兄の背中
この日、最後の家族が出て行こうとしていた。
「なんで行くんだよ!?」
玄関で軍靴を履いている背中に叫ぶ。真後ろで呼んでいるのに軍服を着たその男は振り返らない。
「父さんはそれで死んだんだぞ? 母さんだって亡くなって、もう俺たちしかいないのに。行ったら兄さんだって死んじゃうって!」
涙が零れる。このままではこの人は行ってしまう。俺を一人残して。それが嫌で泣きながら呼び止めるのに、その人はなにも言わず家から出て行ってしまった。
「大っ嫌いだ、あんたのことなんて! 大っ嫌いだ!」
扉が閉まるその間、俺は大声で叫んでいた。
仲がいい兄弟ではなかったけれど、それでも俺には兄さんしかいなかったのに。
なのにあの人は行ってしまった。
捨てられた。そう思った俺は悔しさと悲しさに泣いていたんだ。
昔、俺を守ってくれるって、約束してくれたのに。
*
うるさいほどのアラーム音が響く。その音に起こされて俺はハッと上体を起こした。
「これって」
部屋を見渡す。学習机にお気に入りアーティストのポスター、見慣れたいつもの天井。
間違いない、俺の部屋だ。日時は!?
すぐにスマホを掴み時刻を確認する。
2019年〇△月15日。それはセブンスソード始まりの日だ。
「戻ってきたんだ」
実感がふつふつと沸いてくる。大丈夫、ぜんぶ覚えてる。今まではみんなとセブンスソードを生き延びる、未来を変える、それを叶えるために頑張ってきた。けれどそれだけじゃない、俺には新しい目的が生まれていた。
「兄さん……」
魔堂魔来名。彼は、兄さんだった。どうして兄さんが魔来名だったのかそれは分からない。名前もそうだが顔だって違う。ほんと分からないことばかりだな。
とはいえ考えていても仕方がない。目の前のことに集中だ。
この日は通学路で星都と力也に合流してから登校。香織が転校してくる日だ。とはいえ本当にそうか確認しないと。いろいろあってタイムリープに不信になってるな。
俺は着替えに取り掛かり家から飛び出す。この日は遅刻気味ですでに二人は通学路にいるはずだ。俺は走るがふと見慣れた景色に目が留まる。なんだろう、久しぶりに故郷に戻ってきたような感覚がする。いつもの通学路なのになんだか嬉しい。
そんな気持ちを抱きつつ走っていくが、そこに二人の姿はいなかった。
「え」
おかしい、立ち止まる。以前はここで出会ったのに。
「どうして」
なんで今回はいないんだ? 二週目の時だってちゃんといたのに。
まさか、今回もなにか違う!?




