魔来名との再会
それから学校は終わり俺たちは電車で港町に向かっていた。いつもならピリつく空気だがすでに仲間だということを知っているので気持ちが軽い。むしろ胸が妙に高鳴り俺たちは最後の仲間を迎えに行っていた。
だがここに来て異変が襲う。
「いない?」
夕日の赤色に照らされて建物の影が延びる。そこには俺や兄さんが以前の世界で寝泊まりした建物もあったが中には誰もいなかった。
「おいおい、話と違うじゃねえか。本当にここで合ってるのか?」
「間違いない」
さすがの俺だって自分がいた建物くらい分かる。だけどここには誰かがいた痕跡はあるが肝心の本人がいない。
「どういうことかな」
「分からない」
香織に聞かれるがあいにくと俺にも分からない。兄さんはどこに行ったんだ?
すると此方が走ってやってきた。
「みんな、すぐに来て!」
星都と力也と顔を合わせすぐに外に出た。
建物の外に出て道を走るとそこには日向ちゃんが立っている。
「聖治さん、これ」
そう言って日向ちゃんは地面へと顔を向けた。
「これは」
そこには夕焼けに混じって赤い液体が地面に広がっている。
「血だ」
大量の血がこぼれている。人一人がここで殺されたんだ。
「聖治さん」
日向ちゃんに言われ俺はさらに別の場所を見てみる。
「これは」
そこには、同じように血が広がっていた。血がついた場所が三カ所もある。
「そんな、ここでなにが」
「魔来名が襲撃されたのは間違いなさそうだ。じゃなきゃこんな風にはならねえし」
「そんな!」
兄さんが襲われた!?
「兄さんは無事なのか!?」
「聖治君落ち着いて。まだやられたと決まったわけじゃないし。とりあえず周囲は探したけれどお兄さんはいなかった。管理人に襲撃されたなら避難したと考えるのが普通よ。傷を負っているなら私の天志で治せるし。そうなれば行き先は」
俺はシンクロスを取り出した。それをゆっくりと動き出し反応を見る。何の反応も見せないシンクロスだが急に光り出す。その方向は、
「新都か」
行き違いか。くそ!
「新都に移動したってことは、そこまでひどい怪我ってことじゃないんじゃねえか?」
「分からない。とりあえず戻ろう!」
俺たちは来た道を戻り新都へと着く。改札を通り駅の外へ。すでに辺りは夕日から夜に変わっており街灯が点き始めていた。
「くそ」
油断していた。兄さん一人なら管理人に襲撃される理由がないと勝手に思っていた。だがなにが理由で戦いになるかなんて分からない。
あの血だまりの現場、無事であって欲しい、今はそう願うだけだ。
「お兄さんはどこかな?」
「スパーダで探すしかないな。人目に気を付けながら探していくしか」
「おい」
そこで星都が声を掛けてきた。
「気付かねえのかよ」
「え?」
言われ振り返る。星都は真剣な顔で周囲を見つめていた。
「この状況、見覚えあるだろうが」
そこで、俺もようやく気が付いた。
「誰も、いない?」
そう、ここには俺たち以外誰もいなかった。降りた時には人がたくさんいたのに、駅の中、それだけじゃなく町にまで誰もいない。道路には停っている車はあっても走っている車は一台もなかった。
無人の町だ。
「これって」
一周目の時と同じ。星都たちにとっては二週目の乗客が消えた時と同じだ。
「相棒、嫌な予感がする」
「予感?」
星都はエンデュラスを取り出した。その表情は引き締まっている。
「結界は俺たちの戦意に反応して発動している可能性が高い。要は戦闘が起きる合図だ」
「でも、俺たちに戦う気なんてないぞ?」
コツン。
言っている途中で足音が聞こえてきた。
街灯の向こう側、そこに誰かいる。
足音に全員がスパーダを取り出した。管理人か?
街灯の間、光の当たらない暗がりを注視する。一歩ずつ近づいてくる足音。
その正体が、街灯に照らされた。
金色の髪、白の外套。そして右手に握られた日本刀。
剣島正和。俺の兄さんだった。
「兄さん!」
よかった、生きていたのか。最悪の予想が外れてホッとする。けれど兄さんは精悍な表情のまま俺たちを見つめていた。
「間に合ったか」
どういう意味だ? 何に間に合ったんだろう。
「なあ聖治、この人が」
「ああ。魔堂魔来名。本名は剣島正和。俺の兄さんだ」
一週目の時は敵だったけどそこで俺の魂を取り込んだことで記憶を取り戻した。それで前の世界では俺を救ってくれたんだ。
「正和?」
「香織知ってるの?」
香織は聞いたことがあるのか此方が聞き返す。
「えっと、又聞きだけど私と聖治君がいた未来で軍の人が話してたんだ。悪魔が侵攻してきた九州地方の防衛戦ですごい活躍してる人がいるって。その名前が確か正和だったと思う」
「そうなのか?」
「俺のことはどうでもいい」
前の世界、あんな別れ方をしたのに兄さんは関係ないかのようにいつも通りだ。それがちょっと寂しいが、兄さんはむしろ険しい雰囲気をしている。
なんだろう。まるで戦う前みたいだ。
「聖治、そこを退け」
そう言って兄さんが前に出る。
「待てよ、なにをするつもりなんだ」
今なら分かる、俺にも。
――嫌な予感がする。
「後ろにいるのを殺す」
「なんで!?」
兄さんは構わず歩いてくる。その目には一切の甘えがない。
「待ってくれ兄さん! なんで!? 後ろにいるのは全員俺の友達だ! 仲間なんだよ! セブンスソードは終わったんだ、あんたが仲間になればそれで終了なんだよ!」
「あ、私は聖治君の彼女ですぅ」
「分かっていないな」
香織のセリフも俺の言うことにも兄さんは冷たい反応しか返さない。
「お前も知っているだろう、これから先の未来でなにが起こるのか。それを回避するためには魔卿騎士団をまとめるカリスマが必要だ。力が必要だ。スパーダは七本を一つにしなければ意味がない」
「だからって殺すのか!?」
「そうだ」




