みんなで掴む未来
そんなこんなで無事再会を喜んだ俺たちだったが、とはいえ問題が解決したわけではない。これからどうするか話し合わないと。
「それでだ、話を戻すが未来じゃ俺たちの世界は悪魔たちのせいでめちゃくちゃにされた。人類もがんばってはいたがな、負けちまったよ。だが聖治が頑張ってくれたおかげで俺たちにはまだ猶予がある。こうして侵攻前の世界にいられるからな」
普段のおちゃらけている様子とは違って今の星都は真剣だ。星都の雰囲気に当てられてみんなの顔も真面目になっていく。
「なぜ人類は負けたのか。挙げればいろいろあるが言ってしまえば力がなかったせいだ。それは俺たちスパーダが不足してたというのが理由でもある。あの戦いに勝つには七本のスパーダは必要だ。なんとしても」
星都の拳が握り込まれ熱意と思いが伝わる。
「相棒が世界を変えた後、今より一つ前の世界線だな。俺たちはみな記憶を引き継いでいた、プラン通りスパーダを七本集めるため集合した。沙城も探し出して経緯も説明したしな」
「そうか。それで香織は知ってたのか」
「うん。最初聞いたときは驚いたよ」
「それで俺たちはなんとか合流できたわけなんだが、お前だけがいない。ホムンクルスが不安定だったせいでシンクロスもうまく発動しなかったんだろう。。正直ビビったぜ。シンクロスを持ってるのはお前だからよ、そのお前がやられてスパーダが紛失でもしたらすべてご破算だったからな」
「俺がロストスパーダになってたな」
正直危なかった。星都の心配はもう少しのところで的中していたんだ。
「なにがあったんだ? てかどこにいたんだ?」
深刻な表情で聞かれれ俺は目線が少しだけ下がる。
「〇△月16日に、魔来名と一緒にいたんだ」
「ほんとかよ!?」
俺の言葉にみんな驚いている。そりゃそうだ。
「聖治君、なにがあったの?」
香織が心配そうな目で見てくる。魔来名のことは俺が話した内容がすべてだ。冷酷な殺人者、みんなはそう思ってるはずでそんな人物と一緒にいたと伝えれば心配もされる。
「その魔来名なんだけどさ」
だからこそどう説明したものか。言っても信じてもらえるかどうか。
くそ、迷ってても仕方がない、正直に言おう。それしかない。
俺は覚悟を決め、魔来名の正体を明かした。
「あの人は、俺の兄さんだったんだ」
「はあ?」
星都が素っ頓狂な声を挙げる。そりゃそうだよな、他のみんなも同じような反応だ。
「お兄さんって……」
「香織には話したことあっただろ? 俺たちがいた未来の時にさ」
「うん、覚えてる。でもその人がお兄さんなの?」
「うん、俺も最初は驚いた。でも思い出したんだ。魔堂魔来名。あの人は俺の兄だ」
ほんと、今までビックリしたのは何度もあったが魔堂魔来名の正体は一番驚いたかもしれない。死んでたと思ってたからさ、特に。
「思い出したってことは、魔来名の魂に触れたってこと? でもどうやって」
「管理人から俺を守ってくれたんだよ。あの人はその傷で亡くなった。すごかったよ」
壮絶だったな、今思い返してもまるで現実感がない。それほどすごい戦いだった。
「みんな、魔来名のことなんだが、彼は敵じゃない。あの人も俺が弟だということを覚えている。だから今度は一緒に戦ってくれるはずだ。あの人は、味方だ」
魔来名の味方発言に一様に目を大きく開いている。想定外過ぎてどう反応すればいいのかも分からないって感じだ。
「なあ、それ本当かよ?」
「ああ、断言する。あの人、俺のために最後まで管理人と戦ってくれたんだ。自分がいくら傷ついて、文字通り死ぬまでさ。……俺を守るって、昔の約束今も守りやがって」
それは嬉しいことだけど、反面悔しくもある。
あの人は俺を守ってくれたけど俺はあの人を守れなかった。それが心残りで今も引きづっている。
今度は、俺があの人を守りたい。そんな機会があるかは分からないけどさ。
「そうか。でもなんだ、そいうことなら最高じぇねえか。それならスパーダは七本揃ったも同然だ。いやー、よかったぜ。それだけはマジで不安要素だったからよ」
星都の言っていることは分かる。魔来名が味方になってくれれば殺し合うこともない。なにより魔来名を倒すということがそもそも大きなハードルだった。それがなくなったのは本当に大きい。
「でも不思議だね、兄さんはどうしてこの時代に? 私と聖治君はロストスパーダをこの時代から探し出すために来たけど」
「…………」
香織の質問に考える。俺と香織がここに来た理由はロストスパーダを探しに来るため。ならあの人が来る理由は?
分からないけど、思い当たるのはこれしかない。
「……きっと、団長になるため。それで悪魔を倒し、俺を守るためだ」
それしか、俺には思いつかない。
「どうやって過去へ来たのか、どうして魔来名という姿をしているのか、それは分からない。でもあの人の動機はそれしかない。あの人はそのためだけにずっと戦っていたんだ」
自分がボロボロになって、死にそうになっても俺を見捨てなかった。あの人は、本当に俺との約束を守ってくれたんだ。
そんなあの人を見捨てるなんて俺にはできない。だから俺はシンクロスを使った。
この世界では、あの人を救うために。
「ちなみに管理人は三人いるが兄さんが全員倒したよ。だから兄さんが仲間になれば管理人にだって勝てる」
「はあ?」
「すごかったぞ、マジで英雄だったわ」
みんな驚いている。俺だってそうだ。凄すぎるよ。
「それすごいね。ていうか、セブンスソードを根底から崩しちゃうと思うんだけど……」
「いろいろ反則なんだよ、あの人は」
もう全部あの人でいいんじゃないかな、そう思わせるくらい破格だった。
「それじゃあだいぶ話はまとまったな。それに状況は好転しているようだ。希望が見えてきたぜ」
「うん、僕もうれしいんだなぁ」
「もしかして私の出番ってもうない感じ?」
「なくていいでしょ、なに期待してんのよ」
解決の光が見えたことでみんな少しだけれど笑っている。余裕が生まれている証拠だ。
「お兄さんの居場所って分かるの?」
「たぶんだけど拠点としているのは郊外の港町だったからそこだな」
「ならそこに行けば分かるね」
「ああ」
解決の糸口は見え道筋も分かっている。みんなを見ていて俺も自然と気持ちがわき上がっていた。
終わらせられる。もう少しで、このセブンスソードを今度こそ終わらせられるんだ。
「みんな」
今までいろいろあったけどここにいるみんなとそれを迎えられるならこれ以上のことはない。
「終わらせるか、この戦いも」
一度は大きく敗れた俺たちだけど、それらを乗り越えて今がある。
そして、今から進むんだ、輝かしい未来に向かって。
「おう、やってやろうぜ!」
「みんな一緒なんだな!」
「私たちで未来を変えるなんてサイコーだよね」
「さっさと終わらせたいものね」
みんなそれぞれの思いを語る。これから俺たちの未来を変えるための一歩が始まるんだ。
そんな中で、香織は自分の胸に手を置いた。瞳を閉じて顔をわずかに下げる。
「私たちはこれから迎える未来を知っている」
俺たちは香織に注目した。
「悪魔に襲われ大勢の人が亡くなった。家族も、友人も、多くの仲間が謂われもなく殺されてしまう、そんな未来がこのままでは来てしまう。それを変えるためには今を生きる私たちが行動しなければならない。そんなの絶対嫌だ。大切な人と一緒にいるためにも」
その目が見開かれて、力強い眼差しが向けられる。
「戦おう」
その言葉に俺たちは全員頷いた。
「うん」
一緒に戦おう。そして変えてみせる。最悪の未来を最高の世界にするために。




