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【書籍版】錬成七剣神(セブンスソード)  作者: 奏 せいや
第六章 未来に架かる七つの光
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救世光シンクロス

 これが七つのスパーダが合わさった剣。セブンスソードが目指した完成形。


 救世虹シンクロス。七色に輝く十字架の剣。


 時間遡行を旅してきた中で俺は累計で七つの剣を得た。これはその結果。悲劇しかないと思えた世界も無駄なんかじゃなかった。そこにあった出会いも思いも今ここに結実する。


「記憶だけでなく獲得したスパーダも記録していたか。それがシンクロスの能力か?」


 俺は七色に光るシンクロスを目の前に持ってくる。この輝き一つ一つがみんなとの繋がりなんだ。


「シンクロス。この名前の意味をずっと考えていたよ。神の交差点。新しい苦難の道。どれもタイムリープのことだと思ってた。だけどそれだけじゃなかったんだ」


 シンクロスの意味。シンとクロスを分ければ神とか新とか、交差点とか十字架とかいろいろ読める。だけどこの意味はそれだけじゃない。

 それを、ようやく理解した。


「これは、シンクロの複数形だ! 仲間たちが同じ目的に向かって進む、絆の形なんだ!」


 ダブルネーミングだったんだ。今、シンクロスは七色に輝いている。自分一人では無理だった。みんながいたからこそこの剣は輝いている。


「もう、あんたに守ってもらうだけの俺じゃない。兄さん」


 俺はスパーダを構える。


 相手は強い。だけど俺は負けない。このスパーダがあれば兄さんだろうと戦える。

 俺のスパーダは予想外だったようで背後でみんなが驚いている。七つの能力を得たスパーダ。それが現れたんだ。


 だが兄さんは驚いていなかった。眉が動いただけでその顔はとても冷静だ。


「いいだろう、ならお前の強さを証明してみろ。もし弱いままなら後ろの連中は殺す」

「そんなことはさせないッ」


 俺たち以外人のいない夜の都市。街灯に照らされた歩道の上で俺たちは向かい合う。時を越えた再会は感動ではなく戦意をぶつけ合う戦いだった。


 喜びの代わりに剣を取り、感謝の気持ちを戦意に変えて。

 俺たちは、ぶつかり合う。


「意気込みは見事だが、終わりだ」


 兄さんが動く。天黒魔を取り出し一足の踏み込み、それだけで安全圏を飛び越え間合いに入る。 だが俺には七色のシンクロスがある、そこに宿る力の一つ。


「天志!」


 その第二段階の力、桃色をしたレンズ状のバリアが展開した。それは守護の光、あらゆる攻撃を弾く最優の盾。どれだけ兄さんの斬撃がするどくとも天志は超えられない。


(なんだ?)


 瞬間悪寒が走る。


 俺は強くなった。七つの力を得て間違いなく進化している。

 だがそれは俺だけか? この世界線でさらに強くなった者がいないとなぜ言える?


「甘い」


 振り切る天黒魔の刀身、紫の刃。それはバリアをすり抜けてきた。


「があああ!」

「聖治くううん!」

(斬られた!?)


 血が飛び散る。まるでそこにバリアなんてなかったように。


 まさか。いや、それしか考えつかない。

 あの血痕、あれは兄さんのではなかった。では誰の? 

 その答えが文字通り俺を斬り付けた。


「絶対、命中?」

「そういうことだ」


 膝から崩れ地面に着く。あまりの激痛に動けない。

 過程を無視して結果を確定させる因果律の操作。それを使えばすり抜けるなんてあり得ないことも起こる。


「あの血痕……。すでに三人とも」

「あんなことがあった後だからな、早めに片付けておいた」


 うそだろ……、俺を庇う必要がなければ、この人は無傷で勝てたのか?

 斬られた痛み以上に戦慄する。この人は、怪物か?


「お前にどんな力があっても斬られる結果が決まっていれば意味はない。終わりだ」


 天黒魔で付けられた傷は治らない。それは天志でも不可能だ。

 勝負は、ついていた。


「この世界で、強くなった、ってことか」

「…………」

「さすがだな。でもだぜ、言ったよな? 強くなったのは俺だってそうなんだよ!」


 シンクロスの光が強まる。因果すら覆す七色の光!

 俺は立ち上がっていた。その体に傷はなく兄さんは攻撃する前の位置に戻っている。


「なに?」


 兄さんも自分の立ち位置が変わっていることに気が付いた。

 俺は天黒魔に斬られた。普通ならそれで終わりだ。それでも俺がこうして立っていられるのはもちろん理由がある。


「シンクロスの能力はタイムリープだけじゃない」


 七色に輝くうちの黄色、その光が一際強く光っている。


「世界を何度もやり直すという神に等しい力。それだけでなく、発動した全能をなかったことにできる。全能とは因果律の操作や世界改変のこと。俺に絶対命中は通じない!」


 兄さんは因果律を操作して俺を斬った。だがシンクロスの能力によってその因果が修正されたことで俺が斬られたという事実そのものがなくなった。


 それがシンクロスの全段階解放の力。

 俺に全能は通じない!


「神殺し……。スパーダは設計された能力デザイナーズ・エフェクトだがそこまで見越していたか」


 普通、勝利を確信した後にそれが違ったと知れば驚いたり落胆したりする。しかしこの人にそんな隙はない。


「少しは戦えそうだな」

「勝負はここからだぜ、兄さん」


 これで兄さんの能力、その一つを封じたことになる。

 だが油断はできない。管理人を三人倒したということはまだ二つ能力を持っている。


 それにこの人の強さは能力だけで計れるものじゃない。そうでなければ最初の段階で管理人は倒せない。


「ここでは狭い。場所を移すぞ」


 兄さんが歩き出す。そう言われ俺も歩き出した。


「聖治君……」

「俺たちも行くぞ」

「うん」


 ここは都会だ。空に伸びる摩天楼、高層ビルが立ち並び多くの車が行き交うように道路も広く作られている。


 その一カ所にあるスクランブル交差点に俺と兄さんは立っていた。歩道の白線が十字に交わり四角にかたどられたこの場所はまるで予め用意されていた決闘場のようだ。


 俺たちは正面に向き合い互いを見つめている。


 ここにきて、もう話すことはない。相手はセブンスソードを戦い抜くと決めている兄さん、魔堂魔来名。どれだけ言ったところで意味なんてない。そして俺も譲る気なんてない。


 戦って決めるしかないんだ。

 俺はシンクロスを構え、兄さんも天黒魔を構えた。無人の町の静寂が戦場を包み込む。


「…………」

「…………」


 無言。時間さえ止まった気がした。雑念もなく、この瞬間に集中する。

 不思議な感覚だった、今まで戦いはたくさんしてきた。自分を守るため、誰かを守るため。殺されるという恐怖を感じながら。


 でも今は違う。こんなにも勝ちたいと思っているのは初めてだ。

 兄さん。俺は、あんたに勝ちたい。いや、勝つんだ!

 いくぞ、俺の集大成を見せてやる!


 瞬間、時が動く。


「ふん!」


 その最初は兄さんの抜刀、天黒魔の居合斬りだった。しかし俺たちの距離はまだある、空振りだ。


(いや違う!)


 本当の刃は別。


 俺の周囲でいくつもの斬撃が起こる。紫の線が生まれ俺に重なる多元同時攻撃。いくつもの攻撃が同時に襲い掛かってくる。

 それは一本の剣では防げない。


 だが、守る術ならある!


「天志!」


 シンクロスの刀身が桃色一色に変化した。それは守護の盾。防御に特化したスパーダが俺の周囲にバリアを張り攻撃を弾いていく。


(こんなんで、終われない!)


 今度は俺の番だ。天志を解き前に出る。

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