再戦
その後体調が戻った星都と力也がやってきて全員がリビングにいる。一度は戦ったんだ、最初は険悪な雰囲気になるかもと心配したが此方が謝罪して二人も納得してくれた。星都は話が分かるやつだし力也は優しいからな。それで場は収まり俺たちは仲間になったんだ。
それでここにはスパーダ六人、ほぼすべてのメンバーが集まったことになる。
「それじゃあこれからのことを話し合おう」
俺が話し出したことで全員が真剣な目つきになる。セブンスソードをどうするか、自分と大切な人の未来に関わることだ、みなの姿勢からも意気込みを感じる。
「セブンスソードの参加者は残り一人。魔堂魔来名ってやつだ。すでに話したがこいつに俺たちは一週目やられている。それだけ強い敵だ」
あの時のことを思い出す。それだけで身が強張るのが分かる。こいつを倒さないと俺たちに明日はないんだ。
「特徴を話しておく」
魔来名の外見、なによりその能力と技量を詳細に説明していく。また俺たちがどう戦いどう敗れていったのか、これを知っているだけでも立ち回りはかなり改善されるはずだ。
一通り説明しみなも頷いてくれた。
「それともう一つ、これも知っておいて欲しいことだ」
魔来名とは別だがこれも重要なことなので話しておく。
それでお終い。俺は改めてみんなを見ると全員真剣な顔つきで俺を見つめていた。
これから戦うのは間違いなく強敵。
だけどここを突破しないと先はないんだ。ならそれが苦難の道でも進むだけ。
俺は立ち上がりそれでみんなも立ち上がった。
「行こう。俺たち全員で未来を切り開くんだ」
俺たちは部屋から外へ出る。すっかり夜になっているが意思は固い。これから魔来名を倒しに行くんだ。新たな仲間である此方と日向を迎えて。
駅に向かうためマンションから出る途中、此方が近づいてきた。
「ねえ聖治」
「どうした?」
此方は香織よりやや背が高い。だからいつもより視線が高くなる。
「もしの時なんだけどさ、私はいい。その代わりあの子は救って欲しい」
「アホ。お前も生きるんだよ」
「うん」
此方も分かってるんだ、厳しい戦いになるって。もしかしたら誰かが犠牲になるかもしれない。
だけどそんなことさせない。俺たちには未来がある。幸せになる権利がある。星都も、力也も、此方も、日向ちゃんも。もちろん俺や香織にも。それを奪わせない。
勝負だ、魔来名。今度は俺たちが勝つ!
マンションから出て広場に出る。見れば外灯の光を水場が反射しマンションに帰ってくる人や主婦らしき人たちが立ち話している。
その人たちが、スッと消えていった。
「え」
いきなりのことに足が止まる。どうして? まさかッ。
「え、なになに!?」
日向ちゃんも驚いている、直にこうして見るのは俺も初めてだが間違いない。
「セブンスソードの結界が発動している、みんな気を付けろ!」
いきなり? 予想外だ、まさかここでなんて。
静かに上がっていた危機感が一気に沸騰する。魔来名が来たのか? 俺たちの動きが先読みされた?
緊張がこの場を覆う中、広場の中央、そこの空間が揺らぎ始める。
「お前は」
そこから現れたのは黒衣の男。フードを目深に被った人物。
魔卿騎士団。新たな団長を創造するために暗躍する管理人だった。
その男が、フードに手を掛ける。
広がるのは肩まで届く白い髪、年齢は三十代ほど。鋭い瞳に好戦的な目つきが俺たちを見つめてきた。
「はじめまして、ではないようだな。だが知らぬ者もいるだろうから一応言っておく。ロハネス・ガンブルク。セブンスソードの管理人をしている。本来柄ではないんだがね」
そういえばこの世界線では会うのははじめてか。前回は説明のために現れたが今回も同じように出てきたか。
どうする? ここで会うとは思っていなかったが、とはいえこの管理人もいずれは倒さなければならない。
「セブンスソードが始まっているのはすでに知っているようだ。さらに仲間を集めて残り一人と戦いに行く戦術。なるほど、すでに多くのことを知っているようだ。セブンスソードを積極的に行ってくれていることは素直に喜ばしい」
様子を見る。今はまだ穏やかだが一髪触発の空気が流れる。
「だが解せないな」
「なにがだ」
そこで流れが変わる。ロハネスの目は獲物を狙うヘビのように俺たちを見つめていた。
「残り一人が強敵だと知っているなら六人がかりではなくある程度スパーダをまとめておいた方がいい。でなければ奪われて形勢逆転となりかねない」
「俺たちの中で誰かを殺せって? そんな提案お断りだな」
ロハネスが言っているのは個々が弱い状態で挑んでも魔来名が誰かを殺せば二本となり、さらに三本と増えていけば逆転されるということだ。それを防ぐにはここで全員が二本の状態になることだがそんなの到底受け入れられない。
「ではどうやってセブンスソードを終わらせる? いずれ殺し合う仲だ」
「…………」
その質問に上手い答えが返せない。
「なるほど、完成までは目指していない、と」
くそ、読まれてる。こうなっては隠していても仕方がない。
「当然だろ……!」
俺たちが魔来名と戦うのはあくまでみんなと生き残るという目的があるからであってセブンスソードを完成させるためじゃない。
「やはり、自覚が足りないか」
そんな俺たちにロハネスは失望でも落胆でもない、平静な声で言ってくる。
「君たちがすべきことは隣にいる者と戦うことだ。それがセブンスソードでありそのために君たちは作られた。戦え。それだけが君たちの存在意義だ」
「まるで神様だな。悪魔は見たことあるがここまで傲慢なのか?」
セブンスソードはすべてが用意され作られたもの。いわばロハネスは創造主、神様同然だ。だが俺たちが従うかは自分で決める。
「スパーダはお前らに作られたようだが俺たちにそんな望みはない。勝手にやっておいて勝手なこと言うなよ。俺たちは仲間だ、セブンスソードを中止しろ。俺たちが戦う理由なんてない!」
「必要な犠牲だ」
「俺たちに必要なのはお前の死だよ」
ロハネスは冷めた目で見下ろし俺は睨み上げる。こいつは俺たちを道具としか思っていない。だからこんなことが言える。その身勝手さに言い返さないといけない。
「俺たちには道がある。だけど外道を進むつもりはない。戦うのはお前だ、ロハネス」
そう言ってシンクロスを取り出した。こうなったらここで戦ってこいつを倒すしかない。どの道やらなければならないことだ。
「いいだろう。ここで一人でも死ねば覚悟も決まるだろう」
ロハネスの両手が動く。以前は手加減だったが今回は違う。今のロハネスは両腕にそれぞれ槍を握り、殺意を宿した目が俺たちを射貫く。
「スパーダらしく戦って散るがいい」
「みんな、来るぞ!」
だが前回と違うのは俺たちだって同じ。それにどんな能力を使ってくるのかも分かってる。
戦いだ。セブンスソードへの反抗。
今度は俺たちが勝つ番だ!
「星都!」
「おう!」
始まるなり星都のスパーダ、エンデュラスの歯車が回り出す。 高速の剣撃だ、しかし突如現れた槍によって防がれてしまう。
「ちッ」
初撃は防がれてしまうが星都は様々な方向から攻撃をしかける。その度に槍が現れ阻てしまう。
時間操作と空間転移、どちらも強力な能力だがロハネスの上手さは星都の速さを超えていた。
「うおお!」
そこへ力也が加わった。グランの大剣をロハネスは槍を重ねることで防ぐ。応用がすごい。速さも力も届かない。
ロハネスは一歩も動いていない。両手に持った槍すら動かすことなく二人の猛攻を空間で操る槍だけで凌いでいた。
この男の戦いは二度目だが相変わらず凄まじい。セブンスソードの管理人なだけある。
でもここまでは想定通り。
「此方!」
戦場に赤い髪が靡く。此方はカリギュラを手に突き進み星都と力也が下がる。二人が攻撃してくれたおかげでロハネスの周囲は槍が乱立して逃げ場がない。
「カリギュラ!」
此方のスパーダ、カリギュラの赤いオーラなら槍の隙間を通って攻撃できる。
そのためロハネスは上空へと跳んでいた。せっかくの攻撃も躱されてしまう。
だが、それすらも想定内!
「日向ちゃん!」
「はい!」
俺と日向ちゃんは管理人を挟むように立ちスパーダを持ち上げる。足場のない空中なら逃げられない。
その隙を突く!
「シンクロス!」
「ミリオット!」
シンクロスを投げつけ反対側からはミリオットの白い光線がロハネスを狙う。
空中を狙った挟み撃ち。タイミングは完璧だ。
だがそれすらもロハネスは上回った。俺たちの攻撃を一瞥し両手に持った槍を振るい打ち落としたのだ。回転する槍裁き、一目見ただけで一流だと分かる自然さと強烈さ。
「ちぃ!」
通じない。五人がかりの連携ですらこの男には届かない。
それも当然か、この男こそがセブンスソードの管理人なんだから。スパーダがどういった能力なのかを知っている。この男を崩すならそんな前提を覆さないといけない。
まるで積み木のような作業、一つ間違ってもいけない組み立て。ここまで俺たちが連携を取れたのは魔来名のついでにこいつの情報を伝えていたからだ。それが功を奏した。それを経てようやくたどり着ける正解。
こいつの知らないこと、それは。
「まだだ!」
ロハネスによって弾かれたシンクロス、それは背後に落下している。それを操り攻撃していった。
スパーダの遠隔操作は二週目の世界では初めて見せる、意識の外からの奇襲でありみんなが繋いでくれた渾身の一撃。
黄色の刀身がロハネスの背中を貫く!




