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新たな敵

 二人が投げつけてくる槍やナイフをバリアで防ぎつつ二本のスパーダを飛ばしていく。ロハネスは槍で払いもう一人もナイフで受ける。


 だが何度だって操ってやる。


 前方にバリアを張りロハネスの攻撃に耐える。大丈夫、なんとか凌げている。空間転移で横から飛んでくる槍もシンクロスで受け止めた。


「ふん」


 するとロハネスは俺の前後左右、囲むように槍を一斉に射出する。


「ちぃ!」


 バリアを展開しつつ空中を飛ぶシンクロスと天志で捌いていく。360度、全方位から攻撃されるッ。


「ぐう!」


 背後から攻撃を受けてしまった。体が切り裂かれ足がもつれる。でも休んでいる暇はない、次々来る攻撃を防がないと。

 ロハネスの攻撃を凌ぎ切り俺の周囲にはいくつもの槍が散乱している。その中心で大きく息を吐いた。

 全身傷だらけだ。痛みで動けない。だけど意思は燃えている。


「まだだ……まだまだぁー!」


 傷も痛みも関係ない。そんなの天志でいくらでも癒してやる!

 全身がピンク色の光に包まれ、俺は走り出した。

 地面を蹴り前へ。この敵を、みんなへは行かせない!


 もう一人の管理人がナイフを投げそれをスパーダで払う。だが右足が突如痛み出し見ればナイフが刺さっていた。くそ、これも空間転移か? だが空間の捻れはなかったぞ!?


 二人目掛けて走るがその間にもナイフが突き刺さっていく。前に進む度に新たな傷と痛みが加わった。


「ぐう、があ!」


 痛い。苦しい。


「つう!」


 キツイ。辛い。

 でも!

 この足は、止めたりしない!


 そうしてどれだけ戦っただろう。傷を負っては治していって、がむしゃらに戦った。必死だったからか時間の経過がよく分からない。奇跡的だったのは瞬殺は逃れたということだ。


「はあ……はあ……!」


 怪我は天志で治しているが痛みが余韻となって心に蓄積していく。斬られては治し、殴られては治し、まるで終わらない拷問みたいだ。けれどおかげでだいぶ時間は稼げた。


「そろそろ終わりだな」


 ロハネスが言う。その言葉に反論しようとは思わない。口が動かないし、実際その通りだ。後数回斬られれば俺の回復が間に合わずそのままやられると分かる。だから持ってあと一分あるかどうか。


 終わりが、近い。


 その時だった。


「その通り、終わりにしよう」


 この場に新たな声が加わった。


 いつからいたのか、それはロハネスたちの背後。男の声に二人も振り返る。

 そこにいたのは白の外套を着ておりフードを被っている。まるで管理人の白バージョン。まさか三人目? 管理人って何人いるんだ?


「誰だ、お前」


 が、ロハネスは知らないようだ。訝しむ目、なによりこの男の実力を測っている。

 それは俺にも分かった。この白い男、強い。存在感が全然違う。ロハネスたち管理人だって鬼のように強いのに。


 この白い人物は、それ以上だ。


 何者だ? 魔卿騎士団じゃない? それにセブンスソードで戦闘が起きる時周りの人は消えるんじゃないのか? なぜこの男はこの場に現れた?


 突然のことに混乱するが、さらに驚いたのは白衣の男の両手に光の剣が現れたことだ。

 ロハネスの目が鋭くなる。


 それはやや黄色かかっていて本当に光を固めて作った剣のよう。


 瞬間、ロハネスが動いた。浮かせていた槍を手に取り投げつける。とてつもない速さでありバリスタで放たれた矢のようだ。

 しかし、その槍が白衣姿に当たる直前、今度は男の前に光の盾が現れ槍を防いでいた。


「その力……」


 次の瞬間、ロハネスの足下が光り出す。

 そこから光の柱がいくつも伸びるとロハネスを縛り付ける。


「ぐ!」


 動けない。だがそのままで終わる魔卿騎士団の管理人じゃない。ロハネスは姿を消すと空中に転移していた。


 だが、そこには白衣の男もいた。


 速すぎて見えなかった。ロハネスが現れると同時に白衣の男も移動し空中にいるロハネスの背後を取っていたのだ。そして出てきたばかりのロハネスを突き刺していく。


「がああ!」


 二人が地面に着地する。ロハネスはうつ伏せに倒れ白衣の男だけが立っている。

 そこを半蔵のナイフが狙っていた。

 前後左右、十本ものナイフが投げられていた。相手の隙を空かさず突くナイフの投擲が迫る。


 が、それらは全部十個もの光の盾によって防がれた。


 白衣の男は半蔵の前に瞬時に現れると光の剣で切り裂いていく。


「馬鹿な、なぜ生きているのですか?」

「君が知る必要はない」


 男はそう言い倒れた半蔵の背中に剣を突き立てていく。それで半蔵の息の根は止まり管理人の二人は死んでいた。


「なにが、どうなっているんだ……」


 まさかあの管理人二人がやられるなんて。信じられない、なんなんだこいつは。

 白衣の男が向き直り俺を見る。顔が見えないのに男の視線ははっきりと分かった。

 この男は管理人を倒してくれた、なら味方かとも思うがそうじゃない。


「未来から来たな。私の質問に答えてもらおうか」


 言葉と共に放たれるのは激しい敵意。


 彼は味方じゃない。第三の敵なんだ。


「なぜお前はグレゴリウスに選ばれた? やつは未来でなにを考えている?」


 そう言うと俺の足元が光で覆われ固定される。動けない! 


「答えろ」


 白い剣が喉元に突きつけられる。


 グレゴリスだって? 誰だその名前。それに俺が選ばれただって?

 そういえば、なんで俺は未来で五本の剣を持っていたんだ? それは誰に渡された?

 思い出せない。忘れたままだ。


「待ってくれ! 俺は知らない、覚えてな――」


 瞬間、男は腹部に剣を突き刺した。


「がああああ!」


 引き抜かれ血が流れ出す。すぐに天志で治すも状況は変わらない。

 待てよ! 本当に忘れたままなんだ、香織の魂を得たがそこまでは覚えていない!


「答えろ」

「待て、記憶を無くしていて、本当に覚えていないんだ」


 白い男は光で俺の体と頭を固定する。さらに光の球を浮かべるとそれは細長いドリルへと変形していった。それは回転しゆっくりと目に近づいてくる。


「答えろ」


 待て、止めろ、止めろぉおおお!

 ドリルが、近づいてくる。


「があああああああぁあああ!」


 眼球が潰される。激痛に体が暴れようとするが光に固定されそれも出来ない。

 そうして、拷問は続いていった。それを天志で治していくがそれではこの苦痛は終わらない。ずっとずっと、俺が正気でいる限りこの地獄は続いていく。


 そして、体力も心も魔力も、限界を迎えた俺は光の見えない世界で意識が消えていくのが分かった。


「光の子、選ばれし者、か。未来から送り込んだ駒がどれほどかと思ったがこの程度だったか」


 白い男がなにか言っている。けれどそれを考える余裕なんてない。諦めないと決意した心が挫けそうになる。


 魔堂魔来名。二人の管理人。光を操る白い男。


 こいつらがいる中で、


 --どうやって、セブンスソードを生き抜けばいいんだ?

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