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安神日向(やすかみひなた)

 それを、香織の天志が防いだ。


「なに!?」


 此方が驚いている。カリギュラはまだ発動している、なのに香織は元気に立ち上がりスパーダを持っているんだ。

 しかしそれもそのはずで天志は治癒の能力。体力を奪われながらも即座に治しているんだ。それで今もカリギュラと天志を押し合っていた。


「ごめん待たせた! でも彼女のこと知りたくってさ」


 香織は距離を取り天志を構えながら此方を見つめている。


「妹さんのために戦ってるんだ、かっこいいじゃん」

「なんで」

「私が平気な理由? もちろん。愛の力よ」

「それがあんたのスパーダの力ってわけ」

「もーう、そうだけどノリ悪いなあ」

「香織!」

「ごめん! ほんとに戦うから!」


 もたもたしないでくれ、こっちは本当にまずいんだ!


 香織が攻める。それにより二人の戦いが始まった。長期戦は駄目だ、時間がかかれば俺たちが無事ではいられない。そのため香織は果敢に攻め此方はカリギュラで防いでいく。


「そういうことだからそれ止めてくれない!?」

「するわけないでしょッ」


 互いの剣と言葉が飛ぶ。どちらも譲れない。剣だけでなく言葉にも気合が入る。


「聖治君が言ってることは本当! 私もみんなも戦う気なんてない! お願い信じて!」

「それで信じることが出来たら、苦労しないわよ!」

「顔はいいのに強情だなッ」


 香織も説得しようとするのだが此方も退かない。もしここで俺たちを倒せればスパーダが四本手に入りそのまま優勝だって出来るかもしれない。彼女にとってもここは正念場なんだ。


 けれど俺たちだって負けられない。香織だって諦めてない。


「君の気持ちも分かるけどさあ! そのせいで大切な人や仲間が苦しんでるんだよッ。これ以上は私も我慢できない!」

「だったらなに!」


 香織が天志を振り下ろしながら突進する。それを此方はカリギュラで防ぐも接近した香織は止まらない。


 そのまま天志を消し彼女を掴み足を掛ける。この距離では剣で攻撃することも出来ない。


 香織は彼女を転倒させ、直後天志を再出現、その切っ先を此方の首筋に当てる。


 決着だ。予想外の一撃に此方は倒れ上体を起こそうとするも天志の刃がそれ以上を封じる。


「私の勝ちでいいよね? お願い、すぐにこれを解いて」

「く」


 勝負はついた。カリギュラも能力が通じないならただの剣になる。純粋な斬り合いなら香織の方が強い。


「ん?」


 ふとマンションの入口を見るとそこには女の子がやって来ていた。その手にはすでにスパーダが握られており、刀身が光り出す!


「危ない!」

「ミリオットォオオオ!」


 剣から白い光線が放たれる。香織は寸前で回避しその隙に此方が立ち上がっていく。


 マンションから出てきた女の子、小柄な体型に白の髪。両側は束ねており小動物のような可愛らしさがある。しかしその手には今しがた光線を放った白いスパーダが握られていた。それは未来の記憶にある。


「聖王剣、ミリオット」


 強化と増幅の聖剣。これで熱を増幅し、発射する熱線は白い光となって対象を破壊する。段階が増えれば他のものも強化できる強力なスパーダだ。

 白い髪をした少女が慌ててこちらへと走って来る。


「お姉ちゃん!」

「日向来ちゃ駄目!」


 彼女が妹の安神日向か。姉がクールな印象だったが妹はなんだか元気というか明るい感じがする。

 妹が来たことでカリギュラは止まっておりその隙に香織は俺を治療してくれた。おかげでだいぶ体が楽になる。だが同時に全員の治療は無理だ。


「星都! 聞こえるか?」

「なんとか、な」

「お前は力也を連れて一旦逃げろ!」

「お前は?」

「俺はなんとかする。行け!」


 もしカリギュラの第二波が来れば本当に誰か死にかねない。星都は気力を振り絞りエンデュラスを起動すると力也を連れ撤退していった。


「日向、なんで来たの?」

「だって、窓からお姉ちゃんが戦ってるのが見えたから。ほっとけないじゃん!」

「もう」


 妹が来たのは此方にとっても誤算だったようだ。カリギュラは広範囲攻撃で敵だけでなく味方も巻き込む。使えば全てを蹂躙する魔剣だ。妹と共闘しようにもカリギュラは妹にもダメージを与ええてしまうから一人で戦いたかったんだ。


 分かるよ、俺も未来じゃ香織が傍にいるからカリギュラを使う機会あまりなかったんだよな。


「日向、それ貸しなさい!」

「え?」

「いいから早く!」


 此方の気迫に押されるように白い髪をした少女はミリオットを投げ渡し見事それをキャッチする。


 それにより此方はスパーダの二刀流となった。赤と白の姉妹剣。破滅と増幅を携えて此方は夜風に髪を靡かせる。


 まずい。カリギュラは味方も傷つける魔剣なため共闘に向かないがスパーダをまとめることで一人になったんだ。


「日向、あんたは下がってるのよ」


 一人で戦う気だ。それはカリギュラの戦術もあるんだろうが妹を戦わせたくないんだろう。彼女の目つきは先ほどよりも険を帯び覚悟が決まっている。


「香織」

「うん」


 俺たちもスパーダを構える。相手が二つのスパーダで戦うというのなら俺たちは二人だ。

 此方がミリオットを俺に向け剣先から光線を放つ。


「くっ!」


 それをシンクロスで受け止める。セブンスソードは殺して奪わないとそのリミッターは外れない。けれど第一段階の能力なら使えるんだったなッ。


「カリギュラ!」


 再び赤いオーラが此方を中心に広がっていく。これでは近づけない。彼女と接近戦が出来るのは天志を持つ香織だけだ。


 それが分っているから香織は前進する。反対に俺はカリギュラに気を付けないといけないが、よし、此方は妹を巻き込まないように範囲を抑えている。これならいける。


 他者を害するオーラの中心、赤を基調としたその空間で此方と香織は戦っていた。桃色の刃が舞い紅白の両翼が空を走る。

 香織も懸命に戦っているが二刀流の手数に押され苦しそうだ。


「させるか!」


 すぐさま加勢するためシンクロスを投げつける。それは此方に見切られ回避されてしまうが、まだだ! 

 俺は念じさらに別方向から攻撃する。


「なに!?」


 予想外の軌道に此方は無理矢理躱したため体勢を大きく崩してしまう。その隙を香織が攻める。此方はカリギュラで受け止めつつ、ミリオットを俺に向けてきた。


「それは無理!」


 此方の意図を察した香織がミリオットを蹴り上げる。それで軌道はズレ光線は背後にある木を焼き切っていった。

 シンクロスを手元に戻す。くそ、どうする? なんとか戦えている、だがそれだけでは駄目だ。


 このまま戦えば本当にどちらかが取り返しのつかないことになるかもしれない。それではいけないんだ。


 そこで妹である日向が目に入る。


 待てよ。彼女がここに来るのが誤算ってことは、妹の方は俺たちのことを知らないんじゃないか? この戦闘は此方の独断の可能性が高い、それなら!


「聞いてくれ!  俺たちに戦う気なんてないんだ!」

「え?」

「ここに来たのも仲間になって欲しいからだ。みんなで力を合わせて管理人を倒そう。そうすれば俺たちで、姉妹で殺し合うことも死ぬこともない。みんなで協力してセブンスソードを乗り越えられる。利用されて戦うくらいなら、大事な人のために戦わないか!?」


 頼む、通じてくれ。彼女だけでも理解してくれれば変わるかもしれないんだ。


「そうなの!? いいじゃん、お姉ちゃん仲間になってくれるんだって!」


 遠くから声を掛ける日向に此方はやや呆れた態度を取っている。


「あんたはもう……、簡単に信じちゃ駄目でしょ。嘘だったらどうするの?」

「え!?」


 素直な子だな。姉とは対照的だ。香織と此方は距離を取り停戦している。その隙に日向が近づいていった。


「でもさ~。悪い人には見えないけど」

「嘘吐いて近寄るような悪いやつが悪そうな見た目してるわけないでしょ。もういいから下がってなさい」

「なによ、私だってスパーダなんだよ? お姉ちゃんがなんでもかんでも決めないでよ、私だって選ぶ権利があるんだから!」

「はあ~」


 物事が上手く運ばない、それも味方との不一致というのは大変だ。


「妹さんはそう言ってるぜ?」

「うるさい!」

「ねえお姉ちゃん、これはチャンスだよ。だって仲間が出来ればさ、セブンスソード止めれるかもしれないじゃん」

「馬鹿じゃないんだから説明されなくてもそれくらい分かるわよ」

「管理人と戦うのが危険なのは分かるけどさ、どうせ戦うなら私はそっちの方がいいよ。ムカつくやつボコボコにする方が絶対気持ちいいって」

「そんな話はしてない。この人たちが信用できるか出来ないかでしょ? 裏切ったらどうするの?」

「でもさー、疑ってばかりじゃなにも進まないじゃん。この人たちは私たちを信用して仲間になろうって言ってくれたんでしょ? なら私たちが信用する番じゃん」


 ぱちぱちぱち。


 そこで聞こえてくる音に振り返ると香織が大きく頷きながら両手を叩いていた。


「ブラボー。ブラボー!」

「いぇーい」


 なんか、彼女と香織は気が合いそうだな。

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