シンクロスの能力?
「ねえ聖治君、シンクロスだけど見せてもらっていいかな?」
「ああ、いいけど」
ここなら人目を気にする必要もない。俺はシンクロスを手渡すと香織はまじまじと見つめていた。
「聖治君が殺されて、気づいたら前日の朝、か。死に戻りの能力かな? それなら私が未来で見たことがないのも納得かも」
「たぶんそうだと思う。それしか心当たりがない」
「使ってみてもいい?」
「ああ」
香織は念じてみるが俺の時と同じでなにも変化はない。
「なにも起きない」
「だろ? たぶん所持者は死に戻りの能力を持つ。それが神の交差点の能力なんだ」
スパーダには能力が備わっている。これだけなにもないわけがない。最初は故障かもしれないと思ったが思わぬ形で答え合わせになったな。
「それで本題に入るんだが、セブンスソードのことだ。一度経験してみて分かったことがある」
「なに、分かったことって?」
俺は唯一の経験者だ。知識は時に力以上の価値を持つ。現代戦では特に情報が大事だからな。異能戦のセブンスソードだってそこは変わらない。
なにも出来ないと悔しさに塗れて死んだ俺だ、ここで挽回しないと!
「セブンスソードはスパーダを手に入れるのも大事だけど、それ以上に奪われないことが大事ってことさ。スパーダの獲得数によって新しい能力が解放される。さらに手に入れたスパーダも使用できるようになる。これがかなりでかい。複数の異能、さらに強力な異能というのは絶望的な差だ。相手に先制された時点で詰みに近い」
戦って分かったんだ。複数の異能持ち相手に戦うのはかなりきつい。そのアドバンテージは戦力数倍の差は開く。
「もたもたしていられない、ってことか」
「セブンスソードは積極的に活動するのがある意味正解なんだ。誰よりも先に一本獲得できれば有利に進められる。漁夫の利は通じない。戦うやつが勝てる仕組みになってる」
こういうバトルロイヤルものって序盤は様子見、情報を揃えつつ戦って疲弊した相手の隙を突く、っていうのが定番だと思うけど。セブンスソードはそんな悠長なことは言っていられない。様子見している間にどんどん引き離されていく。
そして、最大の問題がこいつだ。
「最も警戒しなければならないのが、魔堂魔来名だ」
最強の敵。こいつを倒さない限り俺たちに未来はない。
「他の二人はまだ会ったことないが、やつが最大の障害なのは間違いない」
「そんなに強いの?」
「強い。というのもあるんだが、なんて言うんだろ……」
魔来名の強さ。それをどう説明すればいいだろう。やつは単純な強さとは違う。
「強いと一言で言ってもいろいろあると思うんだ。たとえば力が強いとか、仲間が多いとか。あいつの強さ、それは、そう、上手いんだよ」
「上手い?」
そう、上手い。それが最もあいつに相応しい表現だと思う。
「戦い方が上手いんだ。格ゲーでも弱キャラなのにめちゃくちゃ強い人いるだろ? あれだよ。性能じゃない、プレイが上手いんだ。そんなやつが性能まで強くなったらいよいよ勝ち目がなくなる」
あいつはスパーダの性能でごり押ししていたわけじゃない。むしろ能力なんておまけで最初は刀だけで戦っていた。
「あいつのスパーダは傷が治らない異能だがそんなの普通は役に立たない。香織が天志持ちだから活躍の機会があっただけで本来ならピーキーな武器なんだ。それなのにあいつは戦って、そして勝ったんだ」
誰でも真似できることじゃない。俺なら無理だ。
「魔来名を倒せるかどうか。それがセブンスソード攻略の鍵になる」
断言できるが、このセブンスソードはどうあれ魔来名をどう倒すか、という戦いになる。
「それでこれからどうするかだけど」
「その魔来名と再戦っていうのはどうなんだ? 前回はやられたみたいだが今回は違うだろ? 能力は割れてるんだ、やりようはあるだろ」
「星都の言い分は分かる。でも、おすすめは出来ないな。能力は分かってる。だが対策できない。今のままだと勝てる気がしないっていうか」
「そんな弱気でどうするんだよ、俺たちで生き残るんだろ?」
「待って皆森君。実際に戦った聖治君の印象がそこまで強く残っているってことはそれほどの相手なんだよ。話を聞いてみて思った。きっとその人が団長候補なんだよ」
「団長候補?」
香織が得心したといった顔をしているが、どういうことだ?
「聞いてて不思議に思ってたんだ。このセブンスソードは魔卿騎士団の新たな団長を作るのが目的。だけど皆森君も織田君も賛成してない。嫌な人を無理矢理戦わせて、その生き残りが素直に団長になるとは思えない」
「そうだな。むしろ復讐、報復するだろうし。最後の生き残りってことは力もあるはずだ」
「そう。だからこんな儀式になんの意味があるんだろうって思ってたけど合点がいった。理解者がいるんだよ。団長に相応しい人物、それが」
「あいつか!」
「その魔来名って人を団長にするための儀式。それなら分かるなって」
「そういうことかよッ。あいつ、俺たちの戦いを茶番と言った。分かってたんだ!」
ようやく理解できた。俺やここにいる誰かが生き残っても団長になるとは思えない。だが魔来名がなる分には分かる。はじめから魔来名を団長にするのが目的だったのか。
「でもぉ、聖治くんにはやり直せる力があるんだよね? ならいつかは倒せるんじゃないかなあ?」
「力也。たぶん、それは甘いと思う。あいつの洞察力はずば抜けてる。もし俺たちが未来を知っているような素振りをすればその違和感をあいつは無視しない。俺の能力に勘付くはずだ。ならその対策だってしてくる」
「対策って、たとえば?」
「死なない程度に殺しておいて、最後の最後に殺す、とか? 天志の力を使えば不可能じゃないだろうし」
「げ。想像しちまったわ」
死に戻りは情報戦において飛び抜けた能力だ。だが欠点がないわけではない。魔来名ならきっと思いつく。そう思えるだけあいつの実力は本物だった。
「それじゃあどうする、魔来名と戦うのは保留みたいだし」
「私は一度目で聖治君がしようとしていたこと自体は間違ってないと思うな。スパーダを獲得するとは違うけど仲間を増やすことは決して無駄でもマイナスでもない。むしろ仲間に出来れば魔来名にスパーダを奪われなくて済むし」
「なら残りの二人を?」
「うん! 一度目は残念だったけど、諦めることないよ! まだ残ってる二人は私たちのこと分かってくれるかもしれない。ううん、きっと分かってくれる!」
「どうしてそう思うんだ?」
俺もそう思う。というかそう信じたい。だけど魔来名の一件があって素直に思えないというか。それは香織だって分かってるはずなのに。
「人と人は分かり合える。そう思う方が嬉しい気持ちになれるじゃん?」
そんな疑問は彼女の笑顔の前では気にするだけ無駄に思えた。
残りの二人を見る。星都は小さく笑いながら肩を竦め力也も頷いている。
「決まりだな」
残る二人のスパーダ探し。その二人と交渉して仲間となる。戦うのはその後だ。
「そうなると問題は探す場所だな。次はどこから探すべきか、反応はないのか?」
「駅の方向しか分からないな。仲間には反応しないみたいだし」
「ねえ、それなんだけどさ? 私たち四人ってここの生徒だよね? 残り二人もここの生徒ってことないかな?」
「さすがにそれはないんじゃないか?」
「でもさ、四人もいる時点でかなり偏ってると思うんだよね~。あり得なくない?」
「とはいえスパーダに反応はなかったしな」
「そっか」
反応がなかった以上ここには俺たち以外のスパーダはいないってことになる。もしいれば良かったんだが。
「そういえばぁ」
「どうした力也」
なにか思いついたのか力也が俺たちを見る。
「別の教室なんだけど、数日前から休んでいる子がいるって聞いたんだな。もしセブンスソードが始まるのを知っていれば」
「マジか。それなら可能性はあるか」
「織田君やっる~」
「いや~」
そういうことなら調べないわけにはいかないか。
「それ、場所は分かるのか?」




