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【書籍版】錬成七剣神(セブンスソード)  作者: 奏 せいや
第二章 セブンスソード
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スパーダ二刀流

 星都が地面を蹴る。誰もが認める最速、如何に魔来名と言えど躱せるものじゃない。

 しかし。


「え?」


 地面に落ちた天黒魔が揺れる。まるで意思を持っているように。

 それは飛び出し、星都の背中を貫いた。


「な……に!?」

「そんな」


 その光景に、心が凍り付く。

 希望が絶望に変わっていく。星都は膝を付き貫通した天黒魔を見つめていた。しかしその刃は消え魔来名の手元に現れる。それを振るい刀身に付いた血を落とした。


「スパーダの、遠隔操作……?」

「こんなところか」


 まさか、俺のを真似たのか? 見ただけで?

 そう言って魔来名は鞘も手元に出現させ納刀していった。


「星都くん!」

「星都ぉお!」 


 俺と力也が急いで駆けつける。天黒魔に貫かれたことで胸が貫通し血が流れっぱなしだ。


「香織、傷を!」

「うん!」


 香織が天志を近づけ治療する。その間俺は魔来名の正面に立った。魔来名は構えもせず俺たちを見つめている。


「そんな、なんで」

「どうした!?」


 香織の悲痛な声に駄目だと分かっていても振り返ってしまう。見れば星都は苦しそうな顔を浮かべ血が止まっていなかった。


「傷が、傷が治らない」

「なに?」


 香織のスパーダは治療の能力のはず。なんで治せないんだよ!


「わりいな、みんな」


 星都の弱々しい声に俺は駆け寄った。咄嗟に手を握る。


「約束、守れないみたいだわ」

「そんなこと言うな!」


 駄目だ、このままでは死んでしまう。なんとかしないと! 傷に手を当てる。だけど止まってくれない。


「星都! 諦めるな!」


 叫ぶ。死なせてたまるか、生きるんだろ!

 だけどいくら叫んでも止まらなくて、星都から力が抜けていく。


「すまん……」

「……星都?」


 星都の瞳から涙が流れる。それを最後になにも喋らなかった。体を揺らすが反応がない。


「星都? 星都ぉおおおお!」


 星都の体を抱きしめる。もう動かない体を、それでも力一杯に抱きしめた。

 涙が頬を流れていく。視界がぼやけ星都の顔をまともに見られない。


 すると星都の胸から青白い光の玉が浮かび上がる。それは魔来名に引き寄せられていくと片手で掴み取るように取り込んでいった。

 直後、魔来名の左手にエンデュラスが現れる。


「所詮は烏合の衆か」

「なに?」


 冷たい目が俺たちを見下ろす。


「連携が断たれればこの程度だ」

「てめええええ!」

「星都くんを返せぇえ!」


 そこで力也が走り出した。グランを振り上げそれを魔来名に叩きつける。


「待て力也!」


 しかしその直前に魔来名はエンデュラスを振るい力也の腕を斬った。


「ぐ!」


 次に天黒魔を一閃し体を切り裂いていく。


「力也ぁあああ!」


 血が飛び散り力也の体が倒れていく。大きな体が前に傾いていきズドンと横になる。うつ伏せに倒れる体から血が流れ出していった。


「あ、ああああぁぁああぁ!」


 そんな。力也まで。こんな。こんなことって……!

 力也の体から薄緑色の球体が浮か上がる。魔来名は手を伸ばすが、そこへ香織が駆けつけ掴み取った。それは香織の体に取り込まれていく。


「来て、鉄塊王グラン!」


 現れるグランを掴む。右手には天志を。そして左手にはグランを握る。

 スパーダの二刀流。香織は天志とグランを構えていく。


「貴様」


 横取りされた魔来名が睨むが香織は退かない。代わりに背中越しに叫んでいた。


「聖治君、立って!」


 その顔は真っすぐと魔来名を見つめその声には強い意思がある。


「悲しいのは分かる。辛いのも分かる。だけど今は立って。立って戦わないと、私たちに未来はない! 皆森君も織田君も浮かばれない!」


 彼女が送る精一杯の激。それが俺の心を叩く。


「私たちが、未来を作るんだよ!」


 その言葉に俺は涙を拭いた。足に力を入れ立ち上がる。

 彼女の隣に並びシンクロスを魔来名に向けた。


「ああ」


 星都も力也ももういない。どれだけ叫んでももう帰ってこない。今俺がやれるのはこいつを倒して星都を取り戻すことだ!


「いつでも攻められただろ、どうして襲ってこなかったんだ?」

「死を悼むくらいは待ってやる。どの道いつでも殺せる相手だ」

「そうかよ!」


 俺たちを前に魔来名は鼻を鳴らすだけで剣を構え直す。天黒魔とエンデュラスの二刀流。こいつが星都のスパーダを持っているだけで苛立ちが湧き上がるがなるべく無視だ。怒りに我を忘れたら瞬殺される。


 じりじりと戦闘の気配が強くなる。


 瞬間動いたのは魔来名だった。今の魔来名にはエンデュラスがある。速攻をしかけられるなら待つ必要がない。先手必勝だ。


 速い。意識していたのに体が追いつかない!


「天志!」


 そこへ香織が叫ぶ。それによって現れたのはピンク色をしたベールだった。レンズ状のそれが俺の前方に展開され紫の剣撃と衝突する。それにより助けられた。


「これは……」


 そうか、スパーダは獲得数が増えるほど使える能力が増えていく。香織はグランを手にしたことで天志で使える能力が増えたのか。


 香織はバリアを消しグランを振るう。片手とはいえグランの一撃は強烈だ、魔来名はエンデュラスの加速を以て回避し直後反撃が来るが香織はバリアで防ぐ。


 その攻防はさきほどの戦闘よりも一段階上の次元だった。異能が複数扱える、さらに新たな能力の解放。より複雑になる異能戦に追いつけない。


 二人が戦っている。そこに入り込みたいが今の俺が入っても足手まといになるだけだ。


「くそ!」


 シンクロスを握る手に力が入る。それはほとんど八つ当たりに近いものだった。


 悔しい。なんで俺には能力がないんだ。遠隔操作なんてただスパーダの扱いが上手いだけで能力じゃない。俺は、なんの役にも立ててない! むしろ香織の足を引っ張っているだけだ……。


 なんで、こんなにも無力なんだッ。選ばれし存在? 馬鹿か! ただの無能だろ、こんなの!


 香織がグランを振るっていく。それを魔来名は後退しながら体を左右に動かしていた。しかし逃げるだけでなく隙を見つけてはエンデュラスの速攻が来る。それを香織は天志のバリアで防ぐ。気が抜けない、一瞬の油断が死に直結する。


 そんな戦いを二人は続けていた。俺には入る余地がなくどうしても傍から魔来名の隙を伺う形だ。戦いは拮抗し魔来名が大きく距離を離す。


「いつでも殺せると見くびったか」

「負け惜しみ? 後悔しても手は抜かないわよ」

「そうだな」

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