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訪問

 それからその生徒が休んでいる教室へと行き友達から住所を教えてもらった。学校も終わり夕方、俺たちはその子の家へと向かっている。住宅が続くがこっちは来たことがないな。


「私たち以外のスパーダか、いったいどんな人なのかな? 女の子だといいなあ~」

「そうなのか?」

「だって~」


 隣を歩く香織に振り返る。


「一人が魔来名っていう男の人でしょ? 女の子私一人しかいないじゃん。仲間になるなら女の子がいいなって」

「なるほど。自分以外異性だとちと気まずいよな」

「そうそう。別に駄目ってわけじゃないけど仲間になるなら女の子の方が――あああ!」

「どうした?」


 そこでなにか思いついたのか香織が叫び出す。その次に俺に詰め寄ってきた。


「聖治君聖治君! 記憶がなかったってことだけど!」

「うん」


 なんだろうか、すごい剣幕だけど。


「私のこと忘れてたんだよね!? ならその間に……」


 喋っている間に顔が青ざめていく。まるでこの世の終わりみたいな顔色だ。

 それでいったいなんだろうかと身構える俺に香織は質問してきた。


「付き合った? ねえ、付き合ったの!? 私以外の女と!?」

「ちょっと近いって!」


 そういうことかよ。


「どっちなの!?」


 なんて気迫だ、戦ってた時よりもすごい来るんだけど。


「大丈夫、付き合ってないから」

「はあ、はあ。よかった……。聖治君が私以外の女とあんなことやこんなことをしていたかと思うと、……オウエ。しまった、想像しただけで気分が……」


 大丈夫かよ……。


「それでその生徒って誰なんだ?」


 調べてくれた星都に聞いてみる。


安神此方やすがみこなたって名前で女子だよ。ちなみに妹もいてそっちが日向ひなたで一つ下だ。姉妹揃って休んでるみたいだしもしかしたらマジでスパーダかもな」

「もしそうならこれで七人だな」


 安神此方と日向の姉妹。それが残り二人のスパーダなのだろうか。まだ確証はないがこの時期に二人とも休んでいるというのはそう思えてくる。それに姉妹ということは二人とも女の子か。


「敵かな?」

「なんで警戒してるの?」


 香織が顎に手を添え思案している。


「朝、人と人は信じ合えると思う方が嬉しいとか言ってただろ」

「それはそれ! これはこれなの! 仕方がないじゃん、前は私たちしかいなかったから聖治君が浮気する可能性なんて考えたこともなかったけどこの時代は違うんだから。男の人ってあれでしょ? 可愛い子がいるとひょい~って移り変わっちゃうんでしょ? 私知ってるもんね」

「どこ情報だよそれ。そんなの人それぞれだろ、男だからみんなそうってわけじゃない。男はみんな浮気してるって思わないでくれ」

「むう~」


 そんな顔をしても無駄だ。というか愛されてるのに信頼されてないのがちょっと悲しい。


 そんなこんなで歩き続けた俺たちは建物の前にたどり着いていた。そこはいわゆるタワーマンションというやつで白い外壁の高層マンション、その前には広場があり何本かの木々が植えられている。外灯の下には小さな噴水というか水場もありかなり広い。見上げるも天井は見えずいったいいくらなのか俺には想像もつかない。


「すご。聖治君! 私ここに住みたい!」


 勘弁してくれ。


「本当にここか?」

「待ってくれ」


 星都が左右を確認する。人がいないのを見てからエンデュラスを取り出した。


「決まりだな」


 水色の刀身がいつもより光っている。ここにいるのは確かなようだ。


「まったく、マジかよ。俺たちは学生寮なのにこいつらはこんな場所に住んでるって差別だろ。俺とこいつらでなにが違うんだよ俺も住まわせろよ。俺だって夜景を眺めてウーバーで頼んだピザとコーラ飲みてえよ。曜日を気にせずゴミ出してえよ。まあ悔しくないけど」

「いやどんだけ悔しいんだお前は」

「ぼくは学生寮の生活も好きなんだけどなあ」

「私はタワマン憧れちゃうなあ~。大きなクローゼットにはたくさんの服があって休日はお菓子作りしてベランダで園芸とかしちゃったり。聖治君は?」

「俺は……」


 聞かれ考えてみるが、答えに小さく笑ってしまう。


「どこでもいいよ」


 そう言うと星都は無欲だねえと顔を振り力也は笑っていた。ただ香織だけは素の表情で俺を見つめた後小さく笑っている。


「……そっか」


 香織なら分かるだろう、未来の惨状からすれば普通の家というだけで上等だ。俺はそれでいいよ。

 そこへ帰宅してきたスーツ姿の男性がやってくる。自動扉を通っていき中の様子が見えた。


「正面入り口は自動扉だけどロビーの奥はオートロックみたいだな。どうするか」

「とりあえず名前があるかだけでも確認してみようよ」

「それもそうだな」


 俺たちはマンションの自動扉を通りロビーへと入る。大理石なのかよく分からないがきれいな床と照明が出迎える。なんかホテルの受付みたいだ。

 そんな思いを感じつつ郵便受けに名前がないか手分けして探していく。


「あったよぉ」


 すると力也から声が挙がり俺たちは集合する。

 あった。確かに安神此方と日向と書かれている。それ以外に名前はない。


「二人暮らしか。親がいないというのはスパーダの特徴と一致するな」


 スパーダは全員人造人間、ホムンクルスということだ。だから生みの親はいない。あっても偽りの記憶だ。


 とりあえず安神姉妹の部屋の番号は分かった。404号室。そこに彼女たちはいる。オートロックの扉の前にはボタンとスピーカーが設置されており俺は皆の顔を見ては頷き、404号室を押してみた。


「もしもし、すみません。安神さんでしょうか?」

『はい。どちら?』


 女性の声だ。警戒しているのか固い印象がある。どう切り出せばいいか。悩むがはっきり言うしかないだろう。


「俺は剣島聖治っていいます。その、単刀直入に言います。俺たちはスパーダです」


 通話口から相手が息を飲んだ気配がした。


「他にも三人いて俺たちに戦う気はない。話し合いに来たんです。俺たちがスパーダかどうかは剣を出してもらえれば分かると思います」

『分かってる。すでに確認してる』


 やはり安神たちが残りのスパーダか。


「もう一度言いますが俺たちは話し合いに来たんです。広場で待ってます」

『…………』

「それじゃあ」


 そう言って通話を切る。俺と彼女のやり取りはみんなにも聞こえていたはずだ。


「そういうことだ、外で待とう」

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