繰り返し
自室で目を覚ます。目の前にあるスマホの表示、その日付に目が点になる。
「〇△月、15日……」
頭の中にある情報と違う。それに浮かび上がり今も輝くシンクロスの刀身。その光も次第に弱まっていき俺は本体を消した。
どういうことだ? 俺は殺されたはずだ、だけど気が付けば前日の自室で目が覚めている。ということは。
「まさか」
時が、戻ってる?
いや、まだそうと決まったわけじゃない。確かめないと!
今一度時間を確認しすぐに着替え部屋を飛び出した。
雲がゆっくりと流れる青空、いつもの通学路。そこを必死に走る。俺はこの日いつも通りに登校していた。それは俺だけじゃない。
頼む、合っていてくれ。俺は走り続けると見慣れた姿が見えてきた。
「おーい!」
俺の声に二人がが振り返る。それはさきほど殺された友人。
「よう、おは――」
「良かった!」
星都と力也。俺は走る勢いのまま二人に抱きついた。無事だ、生きてる! 良かった!
「おいなんだよいきなり!」
「どうしたの聖治くん?」
二人が怪訝な目で見てくるがどうでもいい。ただ嬉しかった。
予感はあった、二人は無事なんじゃないかって。これでようやく確信が持てた。
俺は、前日に戻っている。セブンスソードのスタート地点に戻ってきたんだ!
「ありがとう、二人とも」
「?」
「だけどもう隠さなくていい。俺も一緒に戦うから」
「お前」
俺は二人から離れ頷いた。
「話がある」
だけどその前に。俺にはもう一人迎えなければならない人がいる。
教室へ着くと中は騒がしい。転校生が来るという話題だ。ここも変わってないな。同じ一日をなぞっている。この調子ならこれから起こることも同じはず。
ホームルームの予鈴が鳴り青山先生が入室してきた。転校生が来ることが告げられ皆が沸き立つが俺も別の意味で期待する。
そしてその時は来た。
先生に呼ばれ扉が開く。そこから現れる女の子に小さな歓声が上がる中俺は内心でガッツポーズを取っていた。
よかった。そして、ごめん。目の先で歩いていく姿に感謝と謝罪を込めて彼女を見る。
「沙城香織です。今日からここでお世話になりま~す。よろしくお願いします!」
彼女は教壇の前でみなに正面を向け、明るい声で挨拶する。
桃色の長い髪、大きな瞳と明るい雰囲気。俺の知っている彼女だ。
「聖治君!」
その彼女が俺を見つけるなり大声で呼んでくる。突然のことにクラスのみんなが驚いている。俺も最初は戸惑ったけど、でも今は違う。遠慮がちな笑みを浮かべ小さく手を振っていた。
それから俺たちは屋上へと上がり星都と力也も交えここには四人がいる。あの時は香織と二人きりだったけど今回は違う。
俺はともかく香織と二人は初対面だ。不思議そうに見合っている。
「聖治君、もしかしてこの二人って」
「ああ」
「おい聖治、もしかしてこの転校生か?」
「そうだ。ここにいる全員スパーダだ。香織、こっちが皆森星都でこっちが織田力也。二人とも友人だ。二人も大丈夫、彼女が襲い掛かることはないよ」
いきなりのことで面食らっている。逆に香織は俺が先行調査をし終えていると解釈したようでさすがと喜んでいた。本当は成り行きというか違うんだけどな。
「おいおいどういうことだよ。お前らは知り合いなのか? それになんで俺たちがスパーダだって」
「分かってる。いろいろ質問あるよな。その上でみんなに話がある。俺にとってこの世界は二度目なんだ。一度目は死んだ。俺たちは、セブンスソードで全滅したんだ」
「「「え!?」」」
「一度目のこと、俺たちになにがあったのかを話す」
顔を見合い驚くみんなに向けて俺は真剣な表情で話し出した。
俺が話す内容に三人とも難しい顔をしていく。けれどセブンスソードの経緯、みんなの能力、そして最後の戦い。詳細な説明に説得力を感じていったのか最後には全員真面目な顔で聞き入っていた。
「そうして俺は殺され、気づけば前日の朝、ようは今日だな。自室で目が覚めて今こうしている。というわけだ」
言い終わる。これでみんなにも状況が伝わったはずだ。
当然実際に体験した俺と話で聞くだけのみんなとでは実感に差があるのは仕方がない。いきなり全部を信じるなんて無理だろう。
「聖治君、それホントなの?」
「ああ。俺たちは、負けたんだ」
香織が心配そうな顔で見る。自分がすでに負けている、死んでいるという事実は相当ショックだろう。俺だってそう。覚えてないはずの傷の痛みが気になって首に手を当ててしまう。
「そっちじゃなくて!」
「え?」
が、大声で否定されてしまった。え、違うの?
「記憶がないってほんと!? 私とのラブラブな時間忘れちゃったの!?」
そっち!?
「香織との記憶は思い出したよ。だけどそれも断片的なものっていうかさ、失っていた記憶の一部を補完した感じかな。きっとお互いが認識している記憶だけが結合するんだと思う。だから俺が知らない香織のことは知らないし、他人の魂を得ても記憶は得られないじゃないかな。そこは安心していいよ」
「そ、そう」
まあ、人に記憶を覗かれるなんて最大のプライバシー侵害だもんな。でもそれは違って思い出したのはあくまで俺と香織が持つ共有の部分だけだ。
「でも香織のことはこうして思い出せたよ。だからその、ごめん、香織。最初の時誰だか分からなくて。でも今なら分かるから! 一緒に未来から来た時のこと。ロストスパーダを探す使命のこととか。だから頑張ろう。今度はちゃんと覚えてるから」
香織のことは思い出せた。それに伴って未来の様子も。破滅した人類の果て。あれは絶対に回避しないといけない。俺の剣には俺たちの命だけじゃない、人類みんなの命がかかってる。
そのためにも、俺たちはセブンスソードを生き残らなければいけないんだ。
「彼女の記憶で補完したってことは沙城が知らないことは知らないままってことだろ? こっちにどうやって来たのかは思い出せてないってことか?」
「そうなんだよな。香織の知らないことは俺も知らない。ここにいる以上魔卿騎士団の施設を見つけて、そこから過去に来たとは思うんだけど。俺たちは未来でそうやって行動してたから」
「分かった。本当は納得してないけど。ぜんぜんしてないけど!」
まだ頬は膨れているがなんとか納得してくれたようだ。




