じているんだ、俺が立ち上がれると。


「立てぇえええ!」


 その言葉に、心が熱くなる。俺は手を地面に付いた。


「ぐ、おおおおお!」


 痛い。めちゃくちゃ痛い。


 だけどそれがなんだ。立つんだ!

 力を入れる。体を起こし、足を立たせ、その度に走る痛みを無視して。

 俺は、立ち上がった。


「聖治君!」


 背後からみんなの声が聞こえる。胴体は斬られた。だけど内臓までは届いていない。なんとか立てたが派手に動けば傷口が広がり致命傷になりかねない。それでも俺は立ち上がった。深い呼吸を繰り返し兄さんを見る。


 だっていうのに。


「当然だ」


 この人は変わらない。こんなに頑張っても褒めても労ってもくれない。でも、いい。

 この人は、こういう人だから。


「決着、付けようか」


 次が、おそらく最後の攻撃になる。これではまともに戦うことは出来ない。だから次で決める。


「ああ」


 兄さんも応じる。いつもの挑発然とした態度ではない。真剣な顔つきだ。

 天黒魔に手を伸ばす。柄に手を添えて構えを取る。


 いつもと同じ居合いの構え。そこから今までで一番大きな魔力の波動を感じる。

 シンクロスの光が渦を巻いていく。それは勢いを増していき竜巻のように荒れ狂っていた。


 今の俺はあくまで情報上での七本。だから他のスパーダを取り出すことも同時に能力を使うこともできない。


 だが、この時だけそれを可能にする。膨大な魔力と引き替えに一度だけ能力をすべて同時に放つ。使えば最後どうなるかなんて分からないけれど、どの道これが最後!


 互いに全身全霊を掛けて最強の技を放とうとしていた。気配だけでもこの場を振るわせ地震と竜巻が同時に起きているようだ。


 今まで経験してきた出会いと悲劇。この長い旅に終止符を打つために。

 七色の光が集い未来に掛かる虹となる。

 これが俺の全力全開!


「虹色に輝く七つのレインボー・クロス!」


 シンクロスの剣先を兄さんに向け七色に輝く一条の光が走る。


 時間は止まり、質量は上がり、増幅した熱量は万を越え、当たれば魂や寿命までも蝕み、異能も全能も利かず、物理攻撃も弾き、傷は回復できない。


 すべての能力を集約した光が時間と空間、世界すら貫き進んでいく。


 それを前にして兄さんも動く。

 停止している時間の中で、この人も動き出していた。

 抜刀前から漏れる殺意の紫。極限の呪いを開封するかのような絶望が抜き放たれる。


 それもまた兄さんがこの旅で得た力の集大成。


「無限斬り」


 天黒魔の刹那斬りに半蔵の加速魔術を加えゼロ秒行動となり、絶対に命中し、空間を切り裂き、異能や概念すら斬り、並行世界を重ね多元の斬撃となる。


 この瞬間、七色の光と無限の刃がぶつかった。


 それは多くの異能同士の激突でもあった。絶対命中はシンクロスで無効にし時間停止もゼロ秒行動で相殺される。それだけじゃない。 


 天黒魔の斬撃が七色の光線に当たる。レインボー・クロスを切り裂かんとする斬撃はしかし天志に弾かれる。せいぜいが鱗一枚分が削られた程度。一撃なら問題ない。


 だが、それが数え切れないほどの刃となって襲ってくる。万か? 億か? それとも兆か? 刹那斬りを超えた連続攻撃にこの空間が斬撃で飽和する。 


 一センチ、いや、一ミリ。


 それだけ進むのにレインボー・クロスの光が細くなっていく。進むごとに全身を剥ぎ落とされる。


 異能も物理攻撃も利かないという耐性を乗り越えそれすらも切り落としていく。カリギュラの能力で触れた瞬間から刃は消滅していくが多元攻撃では意味がない。


 だが俺の攻撃も負けていない。身を削られながらも前進していく。

 その様はまるで七色の桜吹雪のようだった。散っていく虹の欠片が渦を巻きながら向かい風となって降りかかる。生死を賭けた死闘の最中でありながら――


 それは、とても綺麗な光景だった。


 そして、終わりがきた。


 時間が元に戻る。長かったようで一瞬にも満たない時間が終わる。七色の霧が晴れていき徐々にだが視界が見えてきた。


 この勝負、どちらが勝ったのか。期待と不安がせめぎ合う中で注視する。そこで、ついに答えが出る。


「嘘だろ……」


 そこに、兄さんは立っていた。


 天黒魔を振り抜いた体勢のまま、荒い息を吐いている。両肩を動かしながら立っているのがやっとの体勢で。それでもその体に傷一つない。


 俺は地面を見た。レインボー・クロスの熱で地面が溶け跡になっている。その跡が、兄さんの直前で途切れていた。


 斬ったのか? この一撃を?


 もう、驚愕も呆れも通り越して無心になる。この事実を淡々と受け入れるしかない。


 ほんとうに、この人って人は。


「はあ……はあ……」

「ふう……ふう……」


 この勝負は引き分けだ。だが、俺たちの勝負はまだ終わっていない。


 ふらつく足に力を入れ前屈みになる体を起こす。シンクロスを持ち上げようとするが重い。グランに切り替えようとするが、駄目だ。それもできない。能力を使うスタミナが尽きている。


 気力だけで戦うしかない。


 それは兄さんも同じらしくその表情はかなり辛そうだ。


 頼む。一撃だけでいい。一振りだけ俺にくれ!

 最後の最後、なんとかシンクロスを持ち上げる。まだ終わりじゃない。


「二人とももう止めて!」


 そこで香織が叫んだ。


「もう十分でしょ? これ以上戦ったって傷つくだけだよ。取り返しのつかないことにだってなる。今ならまだ間に合うよ」


 悲痛な声で訴えてくる。だけど、


「香織、それは違う」

「え」


 香織を見ずに、俺は言う。


「意味ならある」

「その通りだ」

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