再会
急いで学校へと向かう。教室の扉を勢いよく開け中を見るが二人はいない。
「そんな」
どうして? なにがあったらこうなる。セブンスソードは始まってすらいないんだぞ?
唖然と立ち尽くす俺をクラスメイトが不思議そうな目で見てくる。
とりあえず自分の席へ行こう。心ここにあらずでふらふらと近づいていく。
「ん?」
それで気づくが机の上に置手紙があった。それを手に取って見る。
『屋上で待ってる』
屋上? なんだこれ?
裏面も確認してみるがこれだけだ。今までの世界線とは違う。なにが起きているのか確認するためにも行かないと。
未知の事態に気合と警戒を入れつつ屋上への階段を上っていく。そこでなにが俺を待っているのか。
目の前にある重い鉄扉、それを押し開けた。
入り込んでくる陽光に目を細めゆっくりと開けていく。
だんだんと視界が見えてくるが、その光景にハッと目を見開いた。
「よう、遅かったじゃねえか」
「おはよう、聖治くん。ひさしぶりだね」
「今度は一緒に戦うわ。やりましょう」
「聖治さ~ん、ハーゲンダッツの約束忘れてないよね?」
そこには星都と力也、此方や日向ちゃんがいた。それだけじゃない。
「聖治君」
青空の下の屋上に、桃色の長髪が揺れていた。
「戦おう、今度は一緒に」
香織も、その中にいた。
「みんな? なんで!? どうして?」
なんだこれ、どういうことだ? どうしてここにいる? ていうか、
「なんでみんな知ってるんだよ!? 俺だけのはずだろ!?」
みんなが俺に向ける微笑みに似た表情と今しがた言ったセリフはそうとしか思えない。此方とはまだ面識はないはずだし日向ちゃんに至っては前の約束のことまで覚えてる。
これじゃ、みんなタイムリープと同じじゃないか!
「聖治君が混乱するのもよーく分かる。私だって驚いたよ、シンクロスの一段目の能力」
「一段目?」
香織が博士キャラみたいに鼻を高くしながら腕組みしている。なんかムカつくがどういうことなんだ。シンクロスの二本所持がタイムリープなのは知っているが一本目にも能力があったのか? それ早く言えよ。
「まさに灯台下暗し。見えるけど見えないもの。人は観測できるものでしか――」
「早く言って!」
焦らすなうっとうしい!
「実はね、シンクロスは最初から能力があったんだよ」
そういうことなんだろう、それは文脈から分かるがいったいどんな能力なのか。
それを香織は教えてくれた。
「それが記憶の保持。タイムリープしても記憶を引き継ぐ。それを発動したのが別の人でもね」
「そうなのか!?」
そういうことか。最初発動した時なにも起きていないように思っていたけれど本当はしていたんだ。ということはみんなが記憶を持っているってことは。
「私は二週目の時に聖治君から貸してもらって発動してたからね。他のみんなは未来でしてたんだってさ」
「それは俺から話すわ。よう、よくやってくれたな」
そこで星都が前に出る。当然その姿は高校生なのだが脳裏には大人の星都がフラッシュバックしていた。
「星都……ああ!」
未来の世界で星都は悪魔と戦っていた。俺を過去に送り出すために命懸けて。こいつのおかげで俺は生きていてこの世界線があるんだ。言ってしまえばこの状況は星都が命を賭して作ってくれた未来なんだ。
「お前も、ほんとよく頑張ってくれたよな。すげーよ、マジで」
「フ、おう」
熱い握手をして笑い合う。まさかこんな形で再会できるなんて、思ってもみなかった。みんなこれまでのことを知らないと思っていたから。
「う、うぅ」
「ん? どうした?」
「いや、なんていうか……」
そのことに俺は涙を流していた。とびっきりの笑顔で。
「みんなと会えてもさ、一人だと思ってた。記憶を持ってるのは俺だけで、みんなはこれまでのこと知らないって思ってたから。だから、嬉しくて……」
「聖治君!? ハンカチあるよ、使う?」
「だな。分かるよ」
「抱きつく? 頭なでなでしてあげようか?」
そう言って星都は肩をポンポンと叩いてくれた。それで俺は顔を上げ頷いて見せる。言葉は要らない。俺と星都は無言のまま分かり合っていた。
「あれ、私見えてない?」
「見えてないっていうか~」
「香織、あんたは空気読みなさい」
「お前のスパーダを回収してから俺もシンクロスは使ってた。だから能力を知ったんだ。それから一段目の能力が記憶の保持だというのも知ってよ、それでみんなに使わせてたんだわ」
「そうだったんだな。それなら初めから教えてくれよ!」
ビックリしたじゃねえか、嬉しいサプライズだったけど!
「後で教えれば良かったと思ってたんだ、許せ」
「くそ、いいけどさ」
まあ、まさかあのタイミングで襲撃受けるとは思わないし説明してる余裕もなかったもんな。
「みんなで話し合った結果だよ。提案は此方だったけどな」
「此方が?」
「ま、一応ね」
此方は自慢するわけでもなく素っ気ない態度だがまんざらでもない雰囲気を感じる。
「ナイスだったな」
「思いついたことを言ってみただけよ。実際一段階目の能力だけなら使えるようで良かったわ」
「ねーねー、聖治さん私も褒めてよー? 私未来じゃめっちゃ頑張ったし」
「そうそう、日向ちゃんすごかったよな。あの時の救援、めちゃくちゃナイスだったぜ」
「いぇーい」
ほんとに日向ちゃんは相変わらずだ。その無邪気な明るさに救われる。こうして話しているだけで気持ちが軽くなってくるから不思議だ。
「そんなこと言ったら俺だってすごかっただろうが。人類最後の砦は俺だったんだぞ?」
「嘘みたいだけどほんとの話なんだよな」
「嘘みたいってなんだゴラァ!」
「いやー、まさかお前が司令官として出てくるなんて想像してなかったからさ」
「ほんとなんだよなぁ」
「にわかには信じられないけどね」
「まさか星都さんがねー」
「なんだよお前ら揃いも揃って! そんなに俺が司令官だったのが意外かよ!」
「「「「まあ」」」」
「んだよくそー!」
星都の突っ込みにみんなで笑う。平和だ、それがめちゃくちゃ嬉しい。こんな日常を守るために俺たちは戦っていたんだよな。
「で、だ」
俺たちはそれでいいんだがそろそろ触れておくか。俺は振り返り視線を移す。
「どうした香織、さっきから黙って。こっち来いよ」
香織は俺たちの輪に入ることなく端っこで立っていた。
「ふーん。どうせ私は空気の読めない女ですよ? おまけに未来でみんなが頑張ってた時に私だけいなくて役に立ってないし? みんなで打ち上げしてても話し合わないもん。どうせ私は要らない子よ。あれ、私お邪魔だった? ごめんねえ~! 気も利かない女で~!」
「香織~」
ダメだこりゃ、バッドな方向にトリップしてるな。さっきのがそんなに残念だったのか?
「いじけるなよ、悪かったってさっきは」
「なんで聖治君が謝るの? 悪いの私なんでしょ?」
うわ、めんどくさ。
「今めんどくさいって思ったでしょ!」
なんでこういうのは鋭いんだよッ。
「おい、沙城。それはちげえだろ」
そこで星都が頭を搔きながら近づいてきた。ムスっとした表情で香織が振り返っている。
「言うタイミングがなかったから言えてなかったけどな、管理人と戦ってる時お前が体張って守ってくれたから俺たちは生きてる。それに感謝してないやつなんてここには一人もいねえよ」
「そうだよ沙城さん、ありがとうねえ」
「うんうん。私たちは香織さんからバトンを受け取った。だから頑張れたんだもん。むしろ香織さんには胸を張ってて欲しいし、なんならよくやったって褒めて欲しいな」
「順序が逆なのよ、香織。あんたはすでに頑張った、だから私たちも頑張れた。ありがとね」
星都に続き三人も香織に感謝している。みんなの言う通りだ、香織が負い目を感じることなんてなにもない。未来で役に立ってなかった? 違う、あの時頑張ってくれたから今があるんだ。
仲間外れでいじけていた香織はどう思ったか。けっこうバッドだったからな、多少は機嫌を直してくれればいいが。
「うわあ~~~ん! みんな優しいぃ~~! みんな大好き~~!」
(なんだこれ)
そんな心配は杞憂に終わりふにゃふにゃの顔で泣いている香織を女性陣二人が両端から慰めていた。力也も少し離れた場所から「大丈夫だよ」と優しく声を掛けている。とりあえず大丈夫そうだな。
そんな彼女を見ていると星都が横にやって来た。
「未来人ってみんなああなのか?」
「止めろ星都、その質問は俺に効く」
それにお前も未来人だからな。




