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【書籍版】錬成七剣神(セブンスソード)  作者: 奏 せいや
第二章 セブンスソード
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決着、そして始まり――

 はじめて魔来名から弱音が出た。それだけ香織が強いんだ。グランの攻撃力、天志の防御力。これを崩すのは容易ではない。もし香織が隙を作ってくれればシンクロスを投げつけることも出来る。


 押している、この敵を。 


「団長になるからにはこれくらい技量で勝てなければ意味がないと自戒していたが、驕りだったか」


 魔来名はエンデュラスを消すと腰を下ろし、居合の構えを取った。


 直後だった。鞘に納められた天黒魔から紫のオーラが溢れ出す。激しく噴出する膨大なオーラは魔来名を中心に風を巻き起こし、なおもその量を増やしていく。


 すごい迫力だ。一人じゃない。まるで数十人もの人間を一人に圧縮したかのような存在感。対面しているだけで圧倒される。


 分かる、本気の一撃が来ると。


 それは死の宣告、不可避の斬撃。


 瞬間、刃が抜かれる。


「刹那斬り」


 魔来名の顔が、俺を見た。


「聖治くううん!」


 香織が、俺の体を押す。


「え」


 体が倒れる。すぐに振り向けば俺のいた位置には香織が立っていた。片手を突き出しその前には天志のバリアが貼ってある。


「香織?」


 俺の位置からでは彼女の背中しか見えない。それで呼びかけるのだが彼女はなかなか返事をしてくれない。

 次の瞬間、バリアの半分が斜めにズレていき、真っ二つに割れていった。

 出血の音がする。血を拭き出しながら香織が背中から倒れていった。


「あ……」


 その体を抱きしめる。見れば彼女の胴体には大きな切り傷があり苦しそうな表情が俺を見つめていた。


「聖治、くん」

「香織!」


 彼女が伸ばす手を掴む。


「ごめん、やられちゃった」

「そんな、駄目だ。駄目だ香織!」


 今も流れ出す血が彼女の先が長くないことを伝えている。目の前で苦しんでいるのに、俺にはなにも出来ない。

 申し訳なくて、悔しくて、なにより亡くなろうとしている彼女に涙が溢れる。


「最後に、お願い、いいかな?」


 そこで彼女が小さく笑った。無理して笑っているのが分かる。

 なんだろうか。俺はなにをすればいい? どうすれば彼女に報いることが出来る?


「私のこと、好き、って、言って欲しいな」


 それは愛の言葉だった。


「へへ、こんな時に、なに言ってんだろ、わたし」


 死にそうな笑顔で言う彼女に、俺は手を握り締めた。


 涙が止まらない。会ったばかりだった、知り合って間もない、だけど彼女は俺のために戦っていた。管理人の時だって、今だって俺を庇ってくれた。


「ああ。香織、好きだ! 愛してる!」


 こんな言葉で彼女が少しでも報われるなら。何回でも言ってやる。

 香織は俺の言葉を聞くと笑ってくれた。手から力が抜けていき顔も横を向いてしまう。


「香織? 香織!?」


 呼びかける。その顔を注視する。けれど再びその目が開くことはなかった。


「香織ぃいいい!」


 彼女の体からピンクと薄緑色の球体が浮かび上がる。ピンクのを掴み俺の体の中に入っていく。薄緑色のは魔来名へと飛んで行った。

 ピンク色の球体。それは全身に浸透していき俺の体の一部となっていく。


「あ」


 だから、分かったんだ。


 スパーダは武器であり本人でもある。いわばこの剣そのものがその人の魂なんだ。俺は香織の魂を得た。そこから彼女の情報が、記憶が流れ込んでくる。


 俺の持つ記憶と彼女の記憶、互いに共通する部分が活性化していく。

 だから、思い出せたんだ。


「まさか」


 抱きしめる彼女の体、それを信じられない目で見つめた。


「そんな」


 沙城香織。そうだ。俺は、俺たちは!


「あ、ああ、あああぁああぁああ!」


 彼女の言っていたことは本当だった。なんで忘れていた? こんな大事なことを!

 なにか、大切なことを忘れている気がする。とても大事なものを。


 それを、ようやく思い出せた。


 俺たちは未来で一緒だった。そして誓い合ったんだ。未来を救おうって。あんな絶望的な世界を救うんだって。俺には彼女しかいなかったのに。


 なのに、それはもう叶わない。彼女は亡くなってしまった。もう、話すことも出来ない。

 俺は立ち上がり、背後にいる男に振り向いた。


「魔来名ァアアア!」


 俺たちの目的はロストスパーダを持ち帰ることだった。殺し合いなんて必要なかった!


「お前は絶対に許さない!」


 こいつのせいで、俺はすべてを失った。


「お前の許しなどいらん。死ね」


 そう言って魔来名はエンデュラスとグランを持つ。対して俺もスパーダを出現させる。


「来い、桃源刀、天志!」


 シンクロスと天志を握る。ここにはもう俺しかいない。俺だけが残り敵は魔来名だけ。


「うあああああ!」


 叫びながら走り出した。倒す、こいつだけは絶対に!


 それでアスファルトの道を走るが、その足が前に出なかった。それだけでなく全身が重く剣が地面に突き刺さる。


「ぐ!」


 あまりの重圧に歩けない! 魔来名を見る。するとグランが緑の光を発していた。

 みるみると重力が増していき俺は立っていることも出来ず両手を地面に付ける。


「く、そ!」


 ここは新たなグランの能力により高重力に支配された空間だ。そこを唯一グランの担い手が歩く。反抗したいのに。跪くように頭が下がる。

 香織、星都、力也。みんな大切な人たちだった。みんな平和を求めて、生き残りたいだけだったのに!


「くそおおおおお!」


 魔来名を睨み上げる。暴れる思いを声に出すことしか出来ない。不自由な世界で泣き叫ぶだけ。


 魔来名が正面に立つ。その手には天黒魔が握られ、振り上げた。

 冷たい目が、俺を見下ろしていた。


「憐れだな」


 瞬間、紫の刀が下りる。


 最後の瞬間、俺の胸に去来したのは怒りでも悲しみでもなく、後悔だった。

 なんで、忘れていた? なんで彼女を思い出せなかった? 

 それを覚えているだけでなにか変わったはずなのに。

 けれどこの間は俺の後悔すら一瞬で刈り取った。


 闇が、覆っていく。


「は!」


 目を開く。目の前には自室の天井が広がっている。隣では目覚ましのアラームが鳴り響いていた。


「……え」


 数舜、唖然と天井を見上げ続ける。アラームを止めたのは目が覚めてから数秒してからだった。


「なに?」


 辺りを見渡す。俺はベッドの上で寝ており服装は寝巻だ。


「どういうことだ?」


 慌ててベッドから下りる。状況が分からない。あれからどうなったんだ? どうして俺はここにいる!?


 とりあえずスマホに手を伸ばす。それでそこに映し出されるものに驚愕した。


「〇△月15日?」


 俺たちが駅に集まったのは16日のはずだ。15は香織が転校してくる日だろ?


「まさか」


 予感がした。俺は右手を突き出し念じてみる。


「シンクロス!」


 目の前に出現するスパーダ、シンクロス。浮遊する十字架はその刀身が光っていた。

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